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多重露出撮影の撮り方とコツ|ニコンZシリーズでやってみよう

2026/04/21
多重露出撮影の撮り方とコツ|ニコンZシリーズでやってみよう

見慣れた景色も、光や風景、被写体を重ねることで、幻想的で奥行きのある一枚へと変わります。多重露光は、日常を少し違った視点で捉え直し、自由な発想で写真表現を広げられる撮影技法です。本記事では、ニコンZシリーズの機能を生かした撮り方やコツを、写真家・櫻子さんが紹介します。

目次

    写真を撮り続けていると、いつもの景色に少し見慣れてしまうことはありませんか?

    そんなとき、ほんの少し視点を変えるだけで、見慣れた風景が別の世界に見えてくることがあります。

    その表現のひとつが「多重露出」です。

    多重露出とは、異なる被写体を数枚重ねて撮影することで、新しい一枚を生み出すことができる表現方法です。目の前にある景色を撮影し、もうひとつ別のイメージを重ねることで、普段見ている風景をより華やかに、自由な発想で表現することができます。

    また、写真に華やかさや奥行きが生まれるだけでなく、重ねる被写体を考える時間も楽しく、想像力を広げながら撮影できるのもこの表現の面白さだと思っています。

    もともと多重露出は、フィルムカメラで行われていた技法で、ひとつのコマに複数の像を重ねて写すという方法でしたが…。現在ではカメラ内で合成する機能の登場や画像編集技術の進歩によって、デジタルでも気軽に楽しめるようになっています。

    異なる景色や被写体を重ねることで、幻想的な世界を描き出すことができる多重露出。本記事では、私も愛用しているニコンのZシリーズにある「多重露出機能」を使って、より魅力的に表現するためのコツをご紹介します。

    カメラ内で楽しむ、多重露出の魅力

    私が多重露出という表現を知ったのは、まだカメラを始めて間もない頃のことでした。
    当時は合成写真の編集に興味があり、撮影した写真を画像編集ソフトでコラージュするような形で作品を作っていました。

    そうした創作を続ける中で、写真同士を重ね合わせて表現する「多重露出(多重露光)」という技法を知りました。しばらくは画像編集ソフトで撮影した写真を重ねていたのですが、ニコンZシリーズが登場した際、「カメラの中で多重露出ができる」ということを知り、今ではその機能を愛用しながら作品作りを楽しんでいます。

    Zシリーズでは、1枚目を撮影するとその写真が画面に半透明で表示されるため
    その像を参考にしながら、2枚目以降の被写体を重ねて撮影ができます。

    最大10枚まで撮影可能
    4種類の合成モード(加算、加算平均、比較明、比較暗)があります。

    おすすめの合成モードは「加算平均」

    ニコンZシリーズにある4つの合成モードのうち、私が最もよく使っているのが「加算平均」です。

    「加算平均」は、重ねる枚数に応じて明るさを自動で調整しながら合成してくれるモードです。「加算」で合成すると、写真を重ねるほど明るさがプラスされていくのに対し、「加算平均」は複数枚重ねても明るくなりすぎにくく、自然な仕上がりになりやすいのが特徴です。だからこそ、イメージ通りの重なりを作りやすいのが「加算平均」の魅力です。

    多重露出を始めたばかりの方にも扱いやすいので、まず最初に試してみてほしいモードです。

    最新のデジタルカメラになると、AFに被写体認識機能を付加したり、測距範囲の切り替えを行うことで測距速度・精度の向上を図ったモデルも存在します。そういったカメラを使う場合は、適切な設定を行うことで「撮れ高」に大きな差が出ます。

    チューリップの花を手に持ちながら、角度とぼかし具合を変えて撮影したカットを重ねた多重露出。同じ被写体でも、向きや位置を変えて重ねることで、花が空間に浮かんでいるような幻想的な表現を作ることができる。(NIKON Z50II /NIKKOR Z DX MC 35mm f/1.7/絞りF1.9/1/2500秒/ISO400 加算平均で合成)
    河口湖に浮かぶ富士山の風景を、人物ありとなしの2枚を重ね、さらに湖面に反射する光の玉ボケを重ねた。(NIKON Zf /NIKKOR Z 40mm f/2/絞りF2/1/8000秒/ISO200 加算平均で合成)

    Zシリーズにはこのほかにも、いくつかの合成モードがあります。

    加算

    重ねた画像の明るさをそのまま足して合成するモード。写真を重ねるほど明るさが加わっていくため、光の点や局地的に明るい被写体を強調したいときに向いています。一方で、重ねる枚数によっては明るくなりすぎてしまうこともあるため、露出の調整には少し注意が必要です。

