Photo Life

[飛行機撮影]羽田空港でプロが撮り方を実践レクチャー

2026/05/07
[飛行機撮影]羽田空港でプロが撮り方を実践レクチャー

ビックカメラの販売員が、プロのカメラマンに弟子入りしてワンランク上の撮影テクニックを学ぶ連載企画。
今回は、ビックカメラ大宮西口そごう店・カメラコーナーの工藤雄介さんが、航空写真家のA☆50 / Akira Igarashiこと五十嵐あきら先生のもと、羽田空港で飛行機撮影にチャレンジ。「今日からはじめる飛行機撮影ガイド!展望デッキから撮ってみよう」「飛行機撮影 流し撮りを機材設定からコツまでわかりやすく解説!」の2つの記事をもとに、実際に空港で撮影する実践編です。日中・夕景・夜間と時間帯を変えながら、1日で3つの表情の飛行機写真を撮りつくします。
都心からアクセス抜群の羽田空港に、あなたも飛行機撮影に出かけてみませんか。

目次

    先生は航空写真家の五十嵐あきらさん。実家が羽田空港の着陸ルート近くにあり、物心ついた頃から飛行機に親しんできました。ヒコーキ写真コンテストの審査や連載記事のほか、航空会社・空港の公式撮影、カメラメーカーの広告・販促物の撮影も手がけています。
    生徒の工藤さんは入社18年目のベテラン販売員。カメラ歴20年、飛行機のほか風景やダンサー、テーマパークの撮影を楽しんでいます。

    撮影前の心得:風向き・フライト情報・場所選び

    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO100 1/400s 106mm 0.0EV

    今回の舞台は羽田空港。第2ターミナル(T2)の北側展望デッキに集合しました。3月上旬、澄み切った快晴の空が広がっています。
    撮影開始前にまず五十嵐先生が教えてくれたのは、飛行機撮影で最も重要な「事前準備」の話でした。

    五十嵐 飛行機撮影って、現場に着いてからよりも着く前の準備がすごく大事なんですよ。なかでも一番最初に確認するのが風向き。飛行機は基本的に風に向かって離着陸するので、羽田空港では北風か南風かで使う滑走路が変わる。つまり、撮影ポイントも変わってしまうことが多いのです。
    工藤 今日は北風ですね。
    五十嵐 そう。だからT2の北側が順光で離陸していく機体を撮るには比較的いいポジションなんです。風向きはアプリや空港の公式情報で事前に調べられます。僕は当日、撮影に出発する前に必ずチェックして、それに合わせて撮影場所をある程度、決めてから出発しています。
    飛行機撮影に欠かせない風向き情報は、アプリや空港の公式サイトで事前に確認できる。写真は「Flightradar24」の画面。現在の風向き・風速に加え、各滑走路の使用状況や、到着・出発する便のフライト情報がリアルタイムで表示される。
    五十嵐 「Flightradar24」みたいなアプリを使えば、どの便がどの機種で何時に到着するかリアルタイムでわかります。特に撮りたい機体がある場合は事前にチェックしておくと、準備して待ち構えられますよ。
    工藤 羽田は便数が多いから、次から次へと来てくれるのはありがたいですよね。
    五十嵐 そう、それが羽田の最大のメリットです。1日1便しかない地方の空港で流し撮りしようと思ったら、1枚も撮れない可能性がある(笑)。便数が多い空港ほどシャッターチャンスが多い。練習には最高の環境です。

    使用機材とカメラの基本設定

    今回使用する機材。ボディはCanon EOS R6 Mark III、レンズはRF200-800mm F6.3-9 IS USMとRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM、夕景・夜間用にRF70-200mm F2.8 L IS USMも用意。
    五十嵐 今日は3本のレンズを使い分けます。まずRF200-800mm。展望デッキから滑走路までは距離があるので、機体を大きく撮るなら超望遠が活きてきます。
    工藤 800mmだとかなり寄れそうですね
    五十嵐 正面から来る機体ならコックピットの窓が見えるくらいまで寄れますよ。
    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark II + RF200-800mm F6.3-9 IS USM f/9 ISO320 1/1250s 800mm
    五十嵐 もう1本のRF100-500mmは汎用性が高くて、離陸から上昇まで追いかけながら撮るのに向いています。構図に余裕が出るのもいい。そして夕景から夜にかけてはRF70-200mm F2.8。F2.8の明るさが暗い環境で武器になります。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/8 ISO100 1/640s 238mm 0.0EV
    飛行機撮影の基本設定まとめ
    ・撮影モード:Tv(シャッタースピード優先)またはM(マニュアル)
    ・AF:飛行機検知AF(乗り物認識)+ サーボAF
    ・AFエリア:フルフレーム or 拡大領域AF
    ・IS(手ブレ補正):ボディ側オン。流し撮り時はレンズ側をモード2(流し撮り対応)に切り替え
    ・シャッター:メカシャッター推奨(機種にもよるがコマ数がそこまでいらないシーンでは画質差を勘案しメカシャッター使用。月に機影が刺さるシーンなどコマ数を要する時は電子シャッターで最速モードを使用。)
    シャッタースピードの目安
    ・機体をシャープに写す(スポッティング):1/1000~1/2000秒
    ・離着陸の追いかけ:1/1250秒以上
    ・流し撮り(日中):1/30~1/125秒
    ・流し撮り(夜間):1/4~1/60秒
    五十嵐 日中は基本的に手持ちで撮ります。夜間の流し撮りのときは三脚を使うことが多いですね。三脚についてはまた後で詳しく話しますね。

