安心防災ライフ

防災食アドバイザーに教わる!“いつものごはん”が役立つ!在宅避難のための備え

2025/02/25
防災食アドバイザーに教わる!“いつものごはん”が役立つ!在宅避難のための備え

みなさん、防災対策はしていますか? 地震、台風、大雪など、いつ災害が起きてもおかしくない日本で暮らす私たちは、普段から災害への備えを各家庭で行うことは必須です。

とはいえ、「大量に非常食を買ってあるから大丈夫!」と思ってはいませんか? いざというとき、はたしてその食材を美味しく食べることはできるでしょうか?

防災食アドバイザーの今泉マユ子さんは、食べ物があるだけでは安心できない。もしものときに上手に活用できるかが重要だと言います。なぜ、食べ物をストックするだけではダメなのでしょうか? これまでの防災食の概念が覆る、目からウロコの提言をご紹介します!

目次

    防災食の達人が「ローリングストック」を伝授!

    今回お話をお伺いした今泉マユ子さんは、管理栄養士歴30年以上で、防災食アドバイザーとして全国で400以上の講演を行う。さらに、防災食に欠かせないレトルトや缶詰の知識も豊富で、「レトルトの女王」、「缶詰の達人」とも呼ばれるほど! 

    そんな今泉さんが声を大にして言うのが、「防災食は普段から食べて!」ということ。

    「え? せっかく備蓄しているのに、食べたらなくなっちゃうんだけど?」と思ったそこのあなた。ぜひ一緒に「フェーズフリー」と「ローリングストック」について学んでいきましょう!

    これからの防災は「フェーズフリー」がキーワード

    今泉さんは、これからの防災は「フェーズフリー」がキーワードになると熱く語ります。

    今泉 昨年は年始から能登半島地震があり、夏には初めて南海トラフ地震臨時情報が発せられました。また台風シーズンには各地で浸水や崖崩れが相次ぐなど、本気で防災について考えなければと感じた人が増えたのではないでしょうか。 そこで、慌てて自宅に備えている防災グッズや災害食を点検してみたところ、「電池がなかった」「賞味期限が切れていた」など、「実は使えなかった」というケースも。 その教訓から、最近注目されているのが「フェーズフリー」という考え方です。フェーズフリーという言葉と、その基本的な概念は、「フェーズフリー協会」代表理事の佐藤唯行さんが2014年に提唱しました。 「日常」と「非常時」というフェーズをフリーにする(区別しない)という意味で、普段使っている食べ物や日用品を非常時にも活用することを指します。「フェーズフリー」とは考え方で、その方法として「ローリングストック」があるのです。

    ローリングストックとは、普段の生活で使用する食料や日用品を少し多めに買い置きし、古いものから消費することで、生活しながら常に一定量の災害備蓄をしておくという考え方。

    とはいえ、今泉さんは「ローリングストックという言葉に惑わされないで!」と、続けます。

    今泉 みなさん誤解しがちなのですが、ローリングストックで大切なのは“ストック”じゃないんです。普段から“消費”することが大事なんです。 普段 食べているものを、災害が起きたときにそのまま使える、食べられるようにする。まず、非常食を“ストックする”という発想自体を変えてください。

    まさに賞味期限の長い備蓄品を買って、置きっぱなしにして「備えた!」と安心していた筆者は、早々に衝撃を受けました! 「え、私がいままで思っていた備えって一体……?」。早くも不安になってきました(汗)。

    今泉 “災害が起きたときに何を食べればいいですか?”という質問がすごく多いのですが、停電や断水が発生すると、みなさん“特別なものを食べなければ”と思うんですよね。 でも、そうではなくて、“普段食べているものを災害が起きたときにどうやったら食べられるか?”と考えてほしい。 そうすると、家にある食材ってとても使えるんです。パスタやお米も活用できるし、缶詰やレトルト食品など、じつは家の中にはかなりの食料があります。 食べ慣れていない非常食を口にしてストレスや不安な気持ちを抱えるよりも、普段食べている食事を当たり前に食べられるようにする。それこそが備えだと私は思っています。
    「缶詰は一目ですぐにわかるように賞味期限を大きく書くのもおススメ。わが家は本棚の棚ごとに賞味期限を分けて置いています」(今泉)

    今泉さんの話を聞いて、我が家の非常食としてストックしてある長期保存できるパンやごはん、私はその味も知らないということにハッとしました。

    防災食の“防災食3カ条”

    まず始めに、災害時に普段食べているものを口にするためには、絶対に用意しておくべき必要なものがあると、今泉さんは言います。

    今泉 まず、“防災食3カ条”として、@水、A食べ物、Bカセットコンロ&カセットボンベ、これらは必ず用意してください 。 特にカセットボンベに関しては、1人1週間で6本(農林水産省)や、家族4人1カ月で15本(内閣府)など、推奨本数はさまざまです。カセットボンベもじつは使用期限の目安があって、大体7年といわれています。カセットボンベも食べ物と同様に一度にまとめて大量に買わず、食卓でお鍋をするときに使うなど、日常で使いながら買い足すローリングストックで備えるのがおすすめです。

