ビックカメラの販売員が、プロのカメラマンに弟子入りしてワンランク上の撮影テクニックを学ぶ 連載企画。
新宿西口店カメラ担当で入社2年目の阿部絵美里さんがペット撮影に挑戦!弟子入りしたのはペット専門フォトグラファー(ペトグラファー)として活躍されている 小川晃代さん。果たして決定的瞬間は撮れるのでしょうか!?
『動物瞳オートフォーカス』でキュートな瞳にロックオン!
小川 |
今日はよろしくお願いします。阿部さんは学生のころから趣味でカメラに触れていて、9年目と伺いました。普段は何を撮影されていますか? |
阿部 |
普段はペンギンや野球選手の撮影をしています。ペンギンも野球選手も高速で動くので、とにかくブレないことを心がけています。シャッタースピードは速めに設定して、とはいえ、写真にノイズが出るのは嫌なので、ISOはできるだけ上げずにギリギリを攻めていく……そんな撮り方をしています。 |
小川 |
驚きました!なんと、ペンギンを撮っているんですね! 水族館は暗いし、ペンギンは高速で泳ぐし、めちゃくちゃ難しいですよね。水泡をまとって泳ぐペンギンってカッコイイ。まるで宇宙を翔んでいるようなクールな1枚に出会えそうですね。 |
阿部 |
わんこやにゃんこも好きなのですが、自分で飼っていないのでなかなか撮ることができず……猫カフェにはよく行って癒されています。そこで撮影することもありますね。 |
小川 |
ちなみに動物を撮影するとき、『動物瞳オートフォーカス』は使っていますか? これはオートフォーカスの際に、画面内にある動物の瞳を検出して、自動で瞳にピントを合わせてくれる機能。
例えば、普通のオートフォーカスだと動物の鼻にピントが合ってしまうこともよくありますが、これを使えば動物の瞳に自動でピントが合うので、撮りたい瞬間を逃しません。 最近は動物以外に鳥や飛行機なども選べるようになりました。 |
阿部 |
『動物瞳オートフォーカス』は使ったことがなかったですね。早速、オンにしてみました。 緑の四角が自動で動物の瞳を追いかけてくれていますね。 |
遊ぶわんこを撮ってみよう
小川 |
それでは早速ウォーミングアップ。まずはコミュニケーションをとって、動物たちと仲良くなることから始めましょう。今回協力してくれるのはミニチュアダックスフンドのオルテンシアちゃん(茶色・以下テンちゃん)とアズナヴールちゃん(黒色・以下アズちゃん)、ミヌエットのララちゃんです。わんことにゃんこで習性が違うので、それぞれ撮影していきましょう。 |
阿部さん撮影
小川さん撮影
小川 |
わんこはおやつやおもちゃで気を引いて撮影するのがポイント。カメラを怖がらないように、“楽しい遊びの時間だよ”と演出してあげてください。では、おやつを使ってやってみて! |
阿部 |
え、あれ? あれ? おやつだけ食べられちゃう! おやつとカメラ、同時に操るのが難しいです! テンちゃんの動きに 翻弄されて、カメラを見ることが全然できません(泣)。 |
阿部さん撮影。テンちゃんの動きに気がいってしまい、カメラが安定せずに撮影した一枚。
小川 |
慣れないと難しいですよね。コツはカメラを見ながら、おやつでわんこの目線を誘導するイメージです。モニターを見やすい角度に調整して画角を整えてから、おやつを見せて少し食べさせる→おやつを持ち上げる。この順で何度か繰り返してみて。おやつはレンズの上辺りに持ち上げてください。食べた後に鼻の周りをペロッとする、かわいい“舌ペロショット”を撮るチャンスですよ ! |
小川さん撮影
阿部 |
なるほど。先に画角を固定してから、カメラに目線が来るようにおやつで誘導するのですね。……あっ! 舌ペロ写真、撮れたかも! |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 24 mm f3.5 1/1,000)
小川 |
うん、いい感じ! 次はテンちゃんの好きなおもちゃを使ってやってみましょう。お気に入りのボールで遊んでいるので、かわいい瞬間を狙ってみて。 |
阿部 |
うーん、夢中で遊んでいてなかなかこっちを向いてくれない……。 |
上から見下ろした写真になってしまった(阿部さん撮影)
小川 |
テンちゃんと同じ目線になるよう、もっと低い位置から撮ってみて。そうそういい感じ! カメラの下に手を添えて三脚代わりにすると、安定感が出てカメラをスムーズに動かせますよ。
いまはおもちゃで遊んで動き回っているので、『動物瞳オートフォーカス』がとっても効果的! ピントがしっかり瞳に合います。たまにボールを動かして、撮りたい方向に誘導するといいですよ。 |
阿部 |
テンちゃん、こっちおいで! 下がったら表情がよく見えるようになりました! |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 38 mm f2.8 1/2,000)
マイペース なにゃんこを撮ってみよう
