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“攻めの防犯”と“多層防御”で闇バイト強盗に備える!最新家庭防犯術

2025/09/05
“攻めの防犯”と“多層防御”で闇バイト強盗に備える!最新家庭防犯術

短時間で高収入を得られるという甘い誘惑で、犯罪の実行者を募集する“闇バイト”。犯罪とは気づかずに若者が加担してしまい、強盗の実行犯として逮捕されるケースがここ数年相次いでいます。

元警察官で犯罪コメンテーターである佐々木成三さんによると、こうした素人による犯行が増えている今、「防犯対策は日々アップデートする必要がある」とのこと。

そこで、現代を生き抜くために、自分や大切な家族を守るための「攻める防犯」について教えてもらいました。

目次

    増加する“闇バイト強盗”

    防犯対策のハイテク化、意識向上もあって、住居侵入などの侵入窃盗の認知件数は年々減少傾向にありました。ところが、令和3年以降は特殊詐欺の急増に伴い、“闇バイト強盗”が増加傾向にあります。短時間で高額な報酬が得られると甘い言葉で誘惑し、集まった若者たちが、犯罪組織の指示役の指示に従って、強盗や窃盗の実行犯になっています。

    特殊詐欺の被害状況と通信技術の悪用実態(警察庁)より

    佐々木さんは、“闇バイト強盗”と従来の“プロの泥棒”との違いに注意を促します。 

    「プロの泥棒というのは捕まらないように、時間を要すること、音を立てることを何よりも嫌います。しかしながら、闇バイトで集められた若者たちは、基本的に素人です。本来であれば狙われにくい家、たとえば、防犯カメラがきちんと備えてあるような家でも平気で侵入してきます」(以下「」内、佐々木さん)

    そのため、手荒な強盗犯罪が増え、さらに拘束や暴力をふるうなど、凶悪化しているのも特徴です。初めはただのバイトと軽い気持ちかもしれませんが、「強盗殺人や強盗致死は重罪で、残された道は、死刑か無期懲役しかない」と佐々木さんは言います。

    「実際に、昨年横浜で起きた事件のように、22歳の男が滞納した税金を支払うために高収入のバイトだと思って闇バイトに手を染めてしまったケースもあります。

    指示された場所に行くとそこは強盗に入る現場で、その場で初めて会った若者4人は、ひとり暮らしをしている高齢者の男性宅に侵入し、犯罪組織の指示役からの指示を受けて、男性に暴行を加えました。

    その22歳の男は怖くて何もできなかったそうですが、残念なことにその男性は死亡。実際に暴力をふるわなかったとしても、共犯として現場にいたことにより、強盗致死罪で逮捕されました。そこで初めて、罪の重さに気づくのです。このように、罪の重さを知らずに闇バイトに手を染めてしまう若者が少なくありません」

    素人の犯行だからこそ、手荒で凶悪的なケースが増えているとのこと。私たちはますます自分たちの身を自分で守らなければなりません。

    映画『ホーム・アローン』に学ぶ「攻める防犯」

    そこで、佐々木さんが防犯対策としてオススメしているのが、1990年に公開され、世界的に大ヒットした映画『ホーム・アローン』だそう。

    あるクリスマスの夜、マコーレ・カルキン扮する小さな男の子が一人で留守番をしている家にふたりの泥棒がやってくる……というコメディ映画ですが、まさにこの男の子のように、二手三手先を打つ「攻める防犯」が理想的だと佐々木さんは続けます。

    「たったひとりで留守番をしている男の子は、リビングの電気を点けて人形を動かし、大勢の人がパーティーをしているように見せかけます。さらに、テレビの声をマフィアのボスだと思い込ませて泥棒たちを追払いますよね。まさにこれこそ、侵入者を威嚇して身を守る“攻める防犯”です。僕は刑事時代から参考にしていました。

    そして、この『ホーム・アローン』の世界は、スマート家電のある現代では、容易に再現できるようになったと思うのです」

    実際に佐々木さんは、長期出張などで自宅を留守にするとき、遠隔で自宅の電気をときどき点けては、留守に見せない対策を行っているとのこと。まさに『ホーム・アローン』の世界ですね!

    それでは、元刑事の佐々木さんが特に注目しているという、防犯対策に効果的な家電をチェックしてみましょう。

    これからの防犯は「多層防御」が必須に!

