炊飯器最上位モデルを食べ比べ!ビックカメラお米ソムリエがお米の旨さを語り尽くす
新米の季節を前に、炊飯器の新製品が出揃ってきました。近年は炊飯器の値段も幅広く、安いものは1万円台から、中には10万円を超える上位モデルの炊飯器も続々登場しています。できればおいしく炊ける炊飯器が欲しいけれど、買って失敗するのも怖い。そんなみなさんに、今回はビックカメラのお米ソムリエが、人気の高い炊飯器メーカー3社の上位モデル3機種を徹底比較します。
お米ソムリエ
日本安全食料料理協会(JSFCA)が主催する資格で、お米の基本知識からお米の種類、お米の栄養価に至るまでの専門的な知識を証明する資格です。
ご飯をおいしく炊くコツは?
おいしく炊ける炊飯器を見つける前に、まずはおいしいご飯を炊くコツについて、森さんにお聞きしました。
「ご飯をおいしく炊くため、炊飯器のスイッチを押す前にできるテクニックがあります。まずはお米の洗い方。昔は“米を研ぐ”という言い方をしていましたが、いまは精米技術が向上しているため、力を入れて研ぐ必要はありません。逆に力を入れるとお米にヒビが入り、炊飯時に崩れてハリがなくなってしまうため、優しくもみ洗いするのが鉄則です。
10回ほどもみ洗いしたら一回すすぐという行程を3回繰り返したら、いったん米をザルに上げ、残っている水をしっかり切ります。その後、炊飯に必要な量のミネラルウォーターを入れ、夏は30分、冬は60分浸水させます。
もちろん、無洗米の場合はこの洗米の手順は不要です。各お米のパッケージの指示等に従ってください。
最近の炊飯器は洗米後すぐ炊飯開始し、終了音が鳴ってからすぐ開けていただくことを前提に作られていることが多いですが、私の個人的な好みで言うと、できればあらかじめ浸水させたほうが炊飯時に旨み成分が出やすく、よりやわらかく炊きあがると感じています。
またご飯が炊けてもすぐにフタを開けず、10分から20分ほど放置するとご飯に艶が出ます。その後フタを開けて蒸気を放出したら、余分な水分を飛ばすと、ハリのあるおいしいご飯が楽しめますよ」(お米ソムリエ・森亮介さん、以下森さん)
炊飯器を選ぶ際のポイントは?
続いて、炊飯器を選ぶ際のポイントについて森さんにお聞きしました。
ポイント1. 加熱方式で選ぶ
炊飯器選びでチェックしてほしいのは、加熱方式です。加熱方式には、マイコン式、IH式、圧力IH式がありますが、マイコン式は釜全体にムラなく熱を与えるのが難しいため、できればIH式・圧力IH式を選びましょう。
粒立ちのよいご飯を食べたい人はIH式、やわらかいご飯を食べたい人は圧力IH式がおすすめですが、最近は炊き分け技術が向上しているので、圧力IH式でも粒立ちのよいご飯も炊けるようになってきています。
ポイント2. 内釜の種類で選ぶ
内釜の素材も、ご飯のおいしさを大きく左右するため要チェックです。多くの内釜は金属で作られていますが、おいしく炊ける炊飯器はアルミや鉄など数種類の金属を複層に重ねることで蓄熱性や熱伝導性を高めています。なお一部メーカーの最上位モデルの中には、本物の土鍋や炭を使用したものもあります。
ポイント3. 付加機能で選ぶ
炊飯器によっては、独自の付加機能を搭載したものもあります。たとえば、銘柄や好みの食感に合わせて炊き上げる「炊き分け」機能や、煮物などが作れる「調理」機能、またスマートフォンから操作できるIoT機能など。まとめて炊いたご飯を冷凍することが多い人は、解凍してもおいしい「冷凍ご飯」機能を搭載したモデルを選ぶといいですね。
上位モデル炊飯器3機種の特徴
今回の比較レビューでは、象印マホービン、パナソニック、タイガー魔法瓶の最上位モデルを用意し、白米を炊くとともに、各炊飯器が得意とする炊飯メニューを試してみました。
まずは各製品の特徴をご紹介!
