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帰省先でも地震への備えを!年末年始に向けた防災対策

2024/12/09
帰省先でも地震への備えを!年末年始に向けた防災対策

能登半島が地震によって被災したのは2024年の元日。普段住んでいる自宅を離れて、帰省先で過ごす人が多いタイミングでの災害でした。あれから1年が経とうとしていますが、完全に復興するまでの道のりはまだまだ遠いです。地震や台風、大雨など、いつどこで災害に巻き込まれるかわからない災害大国ニッポン。今年も年末が迫る中、帰省中の防災対策を考えるべく、防災アドバイザーの岡部梨恵子さんにお話を伺いました。

目次

    災害はいつやってくるかわからない

    気象庁によると、2022年には震度1以上の地震が1,964回、最大震度4以上を観測した地震は51回、2023年は震度1以上を観測した地震は2,227回、最大震度4以上を観測した地震は41回が計測されています。
    令和5年(2023 年)の地震活動について(気象庁)

    2024年元旦に起きた能登半島地震は、帰省したタイミングで被害に遭った人も多くいました。

    特に長期休暇に入る年末年始は、いつもより気を休めて無防備になりがちです。いつ起こるかわからないからこそ、帰省先や移動中は災害への備えをしておきたいものです。

    被災体験を活かすことから始まった防災活動

    ※写真はイメージです。

    「東日本大震災の被災体験が、防災に関心を持つようになった原点です。私が住んでいた浦安市(千葉県)は町の86%が液状化して、地盤がどんどん下がっていったんですね。配管もズタズタになってライフラインの使えない生活がこんなに大変だということを思い知りました。そこから防災備蓄を始めようとしたのですが、何から始めればいいのかわからないところから一つ一つ試しながら、その体験をブログに書くようになったんです」

    そう語るのは、被災体験から防災の重要性を身をもって痛感し、以来、防災のプロとして活動を続ける岡部梨恵子さん。

    「能登半島地震で命を落とされた方々の無念を胸に、多くの人が帰省する元日に大規模な災害が実際に起こったことを教訓として活かさなければならないと思います」

    岡部さんは1年近く経ついまも、能登半島地震の被災地での災害支援活動を行いつつ、日本全国を駆け回り、精力的に防災の啓蒙活動を続けています。

    能登半島地震のあった現地で復興に向けてボランティア活動をする岡部さん。

    帰省に備えて心がけておきたい6つの防災ポイント

    今回はそんな岡部梨恵子さんに、帰省に備えて心がけておきたい6つのポイントについて語っていただきました。

    (1)実家周辺のハザードマップの確認
    (2)定期的な家族との話し合い
    (3)避難所のチェック
    (4)スマートフォンの有効活用 
    (5)家具や家電の配置の見直しと転倒対策
    (6)避難中の備え 

    では、以下順番にひとつずつ解説していきます。(以下、1~6は岡部さんの発言)

    (1)実家周辺のハザードマップの確認

    帰省先の自治体が提供するハザードマップを確認し、避難場所や避難経路を把握しておきましょう。ハザードマップとは、洪水や土砂災害、津波などの自然災害のリスクが想定される区域や、避難場所、避難経路などの情報をわかりやすく示した地図のことです。

    普段実家から離れていると、土地勘がほとんどないこともあります。「地元だから大丈夫」との思い込みをいったん脇に置き、家族全員で確認することが大切です。ハザードマップを見たら、家族のみんなで避難経路を確認しましょう。高齢者には地図を一緒に見ながら、ペンなどで書いてあげると良いです。

    (2)定期的な家族との話し合い

    災害時に慌てず行動するためには、日頃から家族で話し合い、避難方法などを共有しておくことが大切です。

    たとえば、家族みんなで「防災おしゃべりタイム」を設けて、防災について普段から話し合う場を持っていると、いざというときも安心です。

    実家にお住まいの方に、日頃から防災に関する情報を電話やLINEでシェアしておくといいですね。1カ月に1回でもいいです。1年続けたら12個の防災知識が増えますから。

    離れていても防災の意識をもってもらえるように、常日頃から実家とのコミュニケーションも大事にしたいところです。

    (3)避難所のチェック 

    2024年6月8日の朝日新聞デジタルによると、「東北大学災害科学国際研究所の研究グループが、旅行や帰省の最中で能登半島地震に遭った約1000人にアンケートしたところ、3割超が『適切な避難場所がわからなかった』と答えた。」とのことでした。
    朝日新聞デジタル「能登半島地震で「避難場所わからず」 旅行・帰省中に被災の3割回答」