    日中撮影:まずは「シャープに写す」から始めよう

    いよいよ撮影開始。T2北側展望デッキのワイヤーフェンス越しに滑走路を見渡すと、次々と機体がタキシング(航空機が自らの動力で地上を移動)していきます。

    五十嵐 飛行機撮影の基本は「止める」こと。機体がぴしっと止まって、ウイングレットも尾翼もブレずに写っている。それがまず目指すところです。
    工藤 先生はシャッタースピードをどのくらいにされていますか?
    五十嵐 まずは1/1250秒くらい。これで大体止まります。
    五十嵐 そして構図の基本は真横。飛行機が画面を横切っていくところを、機体真横をド真ん中に入れ、画角の左右に1割程度アキを設けるとバランスが良い。前後どちらかがあいてしまうのなら進行方向を気持ちあける程度が良い。これが「スポッティングカット」と呼ばれる一番オーソドックスな構図です。
    工藤 ピントはどこに合わせるのがベストですか?
    五十嵐 コックピットの窓、つまり機首あたりです。乗り物AFが認識してくれるので、そこを拾わせて追従させる。あとは画面の中で機体がちょうど真横になるタイミングにシャッターを切れば、きれいなスポッティングカットになりますよ。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO320 1/1000s 500mm 0.0EV
    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark II + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO320 1/1250s
    五十嵐 真横の基本ができたら、今度は背景を意識してみてください。羽田はスカイツリーが見えたり、東京湾にコンテナ船が浮いていたりする。そういう背景を入れると、この場所でしか撮れない写真になりますよね。
    工藤 確かに、機体だけだとどこで撮っても同じになってしまいますもんね。
    五十嵐 そうなんです。だから僕は背景にも結構こだわる。「この風景と組み合わせたい」っていう意図があると、記録写真から一歩先に進めますよ。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO400 1/2000s 300mm 0.0EV
    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO500 1/2000s 500mm 0.0EV
    五十嵐 あとは寄りのカットも撮っておくといいですね。エンジンやコックピット周辺をアップで捉えると、航空機のメカニカルな美しさが出ますよ。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/8 ISO100 1/640s 500mm 0.0EV
    工藤 先生にとって、撮影成功の基準ってありますか?
    五十嵐 機体がきっちり止まっている写真が撮れていることですね。僕の基準で言うと、機体に書かれた小さな文字などを等倍で見てもしっかり止まっている。そのレベルに達していないカットは消しちゃいます。
    工藤 かなり厳しいですね。さすが先生。
    五十嵐 でも最初はそこまで気にしなくていい。まず「止まった!」と感じられる写真を1枚撮ること。それが自信になります。

    夕景撮影:逆光とシルエットを味方にする

    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/9 ISO100 1/1250s 500mm 0.0EV

    午後4時過ぎ、第1ターミナル(T1)の屋上デッキに移動しました。太陽が西に傾き始め、機体に当たる光の色が明らかに変わっています。日中のT2とはまったく違う世界が広がっていました。

    五十嵐 夕景は飛行機撮影の中でも一番「作品」になりやすい時間帯と言えるかもしれません。光の色が刻一刻と変わるから、同じ構図でも5分前とは全然違う写真になりますよ。
    工藤 さっきまでの青空とはまったく別の世界ですね。機体が金色に光っていていい感じです。
    五十嵐 この時間帯は太陽の位置がすべてです。自分の思っているような位置に太陽が来るのを待つ。太陽と機体がどう重なるかで、写真の雰囲気がガラッと変わりますから。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/8 ISO400 1/500s 400mm 0.0EV
    五十嵐 夕景のコツは、逆光を怖がらないことです。日中は順光で撮って機体のカラーリングや風景を鮮やかに写すのも良いですが、夕暮れらしい色を出すなら逆光も良いですよ。
    工藤 先生は露出はどう合わせていますか?
    五十嵐 逆光のときは空の明るさに露出を合わせます。機体は黒くつぶれても構わない。むしろそれがシルエットになって、すごくかっこいい写真になりますから。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/11 ISO100 1/640s 400mm 0.0EV
    五十嵐 逆光になると色彩はほとんど使えなくなります。そのかわり、ハイライトとシャドウだけで作品を構成するように意識する。機体のトップに細い光のラインが走って、あとは全部影。このミニマルな感じが夕景ならではの美しさなんです。
    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/10 ISO640 1/1250s 238mm 0.0EV
    工藤 日中とまるで別の被写体を撮っているみたいですよね。
    五十嵐 同じ飛行機なのに、光が変わるだけでこんなに表情が変わる。だから僕は1日中空港にいるのが好きなんですよ。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/8 ISO400 1/500s 128mm 0.0EV
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM f/8 ISO800 1/640s 254mm 0.0EV

