特殊詐欺は“電話”から始まる ─固定電話で自宅を守る最新防犯術─

年々、深刻化を増している特殊詐欺による被害。昨年、その被害総額は過去最高を更新しました。
さらにここ数年は、闇バイトによる特殊詐欺の被害が都市部だけでなく、治安がよいとされている地方にまで蔓延(まんえん)しています。
そこで、元警察官で犯罪コメンテーターとして活躍する佐々木成三さんに、最新の防犯対策について教えてもらいました。
特殊詐欺による被害総額は約719億円に!
佐々木さんは警察官として22年間勤務し、主に刑事として捜査に尽力してきたプロの犯罪評論家。最近、日本の犯罪件数は低減傾向にあると言われていますが、一方で財産犯(詐欺、窃盗、強盗)の被害総額は昨年過去最高となっていると佐々木さんは警告します。
「犯罪の刑法犯認知件数は、2003年(平成15年)から2021年(令和3年)まで、一貫して減少しており、2021年(令和3年)は戦後最少となりました。それ以降は連続して増加傾向にありますが、約20年前に比べると犯罪件数は大幅に減っています」

「それにもかかわらず、昨年、お金が奪われる、盗まれるという手口の詐欺被害総額は過去最高を更新しました。詐欺の手口が巧妙になり、日々アップデートされ、1回にだまされる金額が増加したのが原因です」

「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等につい て(確定値版)」より
2023年(令和5年)は全国で約452億円の被害があり、これは2022年(令和4年)と比べると約82億円増。これを受けて、日本の警察や行政、民間企業は特殊詐欺を撲滅しようと対策を進めましたが、昨年2024年(令和6年)は、減るどころか被害総額は約719億円に」【※警視庁特殊詐欺対策ページより】
直近の特殊詐欺の情勢

さらに今年(令和7年)は1月末だけで被害総額は約80億円近くにも上っているそう。今年はいよいよ1,000億円を超えるのではないかと言われているそうです。

「令和7年4月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」より
2024年から「警察を語る」特殊詐欺が激増中!

さらに、昨年から特殊詐欺の傾向がガラッと変わったと佐々木さんは話します。
「いままでは高齢者が狙われていましたが、“警察官を語る詐欺”が急増したことで、中年もその餌食となり、65歳以下の被害者が一気に増えてしまいました」
まず「警察だ」と電話がかかってきて、「あなたが事件に関与している可能性があるため、○○署に出頭してください」などと言われ、遠い県などを指定してきます。断るとLINEに誘導され、偽りの逮捕状などが送られてきて、「保釈金を払ってください」、「あなたの身の潔白を証明するので、財産をすべて見せてください」、「金を購入してあなたの資産を確認させてください」などとお金を請求してくるそうです。
「冷静になれば本物の警察はそんなことを言わないとわかるのですが、“逮捕”という強いワードでパニックになり、簡単にだまされてしまうケースも少なくありません。実際の例として、ある38歳の男性は9,900万円をだまし取られてしまいました。
また、みなさんは実際に本物の警察手帳を見たことがありますか? 僕は20年間持っていたので、本物を見分けることができますが、一般の方が本物の警察手帳を一瞬で見分けるのは難しい。でもドラマなどで見て、なんとなくのイメージがあるからこそ要注意なんです。警察手帳を見せられたからと言って、それだけで警察官と信用するのは危険です」
高齢者の一人暮らしは「予兆電話」に注意を!

最近はSNSやインターネットなどで一般のアルバイトに偽装して、短時間で高収入が得られるなどと呼びかけ、強盗の実行犯を募る「闇バイト」が増えています。
強盗に入る前の下調べとして、この家はお金があるか、高齢者の家か、だまされやすい人かなど、事前に確認するために電話をかけることが多く、これがいわゆる、“予兆電話”や“アポ電話”と言われるものです。
「闇バイトには指示役がいて、犯罪を実行するのはバイトの若者。つまり、慣れていない素人の犯行が多いため、全国で手荒な犯罪が急増しています。なかでも、高齢者だけで住んでいる家に事前に電話をかけて情報を入手してから、リフォーム業者や宅配業者を偽って侵入するなどのケースが多発しているのです。治安が良いとされる地方も狙われています」
以下は、実際にあった貴金属店の買取業者を装った特殊詐欺の予兆電話だそうです。
特殊詐欺犯 | いらない貴金属はありませんか? |
---|---|
被害者 | 亡くなった主人のいらない腕時計が5本くらいあります。でも、息子からこういう電話には応答しないようにと言われていて……。なので、結構です。 |
特殊詐欺犯 | そうですよね。いま闇バイト強盗が流行っているので、不安ですよね。それでは、息子さんがいるときに、その腕時計を査定させていただけないでしょうか? |
被害者 | すみません。息子は東京にいて、私は一人暮らしなんですよ。 |
この電話のやり取りだけで、この家には不要な高価な腕時計が数本あり、高齢の女性が一人で住んでいると、相手に知らせてしまったそうです。
まさにこのように、電話でのコミュニケーションを通じて情報を盗むのが予兆電話の特徴なのです。全国で20万件ほど発生しているそうですが、これは警察に届け出があったものだけなので、「実際は100万件あってもおかしくない」と佐々木さんは言います。
詐欺による被害者の共通点は、「自分はだまされない」と思っている人。さらに、高齢者の一人暮らしで、頑固で人を疑わない人。こういう特徴を知ってコミュニケーションをとると、この人はだまされやすい人かどうか見極めやすいそうです。犯罪組織はだまされやすい人を常に狙っているのですね。

「令和6年上半期における特殊詐欺の状況(警視庁特殊詐欺対策本部)」より
固定電話は特殊詐欺撃退の防犯最前線!