    プロの泥棒なら、防犯カメラがあれば侵入することを諦めていたかもしれませんが、素人の侵入者は、それにすら気づかず強行突破してくることも多いとのこと。そこで、必要となってくるのが「多層防御」という考え方だと佐々木さんは言います。

    まず、犯罪者が侵入しようとしてきたときに、大きく分けて以下の4段階での多層的な防犯対策が必要です。

    「多層防御」による4段階の防犯対策

    (1)狙いやすい家かどうかの情報を得るために予兆電話をかける
    →迷惑電話防止機能付きの固定電話で撃退

    (2)宅配業者などを装い、玄関先から侵入しようとする
    →録画機能付きや安心応答サービス付きのドアホンで、ここは防犯意識の強い家だと相手に威嚇する

    (3)窓や勝手口などから強行突破してき
    →窓に取り付けた開閉センサーで不法侵入に気付き、すぐに110番通報する

    (4)家の中に犯罪者が侵入した!
    →警察が来るまで時間稼ぎができる安全な部屋を作っておく

    上記の対策を1つだけしても安心というわけではありません。犯罪の入り口となる予兆電話から、実際に侵入してきたときまでを想定し、多層的に防御することがポイントです。

    前回の記事では(1)の予兆電話について詳しく紹介しているので、こちらの記事も参考にしてみてください。予兆電話をブロックすることが狙われない大事な一歩になります。

    特殊詐欺につながる予兆電話を防ぐ
    特殊詐欺は“電話”から始まる ─固定電話で自宅を守る最新防犯術─
    年々、深刻化を増している特殊詐欺による被害。昨年、その被害総額は過去最高を更新しました。
    さらにここ数年は、闇バイトによる特殊詐欺の被害が都市部だけでなく、治安がよいとされている地方にまで蔓延(まんえん)しています。
    そこで、元警察官で犯罪コメンテーターとして活躍する佐々木成三さんに、最新の防犯対策について教えてもらいました。…

    それでは、それぞれの対策法を佐々木さんに教えてもらいましょう。

    威嚇できる「ドアホン」で、不審者を玄関先でブロック!

    素人の犯行が多いということは、相手は慣れていないため、「攻める防犯」が効果的。家の中に居ながら威嚇できるドアホンや防犯カメラの備えがあれば、侵入者を玄関先で追いやることが可能です。

    「最近のドアホンは左右約170°見渡せたり、高性能な広角レンズを搭載していたりするものもあります。ワイドな画角で、画面に映る人物だけでなく、周囲に隠れている共犯者まで映し出すことが可能です」

    また、たとえば高齢の親が住んでいる家の玄関にドアホンを設置して、子が自分のスマートフォンと連携しておけば、来訪者への対応ができるそう。これなら親と一緒に住んでいなくても、「住んでいるのは高齢者だけではなさそうだ」と、相手に錯覚させることができます。

    さらに、録画していることを音声で相手に伝えたり、女性のひとり暮らしの場合、ボイスチェンジャーで男性の声質に変えたりと、ドアホンひとつで玄関先でのさまざまな対応が可能です。

    これだけで随分と防御力が上がりますね!

    開閉センサーで侵入者の居場所をいち早く知る

    それでも窓や勝手口から強行突破してきた場合は、開閉センサーを設置しておくのがオススメとのこと。

    「我が家で使っている開閉センサーは、どこの窓が開いたか、固定電話の子機が自動で話して知らせてくれます。この開閉センサーは自宅の迷惑電話防止機能付き固定電話と接続しており、窓ガラスを割って侵入されそうなドアや、勝手口などに取り付けています」*

    このときに大事なことは、たとえば「○○の窓が開きました」とアナウンスがあっても、絶対に見に行かないこと。

    「日本人はこういうときに、つい見に行ってしまうのですが、絶対に見に行くことはやめてください。そのアナウンスがあったら、まずはすぐに110番通報をすること。もし、開閉センサーなどを備えておらず、窓ガラスがガシャーンと割れた音がしたという場合も同様です。決してすぐに見に行かないでください」

    開閉センサーの設置が難しい場合は、最初からついている鍵以外に、補助鍵をつけておくのも有効だそうです。また室内に置くペット用の見守りカメラなどを防犯対策として活用してもよいとのこと。

    * 例えばPanasonicの開閉センサーは一部の固定電話や、ホームネットワークシステム 「スマ@ホーム システム」を通してスマートフォンなどと連携することが可能です。