    1枚目
    1枚目
     2枚目
    2枚目

    白い花が複数咲いている場所で、上から撮影。花と花の間にある余白に、次のカットの花が重なるように意識して合成することで、花が複製されたような仕上がりに。加算モードでは、明るい部分が特に重なりやすいため、白い花は多重露出との相性が良い被写体です。(NIKON Zf / NIKKOR Z MC 50mm f/2.8/絞りF3.2/1/8000秒/ISO320 加算で合成)

    比較明合成

    写真をそれぞれ比較したときに、明るい部分だけが露出される合成するモード。明るい部分を際立たせたいときに効果的です。

    1枚目
    1枚目
     2枚目
    2枚目

    背景の空が明るめになるように、人物のシルエットを、晴天の空を背景に逆光で撮影。そのシルエットの中に街の写真を適正露出で重ねることで、人物の内側に景色が映り込み、背景の明るい空だけが浮かび上がった状態に。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF4.5/1/2000秒/ISO160 比較明で合成)

    比較暗合成

    比較明合成とは反対に、画像を比較して暗い部分を残して合成するモード。この機能を使うときは、影やシルエットを生かした表現に向いています。

    1枚目
    1枚目
     2枚目
    2枚目

    比較暗合成では白い部分は重ならず、暗い部分が優先して合成されます。そこで曇りの日の白い空を背景に利用し、街の像を反転させて撮影。あえてモノクロに仕上げることで、より引き締まった印象に。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2.2/1/4000秒/ISO400 比較暗で合成)

    まずは「玉ボケ」を重ねてみよう

    多重露出の機能を初めて使う方に一番おすすめしたいシチュエーションは、「被写体がはっきりしているもの」に、「被写体がはっきりしていない、曖昧な被写体」を重ねる時。1枚目に人物や花、手などのわかりやすい被写体にピントを合わせてはっきり写し、そこに「木漏れ日」や「光の玉ボケ」などを重ねるイメージです。

    特に、一番効果を感じやすいのは玉ボケ写真。

    例えば、晴れた日の夕方に海や湖などの水辺を訪れた時。まずは、空のグラデーションを背景に人物のシルエットを撮影してみます。その際は、少し煽り気味のアングルで撮影するのがポイント。背景の空がシンプルに写るように意識し、余計な要素が入らない構図を作ります。また、あとから重ねることを考えて、空の余白をしっかり残しておくと多重露出がしやすくなります。

    シルエットが撮影できたら、今度は水面に目を向けてみましょう。水面に反射する光は、ぼかすことできらきらとした玉ボケになります。マニュアルフォーカスに切り替え、ピントリングを少しずつ動かしながら光をぼかすことで、やわらかい玉ボケを作ることができます。

    加算平均で合成した写真がこちらです。撮影のコツは、合成する2枚の写真両方とも、明るくなりすぎないようにすること。1枚目は背景ができるだけグレートーン(中間調)になるように意識して撮影します。それは、背景に白飛びや黒つぶれがあると、うまく合成できない場合があるから。

    2枚目は、玉ボケのみ浮かび上がるように露出したかったので、露出を1段階ほどアンダーにして撮影しています。背景の海の部分を少し暗めに写すことで、光の粒とのコントラストがはっきりするため、光のボケの部分が強調されている状態になります。

    NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2/1/8000秒/ISO100 加算平均で合成

    このように、形がはっきりしている被写体と、画面に広がるような曖昧な要素を組み合わせることで、写真に奥行きや空気感が生まれます。中でも、シルエットと玉ボケの組み合わせは感覚をつかみやすいので、はじめて挑戦する人にもおすすめです。

    今度は室内での撮影で、お花に玉ボケを重ねてみます。先ほどのシルエット写真と同じように、お花を手に持ち、周囲に余白を残すよう意識して撮影します。背景が複雑になってしまう場合は、F値を開放気味にして背景をぼかすのがポイントです(開放F値がF2.8以下のレンズを使用するのがおすすめ)。

    次に、部屋の電気など光源が複数ある場所を探します。その際、マニュアルフォーカスで、ピントを外すようにして限界までぼかすことで、大きな玉ボケを作ることができます。もし光源が少ない場合は、重ねる枚数を増やしながら余白の部分に光の玉を配置していくように撮影すると、バランスよく玉ボケを重ねることができます。

    NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2/1/8000秒/ISO100 加算平均で合成

    今度は、夜景の玉ボケを使った多重露出を試してみましょう。この写真は、京都に旅行に行った時撮影したもの。

    タワーを見上げた風景と、実際に登ったあとに見た夜景を重ね合わせています。このように、被写体同士の関係性を意識して撮影すると、写真にストーリーやコンセプトが生まれ、より印象的な一枚に仕上がると思っています。