象印マホービン 炎舞炊き NW-FC10(5.5合炊き)
釜底に6つのIHヒーターを搭載し、ローテーションで加熱することで縦方向と横方向の複雑な対流を生み出し、釜の中心部までかき混ぜます。
「象印は、昔ながらのかまどの炎を再現した加熱方法が特徴。米を激しく舞わせることで、一粒一粒にしっかり熱を与え、甘みを引き出すことができます」(森さん)。
自分の好みに近い食感に炊ける機能として、121通り用意した「わが家炊きメニュー」を搭載。前回食べたご飯のかたさや粘りの感想を入力すると炊き方を微調整し、炊くほどに好みの炊き加減に近づけることができます。炊飯から保温まで、6つのセンサーがきめ細かくコントロールしているのも革新的。
パナソニック 可変圧力IHジャー炊飯器 ビストロ SR-V10BB(5.5合炊き)
オーブンレンジをはじめとしたパナソニックの「ビストロ」シリーズに、前モデルから炊飯器も仲間入り。AIを活用し、お米の状態に合わせて約9600通りの中から最適な火加減、圧力加減を自動で調整して炊飯する「ビストロ匠技AI」を搭載しています。
本モデルから、保温中もご飯残量を検知し、最適な保温温度に火加減を調整する機能を搭載し、保温ご飯のおいしさも持続するようになりました。
「AIという先進技術を駆使しているのもパナソニックらしさ。可変圧力やIHの大火力を伝えるダイヤモンド竃釜(かまどがま)などは引き続き搭載しており、これまで培ってきた技術が最大限に生かされるのではないかと思います」(森さん)
タイガー魔法瓶 土鍋圧力IHジャー炊飯器〈炊きたて〉土鍋ご泡火炊き JRX-G100(5.5合炊き)
内釜には、蓄熱性が高く遠赤効果が金属釜の約4倍ある本物の土鍋(萬古焼)を使用。さらにIHヒーターにも、熱効率の高い「300℃WレイヤーIH」を搭載することで、激しい熱対流が生まれやすく、米の甘みをしっかり引き出します。一方で土鍋から出る泡が米を包み込むため米表面を傷つけにくく、旨み成分を閉じ込めるため、弾力と旨みのあるご飯が炊き上がります。
特徴的なのが、米の銘柄や産地に合わせて炊き上げる、70種類の「銘柄巧み炊きわけ」とコシヒカリの産地別炊きわけ機能。
「食感も5段階、火加減も3段階から選べ、おこげが作れるのも土鍋ならではの魅力。タッチパネルで直感的に操作できて、お手入れがラクなのもいいですね」(森さん)。
いざ、炊きたてご飯のおいしさを比較!
さっそく白米を通常の炊飯モードで各炊飯器で3合ずつ炊いてみました。使用したのは、標準的な価格帯の新潟産コシヒカリです。炊きたてのご飯を森さんに食べ比べてもらいました。
象印マホービン
「こちらはつややかな炊きあがり。輪郭が少し崩れていますが、米粒がとても大きくなっているぶん、水分をたっぷり含んでいることがわかります。実際に食べてみると甘味が強く、ふくよかな食感。日本人は欧米人に比べて唾液の分泌量が少ないそうなので、こういった食感を好む方も多いでしょう」(森さん)
パナソニック
「粒自体は大きくありませんが、やわらかい炊きあがり。でも水分量が多いという感じもないので、さらっと食べやすいです。いい意味で主張しすぎないので、お子さんからお年寄りまで幅広い人が食べやすい味わいですね」(森さん)
タイガー魔法瓶
「一粒一粒の輪郭がしっかりしていて、ツヤもあってきれいですね。粒自体がいろいろな方向を向いているので、炊飯中に激しい対流が起きたのがよくわかります。口に入れると、表面がつるんとなめらかでハリもある。噛むほどにお米の香りと甘みが口いっぱいに広がって、幸せな気持ちになりますね」(森さん)
ご飯以外の炊飯でも実力をチェック!
