はじめての星景写真ガイド!美しい星空を撮りにでかけよう

満天の星が降り注ぐような一枚を、自分の手で撮れたら──そう思ったことはありませんか? じつは特別な機材や専門知識がなくても、ちょっとした工夫と準備さえあれば、誰でも美しい星空を写し出すことができます。
本記事では、「星景写真ってなに?」という基本から、機材の選び方、撮影地の見つけ方、撮影時の設定、そして作品づくりに欠かせない画像処理のコツまでを、丁寧に解説。ロマンとロジックが交差する、星空撮影の世界へご案内します。
星景写真ってどんなジャンル?
星景写真は「風景と星空を同一構図で収めた写真」のことを指します。主に24mmよりもワイドな超広角レンズを使用することが多いです。星景写真とは別に、星空だけを撮影するジャンルを天体写真と呼びます。こちらは望遠レンズを使用して撮影することが多いです。同じ星空という被写体を撮影するとは言っても、この2つは通じる事柄はあれど、撮影方法も画像処理もまったく異なるため、似て非なるもの、別のジャンルですので混同しないようにしましょう。


FUJIFILM GFX50R GF250mmF4 R LM OIS WR VIXEN 星空雲台ポラリエU、ポラリエUステップアップキット SO6400 F5.6 SS59秒×12枚(総露出時間708秒)/Stella Image 9で加算平均合成/Photoshop CCで画像処理/SILKYPIX Developer Studio 12でノイズ低減
一瞬一瞬の光を捉える人間の目と、10秒、20秒と長い時間で光を蓄積できるカメラとでは、実際の見え方とカメラで撮影した画像とではまったく違うものを表現できることが特徴であり、魅力であると言えます。
地球上から捉える星空は、光の速度で何十光年から何万光年と離れた星から発せられた光です。とても微弱な光を撮影するため、月明かりや街明かりなどの星の光よりも明るい光にかき消されてしまいます。そのため、撮影地は街から離れた郊外に限定されます。被写体の光が弱いことから、撮って出し(未編集)の画像での写り方はとても薄いです。そのため、画像処理を加えてはじめて作品化することがほとんどで、ある程度の画像処理が必須と言えるジャンルでもあります。

最初はとりあえず有名な星空撮影地に行って、その場で見えた星空を撮影してみましょう。続けていくと、だんだんと「こんなの撮りたいな」という具体的なイメージが湧くようになります。そうなると、事前の準備に関する知識や経験が必要になってきます。星景は“偶然”ではなく“計算”で撮るジャンルと言っても過言ではありません。ロマンとロジックが両立する撮影ジャンルかもしれませんね。

星景写真のための基本機材と選び方
① カメラ
高感度性能の描写力に優れている、フルサイズ一眼カメラが良いというのが一般的です。また、高画素ではなく、2000万画素台の一眼カメラのほうがよりノイズが少ないということで好まれています。しかしながら、現在のカメラの進歩は凄まじく、APS-Cやマイクロフォーサーズのカメラでも十分に星景写真を撮影できる基準を満たしています。

② レンズ
24mmよりもワイドな広角レンズで、f2.8、もしくはそれよりも明るいレンズがベストです(例:20mm f1.8など)。f4のレンズでも撮れるのですが、センサーに入ってくる光が少ないため、適正露出を得るのに時間がかかり、ノイズが多くなる傾向にあります。ズームレンズ、単焦点レンズを問わず、星景写真で使用することができますが、f2.8よりも明るいf値のレンズは単焦点レンズに多い傾向です。また、地上から空までを広く収めることができる魚眼レンズは、星景写真では必ず持っておきたいレンズと言えます。

③ 三脚
安定性・堅牢性が重要です。“ブレにくさ”を重視してアルミ三脚・カーボン三脚でパイプ径が25mm以上を目安に考えると良いでしょう。上を向けて撮影することが多いので、ウエストレベル(腰くらいの位置)で撮影することが多いです。三脚が高く設置できることに越したことはありませんが、アイレベルまでなくてもOK。

④ 雲台
収納が簡単で持ち運びのしやすい自由雲台が人気ですが、3way雲台でも問題ありません。縦位置・横位置でセッティングしやすいものを選びましょう。また、三脚と同じく雲台もしっかりしたものを選ぶこと。もし小さめの雲台を使用するときは、前後のバランスがとれるプレートを使用して、軸に荷重をかけられるようにセッティングをしましょう。そして、「アルカスイス」という規格のL字ブラケットなどを使えば縦横の構図切り替えが楽になります。

