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夜景撮影の基本:知っておきたい設定と構図のコツ

2025/03/28
夜景撮影の基本:知っておきたい設定と構図のコツ

こんにちは。写真家の藤村 大介です。今回は夜景を初めて撮影をしようとしている人にわかりやすく基本的な準備から設定方法について紹介していきます。

今後の記事では、夜景撮影 応用編として、簡単にできる応用テクニックや仕上げなど、マスターすれば怖いもの無し!な内容もお伝えしていきます。

目次

    夜景とは?

    夜に撮影をするのは難しいと身構えてしまうかもしれませんが、夜景は「夜の風景」とシンプルに考えましょう。普段から撮影している風景撮影の現場で夜に撮ったらどうなるだろう?と想像してもらえればよいでしょう。

    また、世間一般的な「夜景」と撮影するときの「夜景」と、我々が呼ぶ 「夜景の写真」は少々異なる点がありますので、違いを解説していきます。

    1. 準備

    夜景撮影の準備は大きく分けて2つのカテゴリーがあります。

    1. じっくりと撮影する三脚型 
    2. サクサク撮るスナップ型

    今回は1の三脚を使ってじっくり撮影する方法を解説します。

    【カメラ】
    特に制限などはなく、どんなカメラでも夜景は撮影できます。プリントをしたり、後から画像処理を施して、より作品度を上げたい方はフルサイズフォーマットなど大きいセンサーのカメラをオススメします。

    【レンズ】
    広大な風景や街中で建造物が多くなる構図、星空を絡めるときなどは広角レンズが有利でしょう。望遠レンズは街並みの通りや並んだイルミネーションなどの圧縮効果を使って撮影したり、ボケの効果を期待する場合に用いることが多いので、夜景撮影であっても使う場面はあります。街中や建物内からの撮影の場合など撮影場所を限定される場合はズームレンズが有利です。

    【三脚】
    可能な限りしっかりした物(大きく重い物)が有利ですが、自分の体力と相談しながら決めましょう。疲れるからと持って行かなくなっては本末転倒です。重く大きな三脚は、風によるブレ対策など撮影時にはとても強い味方になってくれます。また、ローアングル機能(脚を広げられるタイプ)の三脚であれば、よりアングル決定が楽になります。

    撮影場所によってはテーブル三脚などが役に立つ場合もあります。

    雲台は金属製の物で、3D型(パーン棒/パン棒がついている物)か自由雲台型かはどちらでも大丈夫です。ギア型は微調整しやすいので便利ですが、衝撃を加えると稼働しにくくなることがありますので注意が必要です。

    〈三脚選びの3ポイント〉
    ・小型軽量で機動性重視か、大型な実用性重視か
    ・用途に合わせ、無駄に大きく重い必要はない
    ・三脚に合わせて雲台も使いやすいものを選ぶ

    【リモートコード(レリーズ)】
    スナップ的な手持ち撮影では不要ですが、夜景撮影の多くはスローシャッターになりますので、リモートコードやリモコンは必須アイテムです。セルフタイマーやシャッターディレイ機能を使うのも有効です。

    【小さいライト】
    暗い手元にはペンライトやクリップライトなどの小型ライトが必須です。

    2. 場所選び

    【地図アプリを活用しよう】
    ネットや写真集などで撮影したい被写体が見つかれば、そこがどこなのか調べるのに、地図アプリは有効。その場にいるかのように見られるビューモード機能がある地図は三脚設置場所まで探すことができる場合があります。

    3. 設定

    夜景の写真を撮るときは、風景写真を撮るときと基本的に同じ方法で撮影します。以下のポイントを押さえてみてください:

    ■カメラのモード選び
    カメラの露出モードは「絞り優先オート」か「マニュアルモード」に設定すると便利です。

    ■ISO感度の設定
    ISO感度はできるだけ低めに設定しましょう。自動(オート)設定の場合、ISOが必要以上に上がって写真が粗くならないよう注意してください。

    ■明るさの調整(露出補正)
    写真の明るさは、露出補正を「0」か「-1/3」くらいに設定すると自然な仕上がりになります。

    ■仕上げ設定(画質の雰囲気)
    写真をソフトで加工する場合は、カメラの仕上げ設定を「ニュートラル」や落ち着いたトーンにしておくのがおすすめです。
    ただし、SNSなどで目立たせたい場合は、少し鮮やかさを強調した設定でも大丈夫です。ただ、派手にしすぎると細かい部分の表現が弱くなるので、最初は落ち着いた設定にしてから調整するのが良いでしょう。

    ■ホワイトバランスの設定
    写真の色を見たまま自然に写したいときは、ホワイトバランスを「晴天(太陽光)」に設定しましょう。本記事後半では、ホワイトバランスによる表現の違いを解説します。この方法で撮影すれば、夜景写真が綺麗に仕上がりますよ!

