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「防災の日」を前に3人の専門家から学ぶ “命を守る日常防災”

2025/08/26
「防災の日」を前に3人の専門家から学ぶ “命を守る日常防災”

9月1日は「防災の日」。地震、台風、豪雨など自然災害が頻発する日本で生きる私たちにとって、毎年この日を「命を守る備え」を見直す大切な節目にしたいものです。

では災害大国で、私たちはどのように備えればよいのでしょうか。

在宅避難の準備、帰省先でのリスク管理、日常に無理なく取り入れられる防災食の工夫など、防災アドバイザーの高荷智也さん、岡部梨恵子さん、防災食アドバイザーの今泉マユ子さんへの取材記事をもとに、すぐに実践できる防災対策の基本を総集編としてお届けします。

目次

    【第一章】防災のプロに学ぶ、すぐに役立つ備えの基本 

    防災アドバイザーの高荷智也さん。

    地震、台風、豪雨、猛暑など、自然災害が多発する日本。そんな国に暮らす私たちにとって、防災の備えは“もしもの話”ではなく、日常の一部として捉えるべきものです。しかし、「何から始めればいいのかわからない」という声も少なくありません。

    第一章では、高荷智也さんに「備え」の重要性について伺いました。

    家庭での備えは3段階で考える

    日本で想定すべき主な災害は、以下の3つに分類できます。

    • @全国共通の地震や感染症
    • A地域に特有の津波や土砂災害
    • B突発的な竜巻や落雷

    しかし、これらすべての災害に備えるのは難しいため、まずは「誰もが直面し得る」地震・台風対策から始めるのが現実的です。

    そこで高荷さんは、これら災害に対しての備えを次の3段階に分けて考えることを提案します。

    1. 命を守る備え(建物の耐震性や家具の固定)
    2. 逃げるための備え(避難場所の確認、防災リュックの準備)
    3. 生き延びる備え(在宅避難のための備蓄)

    また、避難に際しての備えとして大きなカギを握るのが防災リュックです。防災リュックには以下6つの観点から必要なものを用意しましょう。

    1. 体の一部(眼鏡、薬、補聴器など)
    2. 身の安全(雨具、ヘッドライト)
    3. 常備薬や応急手当と衛生(ばんそうこう、非常用トイレ)
    4. 情報収集(モバイルバッテリー)
    5. 一時滞在(アルミブランケットなど)
    6. 水と食料(長期保存可能な非常食)

    これら6つの観点をベースに、自分の環境に応じてリュックの中身をカスタマイズすることが大切です。

    「ヤマゼンの防災リュック30点セット」は、ランタンやホイッスル、ポンチョなど、避難先で必要なアイテム30点が備わる(写真は有楽町店の防災リュック)。

    ライフライン停止への備え

    カセットコンロ、乾電池式のライト、ラジオ、ポータブル電源も用意しておきましょう。ソーラーパネルとの組み合わせで、電力を自給できれば理想的です。

    そして被災者が口を揃えて言う悩みが、トイレ問題。一人あたり50~100回分の非常用トイレの備蓄が必要とされています。避難所や断水した家屋で使いたくても使えない、衛生環境が心配という声が多いので、多めに揃えておきたいですね。

    避難所や断水した家屋で使えない、衛生環境が心配という声が多いので、災害用トイレは必ず多めに揃えておきたい(写真は有楽町店の災害用トイレ)。

    「備え」とは、防災グッズを揃えるだけでなく、家族との連携や情報収集の手段まで含めた総合的な準備です。防災は特別なことではなく、日常の延長。まずは家具の固定やハザードマップの確認から、今日できることを始めてみましょう。自分と家族の命を守る第一歩は、すぐにでも踏み出せます。

    参考にしたい防災情報サイト
    >>『重ねるハザードマップ』 
    確認したい箇所をクリックすると、その場所の自然災害リスクが表示されます。
    >>『気象庁 災害情報WEB』
    気象庁が発信する最新の気象情報、災害情報が確認できます。
    >>『国土交通省 防災ポータル』
    災害情報や気象情報、交通・物流情報などさまざまな情報にアクセスできます。
    防災のプロに学ぶ、すぐに役立つ備えの基本
    防災のプロに学ぶ、すぐに役立つ備えの基本
    【第一章の内容について詳しく書かれた元記事はこちら】
    自然災害が発生しやすい土地に暮らす私たちにとって、日々の備えはもはや必須。
    自分にとって本当に必要な備えとは?という不安を抱える方のために、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんが、いますぐ知りたい「防災の備えの基本」について教えてくれました。

