はじめてでも撮れる皆既月食!必要なレンズと焦点距離を徹底解説
2025年9月8日、約3年ぶりの皆既月食が起こりました。
朝方の西空で高度が低く、観察条件はやや厳しいと予測されていたものの、意外にも多くの地域で楽しめたのではないでしょうか。しかし天文ファンの間では「本番は半年後」と囁かれていました。
それが、2026年3月3日に訪れる皆既月食です。
次回国内で見られるのは2028年12月31日ですが、撮影条件としては今回が断然有利。この記事では、その理由や観察・撮影に必要なアイテム、撮影のコツを紹介します。
皆既月食とは
基本的なところから説明していきます。皆既月食とは「太陽と月の間を地球が通る」ときに発生する天文現象。太陽の光を地球が遮り、地球の影の中に月が入ることで起こります。
満月が隠されている部分が地球の影で、その中を月が通っていくと考えると、とても壮大なものを感じます。それぞれが別々の公転・自転をしている中でおおよそ3年に一度、このように一直線に並ぶ時間が生まれるのです。不思議ですね。
なぜ月が赤く染まる?
太陽が沈むときの夕陽を思い出してみましょう。赤く染まりますよね。あれと同じことが皆既月食では起こります。
光には大きく分けて短波長と長波長の2つの波長があります。短波長は青~紫付近、長波長は赤付近の色を持っています。太陽の高度が低くなると短波長の青い光は私たちが立っている位置に届かなくなりますが、長波長の赤い光は届きます。それで低い太陽は赤く染まるんですね。
地球の影の中に入った月にも同じことが起こります。短波長の光は地球によって遮られますが、長波長の光が地球を迂回して月まで届きます。これによって月が赤く染まる、皆既月食という天文現象が発生するんですね。
ちなみに皆既月食中の月は真っ赤ではなく赤銅色(しゃくどういろ)という少し黒に寄った赤に染まるのが特徴です。
2026年3月3日はどんな皆既月食?
皆既月食の情報を調べるときにおすすめなのが、天体望遠鏡メーカー・ビクセンからリリースされている無料アプリ「Moon Book」です。これは必ずダウンロードしておきましょう。
条件が良い皆既月食の理由@ 発生時刻
Moon Bookでは月食の始まり(月が欠け始める)が18:50、完全に地球の影に入る皆既月食のスタートが20:04、そして皆既月食が終了するのが21:03。そこからだんだんといつもの月に戻っていき、月食が終了するのが22:18です。
前回の皆既月食は平日の深夜2時頃から朝方まででしたので、そのまま寝ないで出勤した方も多かったのでは!?
今回の皆既月食は私たちが普段起きている時間帯に発生します。少し仕事が遅く終わっても、仕事帰りに皆既月食が始まってる~! ぐらいの時間帯ですね。身体への負担が少ない時間帯で発生するのが今回の月食が「条件が良い」とされている理由のひとつです。
条件が良い皆既月食の理由A 高度
Moon Bookで皆既月食が発生する高度を確認してみると、だいたい30~40度くらいの高さで発生します。
高度が低ければ月は大気の影響を受けてシャープに写らない可能性が高くなります。しかしながら、高すぎると地上風景と絡めることができません。30~40度という高度は、月もクリアに写せて地上風景と絡めやすい、写真撮影にちょうど良い高度であると言えるでしょう。
鉄塔と月とか、何かの建物と月とか、いつもの地上風景と皆既月食のコラボでより印象的な作品に仕上げることができると思います。
昇ったばかりの月を120mmで撮影したもの。月が少しぼんやりとして写っています。光度が高くなると月は明るさを増し、シャープに写るようになります。シャープになってくる高度の目安がだいたい30度付近から上なのです。
また、高度を図る目安として、腕を伸ばしてグーすると10度、親指を立てると15度と覚えておくと便利です。ちょうどよく月が風景と絡むのかどうか、現地をロケハンしたときの指標になるでしょう。
月が地球の影に隠れていく様を堪能しよう
完全に地球の影に入った皆既月食中の月だけを狙うのはもったいないです。どんどん月が欠けていくさまはとても見事なもので、欠け具合によってさまざまな様子を見せてくれるのが皆既月食の魅力です。欠け始めからいつもの月に戻るまでの約3時間の間、存分にこの天文現象を味わいましょう。
撮影機材:FUJIFILM X-T2,VIXEN SD103S(795mm/F7.7),SX2赤道儀
撮影データ:左上→ISO400, f7.7, SS1/200秒, WB:AUTO/右上→ISO400, f7.7, SS1.6秒, WB:AUTO/左下→ISO400, f7.7, SS1.6秒, WB:AUTO/右下→ISO400, f7.7, SS5秒, WB:AUTO/
全てPhotoshop Lightroom Classicで画像処理
皆既月食のための撮影準備
皆既月食に最適な焦点距離は?
