贈りものセレクション

祝・父の日エッセイ「ぎこちない父との関係に…ありがとう。」

2024/06/12
祝・父の日エッセイ「ぎこちない父との関係に…ありがとう。」

「最後だし、ちょっと飲まないか」

あの晩、珍しく父から誘われた。最後と言っても、別に二度と会えなくなるわけじゃないし……と思ったが、断る理由もなかった。

でも お酒が入って、うれしさと寂しさが入り交じるような父の顔を見ているうちに、その複雑に交差する感情が私にも伝染してしまった。 

それは結婚式の前夜。新たな旅立ちを前に父と一緒に過ごす最後の夜だった。

いま思えば、その選択は私の最後の子どもらしい行動 だったのかもしれない。

父は顔を少し赤らめながら、私が生まれた日のことをおもむろに語りはじめた。いつもは寡黙な父が、あの夜は少しだけ饒舌だった。

──難産の末、私が生まれたことがどれだけうれしかったかとか、育児を母に任せっきりで申し訳なかったとか、私がブランコでケガをしたときは出張を切り上げて病院に駆けつけたとか……次々と記憶を掘り起こしては噛みしめるように語ってくれた。

そして、初めて家を離れる私がちゃんとやっていけるのか、まるで私が初めて登園する幼子のように何度も心配を口にした。私、もうアラサーなんだけど(笑)……。

でも、そんな父との関係も、私が10代の頃は決して穏やかなものではなかった。私が成長するにつれて、父への反抗心が日々募るばかりの時期もあった。

それは、よくある普通の父と娘の関係なのかもしれない。

「最近どうだ?」という一言すら鬱陶しかったし、父が先にお風呂に入った日には激怒したこともあった。食卓の椅子でさえ、父が私の“指定席”に座るのは許せなかった。初めて彼氏ができたとき、夜遅くに帰宅して叱られたことにカチンときて、それから何か月も口をきかなかったこともあった。

反抗期と言ってしまえば、それだけのことかもしれない。でも、私の中にあった父への煩わしい感情は、二人のあいだに距離を生み出すに十分だった。

そんなぎこちない関係だったにもかかわらず、高校時代、朝家を出るときはいつも一緒だった。父は毎朝、通勤のついでにクルマで私を学校に送ってくれていたのだ。もちろん車中での会話なんてほとんどなかった。父は、私にとって便利な“足”でしかなかった。でも、一日たりとも欠かさず3年間送ってくれた。

父にとって私は、つくづくわがままな甘えん坊の“お姫様”だったんだろうなと思う。

あの頃を思えば、私も少しは大人になったのかなと思う(そう信じたい……)。

そして、大人になって初めて、父と一緒にお酒を飲んだ結婚式の前夜。

結婚してすぐ私は子どもを授かった。生まれてから数年は、まるで火事場のような緊張感と慌ただしさに追われる毎日だった。いまは育児もようやく一段落し、また仕事を始める余裕も出てきた。

もちろん、今度は育児と仕事の両立の難しさに四苦八苦しているが、そんな中、父が語った結婚前夜の思い出話がふと蘇ってきた。育児を母に任せっぱなしだったことや、私がケガをしたとき、仕事を放り出して病院に駆けつけたといった話だ。

いまは父とお酒を飲んだあの晩の思い出話が、私の心を温かく包み込んでくれている。

あまりお酒は強くはなかったけど、ときどきお気に入りのグラスに氷を入れて、一人で大切そうにちびちびと嗜んでいた父――。

もうすぐ父の日だ。

お酒が入ると少しだけおしゃべりになる父と、久しぶりに話してみたくなった。

今年はお酒を持って父に会いに行こう。それは、私たちの関係を象徴するささやかな乾杯であり、父への感謝の伝言でもある。

お父さん、ありがとう。

私を大切に育ててくれたように、私も幸せな家庭を育んでいくので安心してください。

あなたと過ごしたぎこちない時間は、いまも私の大切な宝物です。

父の日に、お父さんが好きなお酒を贈ってみませんか?

ウイスキー

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大園める
大園める
大手広告代理店に勤めた後、フリーランスのライターになる。幅広いジャンルに精通し、情熱と素直な好奇心だけがとりえのアラサーライター。読者との共感を大切にし、常に学びながら成長中。子猫と昼寝をするのが至福のひととき。趣味はビールとボルダリング。
高杉千明
イラストレーター。
高杉千明
ペーターズギャラリーコンペ2015および第3回・4回東京装画賞 受賞・入選。第35回 ザ・チョイス年度賞大賞受賞。毎日新聞連載小説『青嵐の旅人』挿絵をはじめ、書籍装画・挿絵、広告、雑誌などさまざまな分野で活躍中。
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