    また、撮影する写真をRAW画像としてメモリーカードに保存しておけば、あとからその写真を呼び出して多重露出に使用できるのがZシリーズの便利なところ(1枚目の写真をメモリーカードから読み込み、2枚目の写真をその場で撮影して重ねる、というイメージです)。

    時間や場所が異なる写真を組み合わせたら、表現の幅が一気に広がりますよね。

    1枚目
    1枚目
    2枚目
    2枚目

    タワーとたまたま1枚目の画像に飛行機雲が通ったのも奇跡。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2/1/8000秒/ISO100)(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2/1/250秒/ISO1000 加算平均で合成)

    アイデア次第で、多重露出はもっと楽しくなる!

    誰でも簡単にできる「玉ボケ」の重ね方を解説してみましたが、ここからはもう少しアイデアを広げたおすすめの組み合わせ方をご紹介します!

    被写体を少しずらして撮影する

    同じ被写体を少しずつ位置を変えて撮影する方法です。例えば、部屋の壁を背景に花を配置し、被写体の位置を少しずつずらして撮影してみます。横にずらしてもいいですし、斜めに動かしてみても構いません。カメラの位置を変えるのも問題ないです。

    被写体が複製されて、現実にはありえないような不思議な世界が広がるのが面白いです。

    ガーベラの花を左下から等間隔にずらしていく。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF3.3/1/250秒/ISO400 加算平均で合成)
    同じ景色を上下にずらして撮影。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF5/1/500秒/ISO100 加算平均で合成)

    曇りを味方に!

    昨年の春に撮影した菜の花。訪れた日はあいにくの曇り空でしたが…。それを逆手に取ると、曇り=グレーの背景になりやすいので、多重向きのシチュエーションといっても過言ではありません。

    日没の1時間ほど前、少し暗くなり始めた時間を狙い、空がグレーの背景になるように余白を広くとって、1段アンダーに撮影してみます。そして菜の花の写真を上からのアングルで撮影し、全体に花が散らばるようにして重ねてみました。どんよりとした曇りの写真が、より華やかに…!

    人物に手のポージングを指定し、ストーリー性のある写真を目指す。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2.2/1/125秒/ISO1000 加算平均で合成)

    重ねる写真を、あえてぼかしたり、シャッタースピードを遅くしてブレを作って撮影するのもおすすめです。ピントを外した花や光の写真を重ねることで、画面に雰囲気や質感が加わります。

    花が画面いっぱいに咲く場所を狙う。2枚目は同じ場所でそのままぼかして撮影。 (NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2.2/1/60秒/ISO250 加算平均で合成)
    2枚目はネモフィラにピントを合わせた状態で軸にし、カメラを回転させて撮影。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF2/1/4000秒/ISO100)(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF16/1/30秒/ISO100 加算で合成)
    2枚目は街明かりを斜めにブレるようにして撮影。赤くなっている夕暮れの空がアクセントカラーになっている。(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF16/1/30秒/ISO100)(NIKON Zf / NIKKOR Z 40mm f/2 /絞りF5/1/15秒/ISO100加算平均で合成)

    正解がないからこそ、面白い!

    重ねる写真をぼかしてみたり、被写体との距離を変えてみたり。多重露出は、アイデアや工夫次第でまったく違う表情を見せてくれます。

    実際に撮影してみると、最初に思い描いていたイメージとは少し違う仕上がりになることもありますが、その中には想像していなかった新しい発見があるのも魅力のひとつ。その偶然性に惹かれています。

    少しブレてしまった写真や、思い通りに撮れなかった写真も、多重露出では思いがけない作品の素材として活躍することがあります。

    そうした経験を通して、作品づくりに対してよりポジティブに向き合えるようになりました。
    写真を撮っていると、つい「正解」を求めてしまいがちですが、多重露出は、そうした枠から少し離れて自由な発想で被写体と向き合える表現でもあります。
    ぜひ、自分なりの重ね方を見つけながら、作品作りを楽しんでみてください。

     

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    Profile
    櫻子
    文・写真
    櫻子
    1996年生まれ。埼玉県本庄市出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、会社員を経てフリーランスフォトグラファーに転身。透明感のある作風で写真を撮影することが得意で、多重露光作品などの作品制作を行う傍ら地元である埼玉北部周辺 及び 旅した地域の魅力を発信する活動を行っている。2025年度埼玉県広報アンバサダー。
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