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[飛行機撮影]流し撮りを機材設定からコツまでわかりやすく解説!

2025/09/19
[飛行機撮影]流し撮りを機材設定からコツまでわかりやすく解説!

飛行機撮影といえば、力強く離陸する瞬間や空を舞う美しい機体の姿を捉えることが醍醐味ですが、静止画に“動き”を与えたいと思ったことはありませんか? そんなときに挑戦したいのが「流し撮り」です。

機体はシャープに写しつつ、背景はダイナミックに流れる━━このテクニックを習得すれば、スチル写真にスピード感と迫力をプラスすることができます。

今回は、初心者からステップアップしたい方に向けて、飛行機撮影の基本から一歩進んだ「流し撮り」の魅力と実践方法を、カメラ設定やオススメ機材、撮影場所の選び方まで詳しくご紹介します。

目次

    飛行機撮影に欠かせない流し撮り

    前回は飛行機撮影の基本としてスポッティングカットの撮り方を紹介しましたが、今回は基本から一歩進んで飛行機撮影における「流し撮り」について解説します。

    高速で動く被写体である飛行機撮影において、流し撮りは必須と言っても過言ではない撮影テクニックのひとつ。スチル写真に動感を与えることができるため、人気の撮り方でもあります。

    ただ、高速で動く被写体をしっかりと写し止めるだけでも慣れが必要な飛行機撮影。さらに、背景が流れるようなスローシャッターを切りつつ機体を止めるということは、しっかりとしたカメラやレンズの設定、知識、そしてある程度の慣れが必要になります。

    流し撮りにオススメはファインダー付きの一眼カメラかミラーレス一眼カメラ。

    飛行機の流し撮りには、ファインダーを備えた一眼カメラかミラーレス一眼が適しています。

    一眼カメラがオススメの理由は、オートフォーカス(以下AF)性能や連写性能、手ブレ補正機能など流し撮りに適した多機能なカメラが多いこと。ミラーレス一眼はブラックアウトにより画角に機体を保持しつつ追いかけ連写するのが難しいカメラもありますが、最近は徐々に改善されつつあります。

    用意しておきたい機材やアクセサリ

    レンズは、流し撮りモード付きの手ブレ補正機能や、高速なAF性能を備えたタイプが効果的です。手持ち撮影の際は軽いレンズのほうが振りやすく歩留まりの良さを感じます。歩留まりとは、流し撮りでシャッターを切った枚数に対して、機体がしっかり止まっている枚数の割合を表すときに使われますが、カメラやレンズ以外でこの歩留まりを上げてくれる装備が三脚です。

    写真左の雲台は3way雲台。写真右のビデオ雲台は流し撮りに最も適した雲台といえます。

    特にビデオ雲台との組み合わせでは歩留まりの向上が期待できます。水平方向のロックのみフリーにして使うことによりカメラやレンズの重さを軽減してくれるので歩留まりの向上に寄与してくれます。

    「一脚は?」という質問を多くいただきますが、横に180°近く機体を追いかけながらレンズを振ることも少なくない飛行機撮影においては途中でバランスが崩れてしまったり、一脚が浮いてしまったりするのでどちらかというと三脚をオススメしています。

    晴天の日中に流し撮りをする際に使用をオススメするNDフィルター。

    また、晴れている日中に流し撮りをするときはNDフィルターを使うことで、シャッタースピードの調整が容易になり、流し撮りがしやすくなります。NDフィルターを使用せず絞り込んでシャッタースピードを落とすと、回折現象(フォーカスが合っていないように見える)が生じてしまうことがあります。

    筆者は以前、ND8やND16などを使用していましたが、現在は取り込む光量をフレキシブルに変えられる可変NDフィルターを使用しています。

    撮影のポイント

    Canon EOS R7 + RF70-200mm F2.8 L IS USM f2.8 1/5 ISO400 WB:AUTO

    背景選び

    流し撮りは風景とともに撮るヒコーキ写真と同様に背景選びが重要。当たり前のことですが、雲一つ無い青空や真っ白な曇天を背景とすると流れている感じがわかりづらく、流し撮り作品として認識しづらくなります。そのため、地上を走行する機体や着陸寸前、離陸直後の機体を撮影するのが基本。

    日中は特に色の濃淡の多い背景、夜間は点光源の多い背景を選ぶと良いでしょう。まずは空港のターミナルビル屋上など高い位置にある展望デッキに立ち位置をとってみましょう。俯瞰(見下ろし)気味に機体を見られる場所が少なくなく、流し撮りに適した背景を得られることが多くなります。

    シャッタースピードの設定

    Canon EOS R3 + RF70-200mm F2.8 L IS USM f3.2 1/15 ISO1600 WB:AUTO

    カメラの設定で最も大切なのはシャッタースピードの設定。露出モードをマニュアルかシャッタースピード優先に設定しましょう。全自動露出モードは基本、速いシャッタースピードで背景を止めてしまいます。流し撮りモードがカメラについている場合は使用してみるのも良いでしょう。まずはゆっくり一定の速度でタキシング(地上走行)している機体を撮影してみましょう。