    FUJIFILM X-E4 +XF18mmf F1.4 R LM WR 5秒 F5 ISO160 太陽光

    4. 撮影のタイミング

    一般的な「夜景」は空が真っ暗な状態の時間なのに対して、「美しい夜景写真」を撮れる時間はトワイライトやブルーモーメントと呼ばれる日没後すぐの空がまだ暗くなりきっていない時間帯になります。

    目安は日没15分から20分後ぐらいから始まる、空と地上(被写体)の輝度差が0になった頃から撮影スタートすればOKです。もちろん構図や設定などの準備はその前で完了していなければなりません。

    狙った時間帯に撮影すれば良いだけなので、コツがわかればそれほど難しい技術ではありません。

    この写真は最も良い時間に撮影されたトワイライト時の夜景です。

    日没後、まだ空が明るい時間に撮影した写真 Panasonic DC-S1R+LUMIX S 24-105/F4 40秒 F14 ISO100 太陽光

    次は、トワイライトが終わり、コントラストが上がってしまったためにディティールが黒潰れし、風景としては難しい写真になってしまいました。

    日没して空が暗くなってから撮影した写真 Panasonic DC-S1R+LUMIX S 24-105/F4 40秒 F14 ISO100 太陽光

    この美しいトワイライトの時間は長くても10分から15分程度しか続きません。たくさん撮れるように撮影前からイメージをたくさん持ち、準備段階で予行しておきましょう。

    5. 構図

    基本的な構図は風景撮影と同じ考え方で良いでしょう。分割構図や縦横、額縁や日の丸など、さまざまな構図のセオリーがそのまま使えます。その中で、夜景ならではの面白くなる構図を紹介します。

    【シンメトリー】
    左右対称、上下対称という、真ん中を境に対象に配置する構図は風景撮影でも用いられる構図ですが、夜景写真の場合、それを水面で行うことが容易です。

    FUJIFILM X-T4 +17-70mm F/2.8 DiIII-A VC RXD B070X 15秒 F11 ISO160 太陽光

    【コーナーパワー】
    直線的な線を四隅に延ばすと、画面が引き締まります。構図の中に組み入れると、より一層構図が楽になり無駄がないまとまった印象になります。ちなみに「コーナーパワー」は藤村が勝手に呼んでいる呼称で、ほかのテキストや資料等には載っていません。

    NIKON Z5+NIKKOR Z 14-30mm f/4 S 30秒 F16 ISO100 太陽光

    6. ホワイトバランス

    基本は晴天ですが、トワイライト後に空が茶色く濁って写るようならオートか電球モード、K(ケルビン)数が低い数値のホワイトバランスなども良いでしょう。晴れた日には「白色蛍光灯」も似合います。

    NIKON Z7II+NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S 25秒 F10 ISO100 太陽光
    NIKON D810+20.0mm f/1.8 1/6秒 F2 ISO400 白色蛍光灯
    Panasonic DC-S1+LUMIX S 24-70/F2.8 13秒 F9 ISO100 WBマニュアル(2500K)

    トワイライトが終わり、空が暗くなってからは遊び心を持ってドンドンいろいろなホワイトバランスを試してみましょう。

    FUJIFILM X-T2+XF10-24mmF4 R OIS 18秒 F14 ISO200 WBマニュアル(2500K)
    FUJIFILM X-H1+XF10-24mmF4 R OIS 1/5秒 F5.6 ISO400 WBマニュアル(10000K)

    このような、思い切ったホワイトバランスの設定は、スナップ夜景などのイメージ的な写真にも相性が良いです。

    今回は夜景写真の基本的な準備から設定方法について解説をしました。撮影する時間帯や設定によって違った雰囲気の撮影が撮れますので、色々とチャレンジしてみてください。

     

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    Profile
    藤村大介
    文・写真
    藤村大介
    1970年香川県出身。こんぴらさんの麓で育つ。高校では剣道やバンド活動に励み、日本写真芸術専門学校へ進学。アシスタントを経て独立後、カメラ販売をしながら主に海外で撮影を続けた。世界遺産や街並み、文化や民族など旅の風景を撮影し、取材都市は500を超える。日本初となる海外夜景のみの個展「暮色情景/富士フォトサロン東京」をきっかけに夜景写真家として知られるようになる。30年以上撮影を続けている“世界の夜景シリーズ”は海外でも展示され評価が高い。作品は美術館にも収蔵されている。 公益社団法人 日本写真家協会正会員 ウィステリアフォトクラブ主宰
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