    【第二章】帰省先でも安心して過ごすために

    2024年元日に発生した能登半島地震は、いまもまだ私たちに深い傷跡を残しています。帰省中に被災した人も多く、「帰省先での防災」の重要性が注目されました。災害大国・日本では、大型連休や年末年始のような長期休暇中にも災害が起こる可能性があるため、油断せず備えをしておく必要があります。

    防災アドバイザーの岡部梨恵子さん。

    第二章は、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんに、帰省中や旅行中に心がけたい6つの防災ポイントについて解説してもらいました。

    1. 実家周辺や旅行先のハザードマップの確認

    久しぶりに帰る故郷では土地勘が薄れがち。ましてや初めて訪れる旅行先では土地勘がないのが当たり前です。普段暮らしている場所だけでなく、帰省先・旅行先のハザードマップも把握しておきましょう。

    2. 家族との定期的な話し合い

    災害時に混乱しないためには、普段から家族で防災について話し合っておくことが重要です。リモートやLINEで定期的に防災情報を送るなど、離れていても意識を高め合うことができます。

    3. 避難所のチェック

    能登半島地震の際、帰省中・旅行中の人の3割以上が「避難所がわからなかった」と回答しています。年末年始など行政職員が少ない時期は、避難所の開設が遅れることも。事前に避難所の場所や福祉避難所の情報を確認し、家族で共有しておきましょう。

    >>Yahoo!JAPAN避難場所マップ
    危険から逃れるためにまず避難する公園や校庭などの広い場所。
    災害の分類ごとに指定されており、この「避難場所マップ」で確認できます。

    4. スマートフォンの有効活用と電源対策

    昨今、スマートフォンをはじめとするモバイル機器の普及・多様化が進み、私たちの生活はますます「充電」に依存するようになっています。そのため、災害時や非常時においてもバッテリーの確保は命を守る備えとして極めて重要になっています。

    こうした背景から、トレンドとしてポータブルバッテリーの需要は年々高まっており、大容量タイプやソーラーパネル対応モデルなど、災害対策を意識した商品も多く登場しています。

    >>【2025年】ポータブル電源のおすすめ28選
    電源がない環境でも、さまざまな電気製品を利用できる「ポータブル電源」。「ポタ電」とも呼ばれ、キャンプや車中泊、レジャーなどのアウトドアや災害時の備えとして近年注目されています。
    >>大容量モバイルバッテリーのおすすめ17選
    容量が20000mAh以上ある大容量モバイルバッテリーのおすすめモデルを紹介します。

    5. 家具・家電の配置見直しと転倒防止

    実家では家具の転倒防止ができていないことも多くあります。特に大型家電やガラス戸付き家具は要注意。固定具、粘着シール、滑り止めシートなどを使い、地震の揺れから身を守る環境を整えましょう。

    日常に防災を組み込むことが大切

    防災は特別なものではなく、日々の暮らしの中で少しずつ取り入れていくことが大切です。電話での会話の中に防災の話題を入れたり、帰省時に家族で「防災ミニ勉強会」を開いたりするのも良い取り組みです。たとえば、防災アプリのインストールや「171」の利用体験など、気軽にできるものから始めてみましょう。

    年末年始をはじめとする長期休暇は心が緩みやすいタイミングですが、災害はいつでも起こり得ます。実家でも「備え」を見直す絶好の機会。家族の命を守るために、日常に防災意識を取り入れていきましょう。

    帰省先でも地震への備えを!年末年始に向けた防災対策
    帰省先でも地震への備えを!年末年始に向けた防災対策
    【第二章の内容について詳しく書かれた元記事はこちら】
    地震や台風、大雨など、いつどこで災害に巻き込まれるかわからない災害大国ニッポン。帰省中の防災対策を考えるべく、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんにお話を伺いました。