    警察到着までの時間を稼ぐために、安全な部屋を用意しておく

    不審者が侵入したかもしれない。その際に命を守るために一番大事なことは「対峙しないこと」だと佐々木さんは言います。

    「侵入者は何を持っているかわかりません。ナイフを所持している可能性もあります。110番通報をしてから警察が駆けつけるまでの時間は、全国的に7~8分。警察到着までの時間を稼げる内側から鍵のかかる部屋があると安全です。もし内鍵がない場合は、フックの金具などでもいいので、外側からすぐに開けられない対策をしておいてください」

    もし、拘束されて110番通報ができないというときのために、スマートフォンの緊急SOS機能や声で110番通報ができるようにしておくなどの備えもしておくとよいそう。

    「一番狙われやすいのは、やはりひとり暮らしの高齢者。そこで有効なのは、迷惑防止機能付きの固定電話機です。まずはこの入り口から大部分の人がだまされたり、生活環境を知られたりしてしまうのが現実です。最近は詐欺対策のアイテムを購入すると助成金が出る自治体もあるので、ぜひご家族がチェックしてみてください。

    また、女性のひとり暮らしの場合は、ドアホンや補助錠が有効です。些細なことではありますが、家を出るときに“行ってきます”、帰ってきたら“ただいま”と玄関先で言ったり、自宅に戻る1時間ほど前に、遠隔操作で部屋の照明を点灯させたりしておくと、留守を悟られにくくなります」

    「防犯アップデート」で身を守ろう

    最後に今後の備えとして、我々が気をつけるべきことは何か、佐々木さんに聞きました。

    「現代はインターネットやスマートフォンをはじめ、通信技術の向上が犯罪手口の巧妙化につながっています。たとえば、2年ほど前は架空料金詐欺がもっとも増えたのですが、その対策ができると、今度は警察官を騙(かた)る特殊詐欺が急増しました。このように対策ができると、巧妙に新たな方法を考えてくるのが犯罪組織です。

    だから常に防犯対策もその時代にあった対策にアップデートしてほしい。きっと今日話した対策も来年にはもう変わっていると思います。きっとその頃には、また別の詐欺が出てきているはずです」

    アップデートするために必要なのが、自分の住んでいる都道府県で、どのような犯罪がどれくらい発生しているのか情報をキャッチすること。各都道府県警察で犯罪抑止対策のアカウントがあり、そこで随時発表しています。また各都道府県警察のホームページで特殊詐欺などの毎月の統計を公表しています。

    また、各自治体は不審な電話がかかっていることをホームページなどで知らせたり、各警察署では犯罪件数の統計を公開したりしているので、そのような情報を自ら意識することが大切です。

    参考資料:区市町村の町丁別、罪種別及び手口別認知件数(警視庁)

    「そして防犯格差のない街づくりが私の理想です。日本は治安が良い国で、周りの監視の目こそが、人間型防犯システムになっています。普段から近隣の人たちとコミュニケーションを取ることで、自然と防犯の目は育まれていくのだと思います」

    佐々木さんが言うように、これからは自分で自分を守る時代。一人ひとりが防犯に強くなり、自分で家族を守る、地域で高齢者や子どもを守る、企業が地域を守る……それを根づかせていけたら、国全体の犯罪件数を減らし、暮らしやすい街づくりにつながるはずです。

    いまの時代にフィットした便利な防犯アイテムを使いながら、私たち一人ひとりが防犯対策のアップデートを心掛けていきましょう。

    商品に関する参考リンク
     

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    Profile
    佐々木成三
    監修
    佐々木成三
    犯罪コメンテーター、犯罪評論家、元警察官、Panasonic防犯アドバイザー。一般社団法人スクールポリス理事として、小中高の学校において情報モラルの授業を開催。ほか刑事ドラマの監修や著書活動を行っている。著書に『闇バイト強盗、特殊詐欺、盗難から身を守る いますぐ防犯』『あなたのスマホがとにかく危ない』『いますぐ防犯』など多数。
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    岸綾香
    岸綾香
    ライター&エディター。大手出版社の女性週刊誌で約20年、料理、美容、グルメなど、実用記事を中心に幅広いジャンルで取材&執筆を行う。Web媒体では料理やヨガなどの動画記事を担当。週刊誌で鍛えられた体力&根性で40代から子育て奮闘中。
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