小川 |
次は猫のララちゃんを撮ってみましょう。にゃんこはわんこと比べてマイペースな子が多いので急に近づかれるのを嫌がる子もいます。野生動物を撮るように、にゃんこのペースに合わせて撮影するのがポイント。静かにそっと近づいて、一歩引いて観察しながら、撮りたい仕草をひたすら待ちましょう。 |
阿部 |
待つのはペンギンで慣れています。任せてください! |
小川 |
にゃんこは箱に入ると落ち着く習性があるので、撮影したい場所にちょっとおしゃれな箱やカゴなどを置いて、その中に入るように誘導すると撮りやすい。うまく入ってくれたら、猫じゃらしなど好きなおもちゃで目線をコントロール。猫じゃらしはキラキラ光る素材やシャカシャカ音の出るものが おすすめです。視線の先に空間があるようにフレーミングするとバランスの良い写真になります。 |
阿部 |
にゃんことわんこで随分撮り方が違ってビックリしました。動物の習性を 活かして撮ることが大事なんですね! 今度、猫カフェでもやってみます。 |
小川さん撮影
STEP1:構図&アングルを変えておしゃれ度アップ
小川 |
動物たちと仲良くなったところで、構図やアングルについて学びましょう。まずはアズちゃんとテンちゃん、2頭をどこでも好きなところで撮ってみて。 |
阿部 |
スタジオが広いのでこれは迷いますね。いつも動いているものを追いかけて撮っているので、自分の好きな場所で自由に撮っていいとなると、意外と難しい……。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 50 mm f3.5 1/400)
小川 |
これはこれでかわいいのですが、被写体を真ん中に置いていますね。ストレートすぎて、もう一声、ひねりが欲しいところ。 |
阿部 |
普段高速で動くものを撮っているので、フレームから被写体が外れるリスクを減らすために、とにかく被写体を中央に置いているんです。 |
小川 |
被写体を収めることが優先だったのですね。
構図を決めるのに便利なのがグリッド線! グリッド線を表示させて、各線の交わるところが4点あるのですが、そのどこか1か所にわんこたちを配置してみて。こうすると被写体が中央から外れるので画面の中に余白が生まれ、自然とバランスよく構図が決まるんです。今回のように2頭一緒に撮る場合は、その間にグリッド線の交わるところが来るように意識してみてください。 |
グリッド線の交点にわんこを置く
阿部 |
なるほど! こういうときにグリッド線が役立つのですね! グッとおしゃれになりました。 |
グリッド線を活かして構図を工夫(阿部さん撮影)(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 50 mm f3.5 1/400)
小川 |
さらにもっと雰囲気を出したい場合は、奥行きを作ると写真がより深まります。奥行きを出すことで背景がボケるのでより被写体が引き立ちますよ。 |
空間の奥行きを活かした写真(小川さん撮影 )
小川 |
次はにゃんこでも試してみましょう。ララちゃんを魅力的なアングルで撮ってみてください。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 50 mm f2.8 1/400)
小川 |
のぞき猫、Goodです! にゃんこの特性を活かしたショットでおもしろい。かわいいなと思うパーツをもっともっと強調したアングルを探してみてもおもしろいですよ。 |
阿部 |
下から見上げるようにして愛らしい口元を強調してみました。高貴な雰囲気が漂うララちゃんですが、より一層キリッと凛々しく。アングルを変えるだけで、全然違う表情になりますね! |
下から煽って口元強調カット(阿部さん撮影)(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 50 mm f2.8 1/500)
小川 |
にゃんこって横から見ると、瞳がまん丸の球体で美しいガラス玉みたいですよね。魅了されたドラマチックな瞬間を自分なりに切り取ってみてください。目、口元、鼻など、パーツにグッと寄ってみると、今まで見えなかった意外な発見があるかもしれません。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE24-50mm F2.8G 50 mm f2.8 1/400)
STEP2:自然光を味方につけよう
小川 |
次は写真を撮る際に重要な光について。ここからは単焦点レンズに変えて、ボケ感も活かしながら撮ってみましょう。まずは窓際にいるララちゃんを撮影してみてください。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE55mm F1.8ZA 55 mm f1.8 1/2000)
小川 |