    【第三章】“いつものごはん”が命を守る!在宅避難のための防災食

    災害が発生したとき、防災対策の一環として「非常食を備蓄しておけば安心」と思っている人も多いかもしれません。

    しかし、防災食アドバイザー・今泉マユ子さんは「食べ物が“あるだけ”ではダメ」と断言します。災害時に“どう使えるか”どう食べられるか”こそが、真の備えです。

    防災のカギは「フェーズフリー」と「ローリングストック」

    今泉さんが提唱するのは、「フェーズフリー」の発想。これは「日常」と「非常時」の区別をなくし、普段使うモノを非常時にも使えるようにする考え方です。食べ物も同様で、特別な非常食を用意するのではなく、普段食べているものを災害時にも使えるようにすることが大切です。

    その手法が「ローリングストック」。食料や日用品を少し多めに常備し、古いものから消費しながら買い足す方法です。重要なのは“ストック”ではなく“消費”しながら循環させること。長期保存食を買って安心して終わりではなく、日常で使いながら防災力を高めることが大切です。

    防災食「3カ条」とは?

    災害時に食事をとるために、まず用意すべきは以下の3点です。

    1. 水:1日3L×最低3日分、理想は1週間分(21L)。
    2. 食べ物:普段食べ慣れたものを中心に。
    3. カセットコンロ&カセットボンベ:調理の要。1人1週間で6本、家族4人なら1カ月で15本が目安。使用期限(約7年)にも注意。

    この3つがそろえば、停電や断水でもある程度の食生活は維持できます。

    ストックは「黄・赤・緑」の栄養バランスを意識

    ローリングストックする際、栄養の偏りにも気をつけるべきです。今泉さんは「黄・赤・緑」に食材を分類することを提案しています。

    • 黄(エネルギー源):米、パスタ、パンなど
    • 赤(体をつくる):肉、魚、卵、豆腐など
    • 緑(体調を整える):野菜、果物、海藻など

    続けるコツは「見える化3カ条」

    ローリングストックを継続するには、「見える化」が重要だと今泉さんは説きます。

    • 備蓄場所の見える化:棚ごとに缶詰やレトルト食品を配置し、家族も中身を把握できるように。
    • 賞味期限の見える化:期限を書いたラベルを貼ったり、棚ごとに分類したりしておく。
    • 食べ方の見える化:調理方法や必要な道具(火、水など)を把握し、実際に試してみる。

    防災食は特別なものを用意するのではなく、いつものごはんを「見える化」して、日常の中で整えることが何よりの備えです。買い置きしただけで満足せず、食べて、試して、使いながら備える──それが真の「防災の食」です。

    「家族の健康と命を守るためにも、今日からローリングストックを始めてください」──今泉さんの言葉は、防災に対する意識をガラリと変えてくれます。

    防災食アドバイザーに教わる!“いつものごはん”が役立つ!在宅避難のための備え
    防災食アドバイザーに教わる!“いつものごはん”が役立つ!在宅避難のための備え
    【第三章の内容について詳しく書かれた元記事はこちら】いつ災害が起きてもおかしくない日本で暮らす私たちは、普段から災害への備えを各家庭で行うことは必須です。
    とはいえ、「大量に非常食を買ってあるから大丈夫!」と思ってはいませんか? 
    防災食アドバイザーの今泉マユ子さんから、もしものときに上手に活用できる防災食について目からウロコの提言をご紹介します!

    防災は「日常の延長」でできる

    防災とは特別な準備ではなく、日々の暮らしに根ざした「習慣」です。

    3人の専門家に共通しているのは、「備えは今日からできること」だという視点です。9月1日の防災の日をきっかけに、できることから防災を始めましょう。日常の中の小さな備えが、いざというときに大きな命を守る力になります。

    ※この記事はバックナンバー記事
    防災のプロに学ぶ、すぐに役立つ備えの基本
    帰省先でも地震への備えを!年末年始に向けた防災対策
    防災食アドバイザーに教わる!“いつものごはん”が役立つ!在宅避難のための備え
    を再編集してまとめたものです。

     

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