今度は、各メーカーが得意とする白米以外のごはんメニューを炊いてみました。
象印マホービンは、やわらかい「おかゆ」メニューと、さらっと食べられる「粒立ちがゆ」メニューを用意しているため、今回は「粒立ちがゆ」のレシピの中から「鮭と明太子のおかゆ」を作ります。
パナソニックでは、具材たっぷりの炊き込みご飯を作ります。通常、炊飯器で作る炊き込みご飯は、具材が生煮えになるのを防ぐために、入れられる具材の量は限られていましたが、パナソニックは「加圧追い炊きポンプ」で加熱できるため、お米1カップあたり150gの具材を入れることが可能。今回は、鶏もも肉をなんと450g、ドーンと使った「アジア風炊き込みごはん」にチャレンジしました。
タイガー魔法瓶は、火加減が選べておこげが作れることを活かした炊き込みご飯「豚肉とたけのこごはん」。
象印マホービン 鮭と明太子のおかゆ
「炊飯器で炊いたおかゆというと、粒が潰れて歯応えがなく、体調が悪いときくらいにしか食べないという方も多いと思いますが、この「粒立ちがゆ」は違います。やわらかいのにべちゃっとしておらず、米の食感も味わえます。これなら、おかゆが苦手な人でも、きっとおいしく食べられると思います」(森さん)
「鮭と明太子のおかゆ」レシピはこちら
パナソニック アジア風炊き込みごはん
「鶏肉450gをそのまま乗せてもOKというのは、大胆かつ画期的。これができれば、レシピのバリエーションも広がりそうですね。圧力をかけているから、鶏肉はほろほろにやわらかく、ご飯にも味がしっかり染み込んでいます。ワンプレートご飯が簡単にできるのは、忙しい人には嬉しいですね」(森さん)
アジア風炊き込みごはんレシピはこちら
タイガー魔法瓶 豚肉とたけのこごはん
「炊きあがりは少し水分が多めな印象でしたが、蒸気を飛ばすと硬すぎずやわらかすぎず、絶妙な食感に。お米がいい感じに豚肉とたけのこの風味をうまみを吸っているので、ご飯だけでもおいしいですね。そして、何よりおこげがあるとテンションが上がる!この香ばしさがたまりません」(森さん)
「豚肉とたけのこごはん」レシピはこちら
この炊飯器はこんな人にぴったり!
最後に森さんが食べ比べて感じたことをまとめてみました。
甘みを強く感じる主役級の象印マホービン
「象印マホービンは、もっちりやわらかい食感に炊き上がるので、みずみずしいご飯が好きな人におすすめ。口に入れた瞬間、甘みを強く感じる主役級の味なので、少量でもしっかり満足感が味わえます。高齢で食が細くなった人でもおいしく食べられそう。逆に重さも感じられるので、わが家炊きで調整すると、より自分好みの食感に合わせられます」(森さん)
主張しすぎない味わいのパナソニック
「パナソニックの炊飯器は、タイガーと象印の間のような食感。米自体にベタつきを感じますが、主張しすぎない味わいなので、カレーや卵かけご飯に合わせるといいですよ。栄養バランスが取れた具沢山の炊き込みご飯が作れるのは高ポイント。これだけでも選ぶ価値はあると思います」(森さん)
米の粒がしっかりしているタイガー魔法瓶
「もっとも米のおいしさを引き出していると感じたのは、タイガー魔法瓶です。米の粒がしっかりしているので、一粒一粒噛みしめながら米そのものを味わいたい人におすすめ。銘柄炊き分け機能も充実しており、まさにお米好きのための炊飯器といえそうです。あと、土鍋の内釜は重いというイメージを持つ方も多いかもしれませんが、この内釜のように最近の内釜は決して重い印象はありませんね」(森さん)
以上、今年の最新最上位モデル3機種を徹底比較してきましたが、いずれも独自の最新技術を搭載され、味や食感に明確な特徴が感じられました。
値段が高いのでためらってしまう人も多いかもしれませんが、上位モデルならではの贅沢なおいしいご飯を毎日味わえることを考えたら、炊飯器に投資する価値はあるのではないでしょうか。みなさんもぜひ、わが家の一台を見つけてみてください。
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