⑤ レンズヒーター
じつは必須アイテム。湿度の高い時間帯に撮影することが多いので、レンズの前玉を温めて結露を防ぐためにレンズヒーターを使用します。せっかく晴れているのにレンズが結露して何も写らない……なんてことがないように必ず購入しよう!
レンズヒーター360IV ビクセン
レンズヒーター KLH-1
レンズヒーター

⑦ ライト
レンズヒーターと同じく必須アイテム。暗所での撮影では赤色のライトが適していると考えられていますが、これは古い考え。現在は、人間の目に影響が少なく視認性の良い電球色が適していると言われており、適度に暗いライトを使用するのがマナー。
赤色ライトは写真に写り込んだときに画像処理を駆使しても修正するのが不可能ですが、電球色ライトなら修正することが可能なためです。’電球色で弱いライト’を必ず準備しましょう。ビクセン「天体観測用ライト」が定番です。また、夜道を歩くことなどがあれば、明るめのライトを別途用意しておくとよいでしょう。
<星空撮影初心者必見>星空撮影の「神ライト」が復活!Vixen 天体観測用ライトSG-L02とマナーについてお勉強しよう

⑧ フィルター
光害を軽減するフィルターに、ケンコー「スターリーナイト」やマルミ「スタースケイプ」のような「光害カットフィルター」があります。露出倍数が多くなる(ノーフィルター時よりも露出時間が必要)ことに注意しましょう。またソフトフィルターを使用すると明るい星が大きく滲んできらびやかな星空を演出することができます。ケンコー「プロソフトンクリア」や「リアプロソフトン」などがオススメです。一枚で光害カットとソフトフィルターの効果が両方得られる「スターリーナイトプロソフトン」もあります。
⑨ その他
レリーズがあると撮影時のブレを防ぐことができます。流星群の撮影では、連写モードでレリーズロックをすると最短で連続撮影ができるため、一瞬の流星をゲットしやすいのでオススメ。星景撮影は天候によって長時間待機することも多いと思うので、交換用の予備バッテリーか、USB給電ができるモバイルバッテリーも準備しておくとよいです。
星空撮影地は寒い場所が多いです。防寒対策グッズなどは充分なものを用意しよう。夏場は虫さされを防止するために肌の露出は控えること。

撮影地と時期の選び方
① 星景写真の撮影に適した撮影地とは?
星の光よりも明るい光がない場所が適しています。街明かり(光害)、月明かりなどです。周辺には街灯が1本もないことが望ましいです。自分がいる位置が暗い場所に加え、レンズを向ける先(天の川の方角など)にも余計な光がないのがベストです。光害については「光汚染マップ」というサイトをチェックして、“空の暗い場所”を見つけましょう。主に山間部や海沿いが該当します。また、月明かりの影響が少ない、下弦~新月~上弦の2週間が撮影に適しています。月齢アプリ・月齢カレンダーなどで月の満ち欠けをチェックして撮影候補日を決めよう。

② どんな星空が撮れるのか、事前に調べよう
撮りたい星座や天の川がどっちの方角にあるのかも調べておくと良いです。いつ撮影に行けばよいのか、候補となる時間を絞ることができます。 「星空ナビ」「Stellarium」などのアプリがオススメ。
③ 天気予報は専門サイトでチェックする
一般的な天気予報の「晴れ」の定義は”空の20%以上が晴れていること”です。そのため、星景写真で求める「雲ひとつない星空」は一般的な予報サイトではわかりません。晴れ間を探すサイトには「Windy」「SCW」「星空撮影地の見つけ方解説動画」と言った、高精度に雲の動きを予測できるものがオススメです。
撮影設定の基本と目安値
■撮影モード
マニュアルが基本
■シャッタースピード
15~30秒程度
■絞り
F1.4~F2.8
■ISO
3200~12800(ノイズ耐性と相談)
■フォーカス
AFは使用せずマニュアルで合わせる。明るい星などの点光源を液晶モニター内で拡大して、フォーカスを調整する。点光源が一番小さくなったらピントが合っていることになります。星でのピント合わせが難しければ、街灯の光や、10mくらい先に暗めのライトを置いて、その光で合わせるのもOK。また、TAMRONレンズのアストロフォーカスロックなどの機能が搭載されているレンズがあれば、ワンタッチで無限遠(星へのピント合わせ)にフォーカスすることも可能です。