うん、いいですね。いま窓際に差し込んでいる光は“サイド光”。柔らかい光なので、良い雰囲気に仕上がっています。こういった自然光を味方につけると、被写体の細かいディテールまで美しく再現できるんです。
窓の光をもっと意識して角度を変えると、よりララちゃんの毛がキラキラして、耳の辺りの微細な毛までふわふわして見えると思います。光が強いときはレースのカーテンを引くなどして、光を柔らかく調整して撮影するとキレイに撮れます。反逆光気味だと少し暗くなるので、自分で補正をかけるといいですね。 |
小川さん撮影
小川 |
次はレフの効果を試してみましょう。今回は黒色の毛のアズちゃんに登場してもらいます。同じ場所で、下の敷物を変えて撮影してみます。普通のカーペットと真っ白な敷物との違いを見てください。 |
阿部さん撮影(SONYα7W+FE24-50mm F2.8G 36 mm f2.8 1/400)
阿部 |
白い敷物のほうがアズちゃんが神々しく見える! 下からの反射で明るくなって、まさに“女優ライト”ですね(笑)。 |
小川 |
下に白いものを敷くだけでこんなに反射するんです。特に黒い色のわんこは写真に撮ると毛並みが潰れがちなので、白いものを入れてあげるだけで表情が生き生きとしてきます。 |
STEP3:躍動感のあるドラマチックな写真を撮ろう
小川 |
それでは、いよいよ最後になりました。走っているテンちゃんを撮ってみましょう! |
阿部 |
これは結構得意かも! 日頃からペンギンや野球で鍛えられていますので(笑)。シャッタースピードはブレないように1/2000に変えて……。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE70-200mm F2.8GM OSSU 178 mm f4 1/2000)
小川 |
うん、さすが! すごくいいですね。揺れる耳に躍動感がよく出ていて、テンちゃんの元気に走る姿が伝わってきます。でも、もっともっと下がってわんこの目線になってみてください。さらに芝生を蹴る音まで聴こえてきそうですよ。 |
阿部 |
そっか、これももっと下からを意識しないと! でも『動物瞳オートフォーカス』がしっかりロックオンしてくれるから、走っていても安心ですね。 |
阿部さん撮影(SONY α7W+FE70-200mm F2.8GM OSSU 200 mm f5 1/2000)
小川 |
いまの瞬間、バッチリでしたね。キュートな肉球まで見えてきました。もう完璧! |
阿部 |
ありがとうございます! 今回はプロの方に教えていただき、勉強になりました。 私はペンギンや野球など決まったものばかりを撮っていたので、構図を決めて自由に撮るのが苦手など、自分だけでは気づけない発見がありました。おかげでこれから撮影の幅がグンと広がりそうです。猫カフェですぐに実践してみよう! |
小川 |
ペンギンのカッコいい写真も待っていますよ~!(笑)
『動物瞳オートフォーカス』など便利なサポート機能を使えば、愛犬&愛猫をいつも以上にかわいく撮れそうですね。ぜひあなただけの決定的瞬間をたくさん切り取ってみてください。 |
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Profile
カメラコーナー フォトマスター2級
阿部絵美里
ビックカメラ新宿西口店でカメラ担当。カメラは学生時代から趣味にしており動物やスポーツを撮影するのが好き。最近は社会人野球チームの応援にハマっており、カメラを持って日本全国どこへでも応援に行く本格派。
文
岸綾香
ライター&エディター。大手出版社の女性週刊誌で約20年、料理、美容、グルメなど、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。Web媒体では料理やヨガなどの動画記事を担当。週刊誌で鍛えられた体力&根性で40代から子育て奮闘中。
写真
小川晃代
ペトグラファー。トリマー、ドッグトレーナー資格をはじめ様々な動物資格を保持するペットのスペシャリスト。2006年、動物に特化した会社「アニマルラグーン」を設立。現在はキヤノン、富士フィルム、ソニー他の写真教室の講師をはじめ、ペット雑誌の編集長やペット番組ディレクターとしても活躍。
店舗紹介
ビックカメラ新宿西口店
- 所在地
- 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-5-1 新宿西口ハルク 2F~6F
- 電話番号
- 03-5326-1111
- 営業時間
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平日・土曜 10:00~20:30
日曜・祝日 10:00~20:00 (小田急百貨店の営業時間に準ずる)
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