    離陸滑走している機体や着陸直後の機体はスピードの変化があり難易度が上がります。シャッタースピードは機体のスピードによって設定します。ゆっくり走行しているようなときは1/10~1/30秒など、背景を派手に流したい場合は1/5~1秒などに設定。離陸時にスピードが出ているときは1/125~1/80秒、背景を派手に流したい場合は1/60~1/20秒などに設定してみましょう。

    基本的には機体をビシッと止めて背景を流します。シャッタースピードを速くするほど機体は止まりやすくなりますが、背景の流れは大人しくなります。シャッタースピードを遅くするほど背景の流れは大きくなりますが、機体がブレやすくなります。このバランスを考えながらシャッタースピードを設定するのが流し撮りの醍醐味といえるでしょう。

    AFフレームは機体サイズに合わせて大きさを設定しましょう。
    Canon EOS-1D X Mark II + EF600mm f/4L IS II USM f4 1/15 ISO3200 WB:AUTO

    AF設定

    AFの設定ですが、シャッターボタンを半押ししているときにフォーカスを合わせ続けてくれるコンテュニアス(追従式)AFを使用。フォーカスのフレームは被写体認識「飛行機」が装備されているカメラなら全画面でも良いですが、そうではない場合や夜間などは機体サイズに合うようなフレームを設定しましょう。

    フレームが機体に対して大きすぎると背景にフォーカスが抜けてしまうことも考えられますのでご注意ください。フレームの位置ですが、機体の胴体の真ん中あたりでも良いですが、慣れてきたらコックピットの窓に合わせてみましょう。

    Canon EOS R6markU + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f16 1/20 ISO100 WB:AUTO
    ※等倍にして見てブレずに止まっているか、フォーカスがきているか確認しましょう。

    ブレない撮り方のコツ

    カメラを設定したらいよいよ撮影ですが、脇をしめてしっかりカメラを保持しファインダーで機体を追いかけながら撮影しましょう。基本的には右から左へ、左から右へカメラとレンズを振りますが、離着陸機は斜めの動きも入るので水平に気をつけましょう。まずは機体全体を画角に収めシャッターボタンを半押ししながら追いかけ、任意の背景のところに機体が差しかかったときにシャッターボタンを押し込みましょう。

    連写設定はもっともコマ数の稼げる設定にすることをオススメします。飛行機での流し撮りは手持ちで右から左、左から右へ180°近くレンズを振ることもあるため、身体の動かし方も重要。最も撮りたい背景のところに正対し、足などがもつれないよう早め早めに体勢を入れ替えましょう。撮り終えたら画像を拡大し、機体がブレていないか? フォーカスがしっかりきているか? などを確認します。パソコンをお持ちの方は取り込んでからでも構いません。

    Canon EOS R7 + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f9 1/25 ISO400 WB:AUTO

    まずは機体真横あたりの撮影から始めると良いでしょう。真横からの撮影だと機体の前から後ろまで止まって見えやすいからです。機体が斜めの状態でスローシャッターで流し撮りをすると、機体の胴体真ん中あたりは止まっているのに、前後がブレてしまうことがあります。これは機体の前後で見かけの速度が違うため。ですから前述の通り、慣れてきたらコックピットウィンドウあたりにフォーカスを合わせ、機体前部をしっかり止めるようオススメしています。

    Canon EOS R8 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM f8 1/20 ISO12800 WB:AUTO
    Canon EOS R5 MarkU + RF70-200mm F2.8 L IS USM f2.8 1/8 ISO2000 WB:AUTO

    慣れるまで何度も撮ろう

    機体の真横あたりを撮るのが基本ですが、慣れてきたら背景を広めにとったり機体に寄ったりして流し撮りもしてみましょう。背景を広めに撮る流し撮りは背景をどこまで入れるか、どこを引くかの足し算や引き算が難しく、機体に寄る流し撮りは画角が狭くなる分、任意の位置で機体を写し止めることやブレないように撮ることが非常に難しくなります。

    ただ、難しいからこそ撮れたときに嬉しいのが飛行機撮影の醍醐味のひとつ。しっかりと機体を止め、盛大に背景が流れた動感溢れる作品にぜひチャレンジしてみましょう。

    これまで「慣れてきたら……」と何度も繰り返して言いましたが、流し撮りはほかの撮り方と違い、カメラの設定や撮り方の知識とともに「慣れ」が必要な撮り方のひとつ。どんどん撮りに行かれて身体で覚えるのが肝要です。空港に通い、いっぱい撮ってぜひ身体に染み込ませてしまってください。

     

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    A☆50/Akira Igarashi
    文・写真
    A☆50/Akira Igarashi
    航空写真家。「ニッポン全国空港放浪記」著者。年間最高約144日を車中泊や下道を駆使した放浪ヒコーキ撮影に充てる。JAL公式カレンダー、大手航空会社や大手カメラメーカーの公式撮影を担当。日本写真家協会会員。
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