    地震時に適切な避難場所を事前に把握することは、安全を確保するうえで非常に重要です。建物の倒壊や火災、津波などの二次災害を避けるため、迅速に安全な場所へ移動する必要があります。避難場所を確認しておくことで、混乱を防ぎ、適切な行動が可能になります。

    ただでさえ、年末年始やお盆のような国全体がおやすみモードになる時期は、行政職員の対応が遅れ、避難所の開設が迅速に行われない場合があります。実際に能登半島地震で避難所が開くのが遅れました。なぜなら行政職員が休日だった上に職員の8割以上が被災者になったからです。

    年末年始のような長期休暇中に災害が発生すると、避難所がすぐに開設されない可能性があることを念頭に置き、事前の備えが重要です。

    また、高齢者の方や障がいのある方、妊婦さんなどがいる場合は、「福祉避難所」についても調べておきましょう。福祉避難所とは、生活が難しい方や介護を必要とする方が入る避難所です。

    ただし、災害直後からすぐに利用できるわけではなく、開設には時間のかかる場合があります。そのため、日頃から避難先の確認やいつ開設するかを知っておくことが大切です。

    (4)スマートフォンの有効活用

    充電が最低でも2回できるモバイルバッテリーを

    災害時にスマートフォンが命綱になることから、モバイルバッテリーを用意することが大切です。スマホを持っている家族全員がそれぞれ最低2回は充電できる充電器を持っていてほしいです。

    また、災害時の備えとして、モバイルバッテリーだけでなく家庭用ポータブル電源を持っておくことも非常に重要です。家庭用ポータブル電源があれば、スマートフォンの充電だけでなく、消費電力の低い電気ポットや電気毛布、扇風機など にも使用できます。3万円台から購入可能な製品も多く、手軽に導入できますので、非常時のために備えておくと安心です。

    災害用伝言ダイヤル(171)を使う練習を

    災害用伝言ダイヤル(171)は、災害時に被災地の電話番号をキーに、安否などの情報を音声で登録・確認できるサービスです。年末年始は、このサービスがお正月の三が日(1月1日から3日)に体験利用が可能です(*他にお盆期間なども体験可)。

    実際に音声を録音・確認しておくことで、緊急時にスムーズに利用できます。なお、録音時間は30秒ですので、事前に伝言内容を考えておくと安心です。

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    帰省先のご近所さんと連絡先を交換しておく

    帰省先のご近所さんと連絡先を交換しておくことは、災害時の連携に非常に有効です。しかし、普段からの交流がないと、いざというときに協力を得るのは難しいかもしれません。帰省の際にお土産を持参して挨拶するなど、日頃から関係を築いておくことが大切です。こうした日常のコミュニケーションが、非常時の助け合いにつながります。

    (5)家具や家電の配置の見直しと転倒防止対策

    すぐに避難できる場所の確認

    地震発生時の避難行動は、建物の耐震性や周囲の状況によって適切な方法が異なります。耐震性の高い建物内では、落下物から身を守るために机の下に避難することが効果的です。

    耐震性の低い建物では、倒壊の危険性が高まります。そのため、状況によっては、負傷のリスクを承知の上で屋外へ避難する選択肢も考えられます。ただし、避難時には上からの落下物に十分注意し、安全を確保しながら行動してください。

    家具家電の転倒防止

    防災対策において、家具家電の転倒防止は重要な役割を果たします。地震などの自然災害が発生すると、家具や家電が揺れにより転倒し、人やペットが負傷するリスクが高まります。特に大型家具やテレビ、冷蔵庫などの重いものが倒れると、その下敷きになることで重篤な怪我を負う危険があります。また、ガラス扉付きの食器棚は、地震時にガラスが割れて飛散する危険性があります。飛散防止フィルムを貼ってガラスの飛び散りが起こらないようにしておきましょう。

    転倒防止のためには、家具を壁に固定する金具や転倒防止ベルトの使用が推奨されます。また、地震対策として、滑り止めシートや家具と天井を突っ張り棒で固定する方法は比較的低コストで設置でき、家庭内の安全性を向上させる効果があります。
    さらに近年では、震度7にも対応できる粘着シールで壁と家具を固定するなど、より高性能な転倒防止器具も登場しています。 これらの製品を活用することで、さらに安心して生活環境を整えることが可能です。

    地震の際、家具の転倒防止対策をしていれば、避難する時間を確保できたり、家具の下敷きになる危険を避けられたりするかもしれません。実際に、防災メーカーには「おかげで命が助かりました」といった感謝の手紙が多く寄せられているそうです。