    日が沈み、ターミナルビルや機体にライトが灯り始めました。夕景から夜へ。空港が静かに表情を変えていく時間帯です。ここから最後の撮影パートへと移動します。

    夜間撮影(空港周辺):流し撮りで光の軌跡を描く

    日が完全に沈み、いよいよ最後のパート。ソラムナード羽田緑地の展望台付近へ移動し、夜間の流し撮りに挑みます。

    工藤 いよいよ三脚の出番ですね。
    五十嵐 そうです。夜間の流し撮りは三脚があるだけで世界が変わります。ベストは油圧雲台(*1)。滑らかに機体を追えるので、格段に成功率が上がりますよ。
    工藤 3wayの雲台(*2)でも大丈夫ですか?

    *1:油圧雲台
    油の力でカメラの動きを滑らかにする三脚の雲台。
    *2:3way雲台
    カメラの向きを水平方向、垂直方向、カメラの縦横の3つの方向にそれぞれ独立して調整できる雲台。

    五十嵐 全然大丈夫です。別に油圧じゃなくても、支えられればOKです。三脚は「重さを預ける場所」くらいに考えてもらえれば。流し撮りの動きそのものは手持ちとほぼ同じなので。長距離射撃で銃身を台に乗せるようなイメージです。
    工藤 シャッタースピードはどのくらいにされていますか?
    五十嵐 まず1/15秒からやってみましょう。慣れてきたら1/8秒に挑戦。三脚があれば、手持ちの時よりはるかに安定しますから。
    工藤 手持ちで1/15秒以下を成功させるコツってありますか? ずっと聞きたかったんです。
    五十嵐 まずは前述の通り、機体の真横あたり全体を撮るときに、三脚を使うこと。そしてシャッタースピードが1/20秒より遅くなってくると、機体の前から後ろまでビシッと止めるのが難しくなってきます。
    狭い範囲しか止まっているように見えなくなることが多くなります。
    その場合、機首が見えている場合は機首部分にフォーカスを合わせ、この部分が止まっている一枚を目指してください。
    五十嵐先生撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF70-200mm F2.8 L IS USM f/2.8 ISO3200 1/8s 142mm 0.0EV(※五十嵐先生は手持ちで流し撮りを撮影しています。)

    こちらがこの日の五十嵐先生のクライマックスとなった1枚。背景の格納庫やオレンジ色の照明が鮮やかな光の線を描き、滑走するJAL機のスピード感が凝縮されています。日中の「止める」写真とは対極にある、動きの美しさを表現した作品です。
    工藤さんも三脚を据えて夜間流し撮りに挑みました。

    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF70-200mm F2.8 L IS USM f/2.8 ISO1250 1/10s 200mm 0.0EV
    工藤さん撮影 Canon EOS R6 Mark III + RF70-200mm F2.8 L IS USM f/2.8 ISO8000 1/15s 172mm +0.7EV
    工藤 いい感じの写真が撮れました。光が全部流れていて、でも機体はちゃんと止まっている。
    五十嵐 いいですね。これが流し撮りの醍醐味です。背景が流れることで機体のスピード感が出る。でも機体自体はシャープに止まっている。この「相殺」のバランスが一番難しいところであり、面白いところでもある。
    工藤 趣味の写真をこういう「作品」に仕上げるには、何が一番大事ですか?
    五十嵐  「何を撮るか」より「何を見せたいか」を意識すること。同じ飛行機でも、止めるのか流すのか、寄るのか引くのか、順光か逆光か。選択肢は無限にある。その中で「この1枚で何を伝えたいか」が決まっていると、自然と作品になっていきますよ。

    これで今日の撮影は終了。日中は澄み切った青空のもとでスポッティングの基本を学び、夕景では逆光とシルエットの世界に触れ、夜間は流し撮りで光の軌跡を描く。同じ羽田空港が、時間帯によって全く異なる表情を見せてくれました。
    飛行機撮影は「行く前の準備」と「現場での判断」、その両方が大切です。風向きを調べ、天気に合わせて撮り方を決め、レンズを選び、シャッタースピードを設定する。そのひとつひとつの判断が、1枚の写真の完成度を左右します。
    でも、まずはお近くの空港の展望デッキに出かけてみてください。目の前を離陸していく機体を見上げた瞬間、きっとカメラを構えたくなるはずですよ。

     

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    Profile
    A☆50/Akira Igarashi
    文・写真
    A☆50/Akira Igarashi
    航空写真家。「ニッポン全国空港放浪記」著者。年間最高約144日を車中泊や下道を駆使した放浪ヒコーキ撮影に充てる。JAL公式カレンダー、大手航空会社や大手カメラメーカーの公式撮影を担当。日本写真家協会会員。
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