■RAWで撮影する
星空はものすごく遠い宇宙から届いた光なので、撮って出し(未編集)では非常に淡く写ります。また、光害の影響で空と地上風景のホワイトバランスが崩れる(ミックス光)ことが多いです。そのため、画像処理で整える、強調するという処理を行なったほうが良い作品に仕上げられますので、画像処理で破綻(はたん)しにくいRAWでの記録をオススメします。なお、ついつい派手さを求めて画像が破綻しているにもかかわらず、画像処理をしすぎてしまうのも初心者にはよくある傾向です。もちろんのことですが画像処理のしすぎには十分注意しましょう。


■適正露出の見つけ方
撮影画像をチェックし、ヒストグラムを表示する。画像のように「真ん中よりやや左」に大きな山が来ればOKです。暗所では人間の目が暗い場所に慣れてしまい、昼間の鑑賞時にベストな適正露出を判断できなくなります。自分の目は信用せずヒストグラムをチェックするようにしましょう。ヒストグラムの見方を覚えると、昼間の撮影でも露出を決める際のヒントになります。星景写真以外でも役立つので学んでおきましょう。

星を止める?動かす?表現スタイルの違い
① 露出時間を短くする
地球は自転をしているため、露出時間が長いと星が線になって写ってしまいます(地球が自転することで私たちが立っている地面が動いて被写体ブレを起こしてしまう)。星を点で写せる露出時間はレンズの焦点距離にもよりますが、個人の好みによってもどこまで許容できるかが変わってきます。まず点像(星を点のまま写す)で撮影するには、一度撮影してどのくらいブレるのかを確認してみるのがオススメです。
かつては星が撮れる計算式として「500ルール」というのがありましたが、現在はより精度の高い「NPFルール」という基準で厳密な露出時間を算出することができます。
NPFルールの解説動画

② 赤道儀を使う
地球の自転に合わせて星を追尾する機材を赤道儀と呼びます。赤道儀を使えば、露出している間は赤道儀が星を追尾するので星を点のまま撮影することができます。デメリットは地上風景が動いてしまうことで、地上風景がシルエット気味のときは赤道儀によるブレは気になりませんが、地上風景が写っているときは気になってしまうでしょう。描写に合わせて使用するかしないかを選びましょう。

軌跡(星の軌道を描く比較明合成とバルブ撮影)

星を線で表現する手法には2通りあります。
① 比較明合成
1時間、2時間という時間を短秒露出で連続撮影し、それをソフトウエアで「比較明合成」という処理を行うことで表現できます。比較明合成は、複数の画像を比較して明るい部分だけを採用するという手法で、地球の自転によって動いた星はどんどん線になっていきますが、明るさの変わらない地上風景はそのままになります。
この撮影方法は明るい夜景での撮影に適しており、天の川が写るような空の暗い場所では、星が写りすぎてうるさく感じてしまうというデメリットがあります。OM-SYSTEM、PENTAX、Panasonicのカメラにはカメラ内で比較明合成を行うことができ、ソフトウエアなしでも表現が可能な機種があります。


比較明合成の解説動画
② バルブ撮影
1時間、2時間など、ワンシャッターで長時間露出を行う撮影方法です。天の川が写るような空が暗い場所での撮影に適しています。比較明合成ですと写りすぎてしまう星が、バルブ撮影ではいい感じで星の数が減って、写真としての完成度が上がるというメリットがあります。どこまで長い露出ができるかはカメラによって変わってきますので事前に調べておきましょう。また、バルブ撮影を行うと、ホットピクセル(輝点ノイズ)が発生しやすくなるため、撮影後はソフトウエアで修正をすることをオススメします。

以上、カメラやレンズの選び方、撮影に適した場所の見つけ方、設定のコツや画像処理の手順まで、初めて星空を撮影する方でも実践できるように星景写真の撮影テクニックの基本について紹介しました。
星景写真は、ロマンあふれる星空と地上風景が調和する、奥深く魅力的なジャンルです。一見ハードルが高そうに見えても、基本的な知識と準備があれば、誰でもその美しい世界に踏み出すことができます。
感動の一枚を自分の手で撮る体験を通して、星空を見上げる時間がきっとこれまで以上に特別なものになるはずです。星との出会いが、新たな趣味や感動を運んでくれることでしょう。
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