焦点距離ごとに写せる月の大きさを示した図。筆者の経験からだと、月のクレーターが写るようになるには500mmよりも長い焦点距離がおすすめ。
ロケハンは入念に!ロケハン方法やおすすめアプリ
何かと月を絡めたいとなると、事前のロケハン・調査は必須になります。あの建物と月を絡めたら面白そうだなぁ、なんて思ってもそれは机上の空論かもしれません。
実際に現地に行くと、何かビルが建っていたり、電線があったり、近くにものすごく明るい街灯があったり、理想通りにいかないのがこの撮影の難しいところ。一度は実際に現地に行って確認することをおすすめします。私が実施しているロケハン方法をいくつかご紹介します。
太陽と月の位置が確認できるアプリ「サン・サーベイヤー」を使う
実際に現地に行かなくてもなんとなく現地の様子を調べるときには専用のアプリを使うと便利です。撮影候補地からどんな風に見えるのかを確認するために活用しましょう。
有料アプリ「サン・サーベイヤー」などを使うとGoogleストリートビューの画面に月の軌道をシミュレーションすることもできます。
しかしながら、これらはあくまで参考にしかならないので、本当にその構図で撮れるのか!? は現地に行って確認しましょう。もし候補地がイメージと違った場合のことも考えて、いくつか候補地を挙げておくことをおすすめします。
有料アプリ、サン・サーベイヤーはGoogleストリートビューと連携して、指定したポイントから月がどのように見えるのかを調べることができるおすすめアプリです。
| サン・サーベイヤー(有償版)アプリのダウンロード | |
| iOS版 | Android版 |
また、山と月を絡めたい場合は「スーパー地形」がおすすめ。地図で選んだ位置からどのように月が見えるのかを高精度をシミュレーションできます。
以下の動画の4:54~あたりからスーパー地形の使い方を解説しています。
【半年の間で2回も皆既月食が起こる!】撮影地に迷ったらこれを使え!!アプリ ”スーパー地形”
撮影設定の注意
撮影の注意点@ 望遠で狙うときは「過焦点距離」を調べておこう
「過焦点距離」とは、センサーサイズ・f値・焦点距離によって導き出されるもので、簡潔に言うと「どのくらい離れていれば、使用しているレンズで風景と月の両方にピントを合わせられるか」という参考値です。
これを調べられるサイトはいくつかありますが、私のおすすめは有料アプリ「PhotoPills」を使うこと。撮影に役立つさまざまな機能が搭載されているアプリなんですが、この中に「過焦点早見表」という機能があります。
例えば下の図1ではニコンZ8を使用して、600mm/f6.3のレンズを使用した場合の過焦点距離は約1.8kmということになっています。つまり、この組み合わせで仮に東京タワーと皆既月食を撮影するなら、東京タワーから1.8km離れなければならないことになります。
それを視覚化したものが図2になります。ここまでの望遠になるとかなりハイレベルなロケハンが必要な撮影になりますが、圧縮効果のある作品にするにはぜひ覚えておきたい知識ですね。
撮影の注意点A 撮影の設定は「地上風景に合わせる」
皆既月食と風景を絡めて撮影するなら、夜景などのそこそこ明るい場所で撮影するのがおすすめです。皆既月食と言えど、月の光はとても明るいので、構図内の輝度差をなくすことが大事。つまり、月と似たような、もしくは同じような明るさの景色を前景に選ぶべきです。そうすれば、地上風景がよく写るように撮影すれば月もしっかり写ります。カメラ内のオートの機能も役立つはずです。
皆既月食をより楽しむために
皆既月食中の天の川と絡める
星景写真を撮影したい場合は、天の川が撮れるような空の暗い場所にいきましょう。ビクセンの無料アプリ「Nbula Book」で当日の空を調べると、24mmの画角よりも広角なレンズを使用すれば、左に月、右に冬の天の川という構図も撮れるようです。
今回、私も狙いたいと思っているのが、望遠レンズで狙った鉄塔や建造物と月食の構図。例えば300mmでどのくらいの風景まで入るのかな……ということを調べるときにはビクセンの無料アプリ「Nebula Book」がおすすめ。焦点距離別に写る範囲を示してくれるのでシミュレーションしやすい。
広角レンズで撮影する皆既月食の写真については、私が運営するオンラインサロン「STAVE」塾生の作品を2つご紹介します。2人は偶然にも富士山・山中湖で同時刻に撮影をしていたということで、同じ場所から異なる焦点距離の画像で非常に参考になります。
撮影:やさもささん
カメラ:SONY a6400
レンズ:SONY FE 24mm F1.4 GM (36mm相当)
露出時間:ss 6s
絞り値:f1.6,
ISO:500
撮影:ビンゴさん
カメラ:α6700
レンズ:E16-55mm F2.8 G (69mm相当)
露出時間:2ss
絞り値:F5
ISO:400
(若干トリミング)
ドアップで撮影してみよう!