このように大部分がまず電話でだまされるとのことで、「各家庭における電話機の対策が急務です」と、佐々木さんは力を込めて話します。
「なかでもオススメは防犯機能がついた固定電話。僕は刑事時代から、高齢者の方々には固定電話に留守番電話機能をつけるように、ずっと言い続けてきましたが、留守電だけでは効果的な対策にならないなと感じていました。
最近の防犯機能がついた固定電話は、電話に出る前に、“この電話は迷惑電話防止機能付きのため録音します”とアナウンスで威嚇してくれます。犯罪者にとって、録音されるというのは一番嫌なこと。このアナウンスが流れるだけで、切って別の家にかけるかもしれません。
もし諦めずにかけてきたとしても、“これは迷惑電話の可能性があるのでご注意ください”と、不審な電話を受信した側にもアナウンスが流れ、注意喚起をしてくれます。さらに通話が始まると自動録音になり、話した内容をすべて自動で記録してくれます。
電話を切った後、“何だかおかしな電話だったな”と思ったら、録音した内容を警察や遠方に住む家族などに電話機を通じて聞かせることも可能です」
佐々木さんは84歳の父が岩手県で一人暮らしをしているため、このような防犯機能付きの電話機をプレゼントしたそうです。
「初めは、父は“元刑事の親が騙されるわけがない!”と言って、“いらない!”と言っていました。まさに、人を疑わない、頑固な人という条件にマッチしていますよね(笑)。これは僕が自分でやらないとダメだなと思い、帰省した際に防犯機能付き電話機を取り付けたところ、“お前の仕事の足しになればと思ったけど、全然かかってこないぞ”と言っています。おそらく詐欺や勧誘の電話を自動でブロックしているのでしょうね」
→迷惑電話や詐欺電話の対策機能を持った電話機をビックカメラ.comで探す
不審な電話は防犯アプリや防犯機能で撃退せよ!
一方、スマートフォンの防犯を高める方法はあるのでしょうか?
「最近はSNS詐欺や迷惑電話に使われている番号を自動検出して、受信しないように自動で設定してくれる便利なアプリもいろいろ登場しています。
たとえば、僕も実際に入れていますが、『トビラフォン モバイル』(トビラシステムズ株式会社)というアプリはオススメです。怪しい番号を自動でブロックしてくれるほか、600万件もの独自のデータベースに基づき、データベースに登録されている番号は企業名などの表示もしてくれるので、知らない番号でもどこからかかってきているのか事前に知ることができます」【※】
【※】その他同等の機能を持つアプリとして、以下のようなものもあります。「トビラフォン モバイル」を含め、いずれも全国防犯協会連合会の推奨する優良防犯電話の「推奨品目録」に選ばれています。詳細は各リンク先をご覧ください。
・NTTドコモ「あんしんセキュリティ」アプリ
・SoftBank「セキュリティ ONE」
・トレンドマイクロ「ウイルスバスター トータルセキュリティ」

各キャリアが発売している高齢者向けのスマートフォン(「らくらくスマートフォン」「シンプルスマホ」「BASIO」など)では、迷惑電話対策、還付金詐欺対策機能があり、設定すると、通話中に“還付金”、“ATM”などのワードがあると、通話している双方に警告が出る仕組みに。電話帳に登録していない相手には、会話を録音する旨のメッセージが流れるので、こちらも不審な電話を威嚇するのに有効です。
また、iPhoneの緊急SOS機能も有効だと佐々木さんは言います。電源ボタンを素早く5回押すことで、自動で110番通報してくれるそう。


また、設定→アプリ→パスワード→パスワードを開く→セキュリティと進み、セキュリティを押すと漏洩(ろうえい)の可能性があるパスワードが一覧で出てきます。ここで、漏洩しているパスワードがないか確認するのもオススメです。
ひとりひとりが防犯意識を高める時代に
最後に佐々木さんは、「日本の犯罪の中で、唯一ゼロにできる犯罪は詐欺だと思っています」と、力強く語ってくれました。
「家族と遠く離れていても、できるだけ普段からコミュニケーションをとってください。やはり家族とのコミュニケーションが足りないことで、高齢者の方が被害に遭うケースが少なくありません。お金を動かす際は、必ず家族に相談する。そういったことを徹底するだけでも大きな被害を防ぐことはできるはずです」
また、「自分は大丈夫だろう」と、すべてを鵜呑みにするのではなく、本当に正しいかどうか、ひと呼吸置いてから冷静に判断することが大切とのこと。そして、少しでも怪しいと思ったら、身近な人に相談することが必須です。
最近は便利な防犯アイテムがたくさん出ているのに、使っていない人も多いそう。なかでも、防犯電話機の購入費用を補助している自治体はたくさんあるので、そういった補助金を使用することで、取り付けやすくなりますね。
「一人ひとりが防犯意識を高く持ち、その意識を地域に繋げてもらいたい。“ここは防犯に強い街だ”と、地域一丸となって周囲に知らせることで、犯罪者への威嚇になり、それが自分の財産や家族を守ることにつながります。これからは自分で自分を守る時代。もっと多くの方々に防犯に興味、関心を持っていただきたいですね」
佐々木さんのお話を聞いて、早速実家の防犯を見直そうと改めて思いました。まずは詐欺の入り口になりやすい電話機から、みなさんもぜひ対策をしておくことをオススメします。
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