    (6)避難中の備え

    非常用持ち出し袋の重さは6キロ以内に

    非常用持ち出し袋には最低限以下のアイテムを入れておきましょう。

    ・携帯用トイレセット
    避避難所や緊急時の移動中にトイレが使えない場合、衛生環境の悪化を防ぐために携帯用トイレが重要です。大規模な災害の後は、断水して水が使えない上に、仮設トイレが届くのに3日以上かかる場合もあるので、いまある既存のトイレにセットして使える携帯トイレセットを持っておくことが非常に大切です。

    ・エアマット
    避難所や屋外での睡眠環境が快適とは限りません。エアマットがあれば、硬い床でも身体への負担を軽減し、睡眠の質を向上させることができます。体温保持や疲労の回復にも役立ちます。

    ・ウェットティッシュ・ボディシート
    手や身体を清潔に保つために必須です。特に避難所では衛生環境が整わないことが多く、ウェットティッシュでの簡易的な清潔保持は感染症予防にも効果的です。水が貴重な状況でも、ウェットティッシュで清潔さを保てます。

    災害時には、ウエットティッシュだけでなく、全身を清潔に保つためのボディシートも重要です。避難所では衛生環境が整わないことが多く、入浴が困難な状況が続くことがあります。そのため、ボディシートを使用して身体を拭くことで、皮膚の清潔を保ち、感染症の予防に役立ちます。ボディシートだけでなく水のいらないシャンプーもあるといいでしょう。

    ・常備薬
    解熱鎮痛薬、胃腸薬、風邪薬、消毒薬、絆創膏 (ばんそうこう)なども、緊急時入手が困難になることがあるため、これらも常備薬を一緒にあらかじめ用意し、すぐに持ち出せるようにしておきましょう。 

    簡易トイレの用意

    お住まいの行政は、災害時のトイレとして、簡易トイレだけでなく仮設トイレやマンホールトイレなどをも備えています。ただそれらのトイレは開設しても長蛇の列ができるものです。

    また屋外にあることもあり、夜や雨などの時は使いにくいものです。そこで我が家として、既存のトイレにかぶせて使う簡易トイレを備えておくのをお勧めします。

    日頃から使い方や排泄物のゴミをどう保管するのかまで考えておきましょう。

    以上、岡部さんが提言する必ず押さえておくべき6つのチェックポイントです。 

    日頃の備えがリスク軽減に

    防災への備えは日々の積み重ねが大切です。実家の防災力を高めるために、普段からできることを始めてみましょう。

    たとえば、電話で近況を話す際に防災の話題を取り入れてみてください。また、帰省時には高齢のご両親が手をつけられていない家具の転倒防止器具をホームセンターで購入し、取り付けを手伝うのも効果的です。

    年末年始の帰省中には、防災に関するミニ勉強会を開いてみてはいかがでしょうか。災害時に役立つスマホアプリの使い方を教え合ったり、災害用伝言ダイヤル「171」を実際に試してみたりすることで、家族全員の防災意識を高めることができます。

    これらの取り組みを通じて、実家の防災力を少しずつ向上させていきましょう。

    【地震や災害に遭ったときの情報サイト】

    ハザードマップポータルサイト

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    国土交通省が公開しているサイト『重ねるハザードマップ』
    確認したい箇所をクリックすると、その場所の自然災害リスクが表示される。

    気象庁 災害情報WEB

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    『気象庁 災害情報WEB』
    気象庁が発信する最新の気象情報、災害情報が確認できます。

    国土交通省 防災ポータル

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    『国土交通省 防災ポータル』
    災害情報や気象情報、交通・物流情報などさまざまな情報にアクセスできます。

     

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    Profile
    岡部梨恵子
    防災アドバイザー・防災士
    岡部梨恵子
    東日本大震災の体験から防災に取り組むようになり、防災士、ファイナンシャルプランナー、整理収納アドバイザーなどの資格を取得。被災後の食、お金や普段の片づけから備蓄法など、全国でのセミナー・講演活動を精力的に行っている。そのわかりやすい語り口から、雑誌、テレビなど出演多数。
    重田信
    重田信
    1987年奄美大島生まれ。海外にて日本の小中学校と同様の教育を行う「日本人学校」の教員として、タイ・バンコクに3年、中国・深圳に5年間滞在。主に小学生の学級担任として8年間教壇に立つ。帰国後、ライターとして活動を始め、SDGsに関連した社会課題について、企業や自治体、大学などにオンラインで取材し執筆を行う。
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