    また、水は1人1日あたり3L×最低3日分(9L)、できれば1週間分(21L)が目安とのこと。

    「黄・赤・緑」のグループを意識してストックを

    それでは、どのようにローリングストックするとよいか、具体的に教えてもらいました。

    今泉 まず非常持ち出し袋に入れる食べ物と在宅避難の備えは違うと考えてください。在宅避難の備えは賞味期限の長さで食品を選ばず、シンプルに自分が食べたいもの、普段食べ慣れたものをストックしましょう 。 さらに、大切なのが栄養バランス。まず、食べ物を栄養素の働きから「黄・赤・緑」の3つの色に分けて考えます。
    黄:エネルギーのもとになる米、パスタ、パン、餅など(炭水化物・脂質 )
    赤:体を作るもとになる肉、魚、卵など(タンパク質 )
    緑:体の調子を整えるもとになる野菜、果物など(ビタミン、ミネラル、食物繊維 )
    この3色の食べ物をまんべんなく摂るようにすれば、自然と栄養バランスが整います。これは災害時だけでなく、普段の食事でも大事なことなので、普段からそれぞれの色の食べ物をバランスよく食べるよう心がけてみてください。

    「見える化3カ条」を実践しよう!

    ローリングストックに必要なものがわかったところで、次は実践編。筆者はまさに買っただけで安心してしまい、ローリングストックができないタイプですが、続けるためのコツはありますか?

    今泉 ローリングストックで一番大切なのは食べたくなるものを家に置くこと。そして食べること! 食べて買い足さないと、ローリングストックは習慣化しません。「毎週土曜日に食べる」など、食べる日を決めるのもひとつの手です。その上で以下の3つの見える化を心がけてみてください。

    1.「食べ物(備蓄場所)」の見える化

    今泉 まずはストックしている食品を取り出しやすくすること。我が家は本棚の下段に缶詰を、上段にレトルト食品を並べています。こうすると家族全員も見えるようになるので、好きなものを自分で選んでみんなが自由に食べることができます。なくなったら、一目でわかるので、また買い足す。これで自然とローリングストックできます。

    「もしものときでも食べたい味が選べるように、いろいろな種類を備えておくのがおすすめ」と、今泉さん。選ぶことで、気持ちが少しでも前向きになれるそう。

    2.「賞味期限」の見える化

    今泉 缶詰は賞味期限を大きく書く、食品は棚やカゴごとに賞味期限で分ける、本棚のレトルト食品は左から賞味期限の順番に並べるなど、普段から賞味期限を意識するための工夫が大事です。定期的に賞味期限パトロールを行うのもおすすめで、こうすることで「気づいたら賞味期限が切れていた!」という事態を減らすことができます。

    3.「食べ方」の見える化

    今泉 最後は“食べ方”の見える化。これは実践することでしかわかりません。それを食べるために、何が必要になるのか、実際に食べないとその味が好みかどうかもわかりません。また、被災したときはペットボトルの水とカセットコンロの火だけで調理することになるかもしれません。そのため、まずは体験してみることが大切! 普段から食べ慣れておくことで、いざというときの安心感にもつながります。

    おっしゃるとおり、見えなければ意味がない。買って開かずの間に眠っているなんて言語道断ですね(泣)。この3つの見える化を心がければ、自然とローリングストックを続けられそうです。

    防災訓練は「想像して体験する」ことが大事!

    さらに今泉さんは「想像して体験してほしい」と熱く語ります。

    今泉 想像だけでは絶対にわからないので、停電ごっこ、断水ごっこなど、防災ごっこをやってみてほしい。暗闇で懐中電灯の灯りでごはんを食べる、ペットボトルの水だけで調理をしてみるなど、そういったことを実際に体験してみると、自分に足りない備えが見えてきます。 防災訓練は非常に大事。普段やっていないことを災害時に急にできるということはないので、普段から行うことが大切です。 特に心配なのはひとり暮らしの方。目の前のコンビニが冷蔵庫だとおっしゃる方もいますが、災害時はそういったものが何も機能しなくなります。ではそのときにどうするか……ぜひ想像して体験してみる必要があります。

    人間にとって、いかに食が大切で、普段食べ慣れているものが、非常事態でどれだけ自分を落ち着けてくれるものになるかということ。それを「ローリングストック」という形で日常の中に溶け込ませておくこと。それこそが、いざというときの備えに自然となっている。まさに理にかなった考え方です。

    自分自身、そして大切な人の命や健康を守るためにも、ぜひみなさんも今日からローリングストックを始めてみませんか?

     

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    Profile
    今泉マユ子
    監修
    今泉マユ子
    「いつも笑顔で誠実に 社会のために地域のために」をモットーに、2014年2月14日に株式会社オフィスRMを設立。現在は管理栄養士、防災士、災害食専門員の資格を活かして 、防災食アドバイザーとして全国で講演を行う。「第3回私のSDGsコンテスト」大賞受賞。著書は、防災、災害食、お湯ポチャレシピ®、即食レシピ®、缶詰レシピ、レトルトアレンジ、SDGsクッキングなど22冊出版。テレビ・ラジオ出演多数。
    岸綾香
    岸綾香
    ライター&エディター。大手出版社の女性週刊誌で約20年、料理、美容、グルメなど、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。Web媒体では料理やヨガなどの動画記事を担当。週刊誌で鍛えられた体力&根性で40代から子育て奮闘中。
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