長焦点で撮影するのももちろんおすすめです。皆既月食中の月はノイズが目立ちやすいので、ISO感度は6400以上に上げるのはおすすめしません。また、焦点距離にもよりますが、シャッタースピードも1/10を下回るとブレて写ってしまう印象があります。
このあたりは機材にもよるので、実際に当日撮影しながら、どの程度のブレまで許容できるかを自分で判断する必要があることを覚えておきましょう。赤道儀を使えば低感度&スローシャッターで撮影することが可能です。今から赤道儀の練習をするのもありです。
肌感覚としては、ISO6400以上はノイズが目立ってくる。過剰にISO感度を上げることはせず、撮影後の画像処理で補正をするようにしよう。
画像処理で浮かび上がる「ターコイズフリンジ」
撮影後の画像処理で、WBを少し青に振ると表現できるターコイズフリンジと呼ばれる青い線。撮影時は白い線にしか見えないですが、調整するとそこには美しいグラデーションがあることがわかります。
タイムラプスや動画で撮ってみよう!
近年の一眼カメラは、動画性能やタイムラプス撮影性能が格段に向上しています。タイムラプス撮影のポイントは大きく3つあります。
@ Av優先でインターバル撮影
A 露出平滑化をON
B WBを太陽光に固定すること
細かい設定はカメラによって変わってきますが、この3つが最も大事な項目だと思います。
2022年11月8日に起こった皆既月食のタイムラプス動画です。私はこのときライブ配信を行っており、その片手間で撮影したものです。慌てて撮影していたので、周囲を歩いたせいでブレていたり途中で撮影設定を変えたりといろいろとミスがあったのですが、こんな感じで撮影できるんだと参考にしてもらえればと思います。このときは間違ってWBをAutoにしてますが、本来は太陽光がおすすめです。途中で曇ったりしても、それはそれでタイムラプス動画的には面白い演出になりますね。
そんなにたいそうな機材、急に買えないよ~と言う方には以下のようなセットがおすすめ! ケンコー・トキナーから発売されているミラーレンズを使えば、安価で手軽に超望遠が手に入ります。ただし、皆既月食中の月はとても暗いのでF8よりも暗いレンズは推奨しません。なるべく明るく撮れるものか、暗いのであれば赤道儀を使用するのがおすすめです。
撮影機材:トキナーSZX 400mm F8 Reflex /富士フイルムX-T5/ビクセンポラリエU + ポラリエ用ステップアップキット + 極軸微動雲台DX + ポーラメーター
まとめ
撮影だけじゃなく見て楽しむことも忘れないようにしよう!
今回の皆既月食は、単なる天体ショーにとどまりません。観察条件に恵まれ、月の変化をじっくり追える貴重な機会であり、初心者でも写真撮影に挑戦しやすい絶好のタイミングです。撮影テクニックを駆使すれば、赤銅色に染まる神秘的な月や部分食から皆既へ移り変わるドラマチックな瞬間を残すことも可能です。
次に日本で皆既月食を楽しめるのは2028年の大晦日。年末で慌ただしい時期であることを考えれば、今回の2026年3月3日は見逃せない天文イベントと言えるでしょう。ぜひこの記事を参考に、観察準備を整え、宇宙が見せてくれる一夜限りの奇跡をその目で、そしてレンズ越しで捉えてみてください。
せっかくの天文現象。どうせならドアップで楽しんでもらいたい! 天体望遠鏡や双眼鏡を使えば、より神秘的な姿を味わうことができます。でも個人的には、やっぱりどんな撮影も自分の目で見た感動を超えることはありませんね。
※この記事で紹介している各アプリの動作環境などについては、ご自身の責任においてご確認ください。
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