エスプレッソマシン3機種をバリスタが実機レビュー!味わいや使いやすさを検証
シンプルなコーヒーはもちろん、街角のカフェなどで飲むフワフワのミルクメニューも自宅で楽しみたい。そんな人に注目されているのが、ボタンを押すだけで本格的なカフェメニューが作れる家庭用全自動エスプレッソマシンです。ただし、こういった製品は10万円を超えるものも多く、気軽に購入できるものではありません。そこで今回は、デロンギ、東芝、GAGGIAのコーヒーをJBAバリスタグランプリ優勝経験もあるバリスタの松本卓巳さんが実際に使用して味わいをチェック。プロの視点から3機種の違いと選び方を解説していただきました。
今回比較する3種類の全自動エスプレッソマシン
現在主流のエスプレッソマシンは、フィルターに豆をいれてお湯を注入するブリュータイプ。しかし、今回は圧力をかけて豆のうまみを一気に引き出すエスプレッソタイプのマシンを比較。エスプレッソタイプはブリュータイプよりコーヒーのうまみを濃厚に引きだしやすいため、ミルクメニューにもピッタリです。今回選択した3製品はいずれも濃厚なエスプレッソやブラックコーヒーのほか、カプチーノなどのミルクメニューにも対応。そのなかでも人気のモデルを比較します。
デロンギ マグニフィカ スタート ECAM22080GB(デロンギ・ジャパン)
全自動エスプレッソマシンを幅広く展開しているデロンギ。「マグニフィカ」は、その入門シリーズにあたります。デロンギによると、入門モデルでもコーヒーの味は最上位モデルと同じで、異なるのは選べるメニューの数と操作部がタッチパネル、液晶、WiFi操作等の違いです。
・メニュー:エスプレッソ/スペシャルティ/カプチーノ/ラテマキアート/給湯
・豆ホッパー容量:250g
・水タンク容量:1.8L
ガジア マジェンタ ミルク SUP051P
ガジアはイタリア発祥の老舗エスプレッソマシンブランド。本製品は今回試した3製品のなかで一番多彩なメニューを搭載。また、各メニューの抽出量や濃さ、温度などを細かく設定できるため、自分の好みを追求したい人にも人気です。
・メニュー:リストレット/エスプレッソ/エスプレッソルンゴ/コーヒー/アメリカーノ/カプチーノ/カフェオレ/フォームミルク/給湯
・豆ホッパー容量:250g
・水タンク容量:1.8L
全自動エスプレッソ&ラテマシン ELM-A1B(東芝ライフスタイル)
今回比較する3機種で唯一、日本の家電メーカーが展開する製品。東芝初となるエスプレッソマシンながら、7種類のメニューやタッチパネル、ミルクシステムの洗浄機能など、家庭で使ううえで欲しい機能をしっかり搭載。幅22cmという3機種のなかで一番のスリムな筐体も魅力です。
・メニュー:エスプレッソ/コーヒー/アイスコーヒー/ラテマキアート/カプチーノ/フォームミルク/給湯
・豆ホッパー容量:約250g
・水タンク容量:1.8L
検証方法:プロが自宅で淹れる味を基準に採点
普段はマニュアル式のエスプレッソマシンを使用する松本さんですが、ボタンを押すだけの全自動マシンがどこまで近い味を再現できるかをチェックしてもらいました。使用する豆は、松本さんが普段から使用している「やまのべ焙煎所」のコーヒー豆をチョイスしました。ドリンクの味は初期設定だけで判断せず、目や豆量、抽出量、温度などを調整し、それぞれの機種で最もおいしいと感じる設定で評価します。自宅と同じ豆を使い、普段使用しているマニュアル式エスプレッソマシンで抽出した味を100点として評価。
※各機種の初期設定を比較するテストではなく、各製品の性能を引き出した状態での評価です。
| 松本 | コーヒーに“この豆が正解”というものはありません。焙煎度は中煎り~中深煎りが飲みやすく、酸味が苦手な方にもおすすめです。市販豆と専門店の豆では焙煎方法や鮮度に差が出やすく、私たちは豆ごとに最適な焙煎をしてからブレンドする『アフターミックス』を大切にしています。保存は熱・光・酸素を避け、冷蔵か冷凍が理想です。今扱っているブレンドは、イタリアンバール時代の経験を活かした私自身の特徴を生かされた一杯。5種の豆にロブスタ種を加え、力強いクレマと甘みのある味わいに仕上げました。 |
|---|
検証結果�@:グラインダーの違いを検証
松本さんによると、コーヒーのおいしさの2~3割は豆の挽き方で決まるというほど、グラインダーは重要なパーツ。また、挽目を細かくすれば濃くパンチある味、粗くすればマイルドになるなど、グラインダーには味の調整という役割もあります。そこで、各製品のグラインダーの種類や挽き目の調整幅、調整のしやすさを比較。あわせて、抽出後のコーヒーかすの状態も確認しました。
| モデル | デロンギ | ガジア | 東芝 |
| グラインダーの種類 | 低速回転コニカル式 | セラミック製フラット式 | 低速回転コニカル式 |
| 挽き目の調整 | |||
| 抽出 手動後のコーヒーかす |
プロが見た、グラインダー3機種の違い
| 松本 | デロンギと東芝は低速回転するコニカル式グラインダーを採用。低速なので摩擦熱が発生しにくいうえ、均一なのが特徴なので円錐形の刃で豆を徐々に砕くため、挽き目が均一になりやすい方式です。一方、ガジアは熱が伝わりにくいセラミック製のフラット式。実際に使うと、ガジアだけ動作音がかなり静かなのが印象的でした。そこまで大きな差ではないものの、抽出後のコーヒー粕も3機種のなかではガジアが最も良好な状態だと感じました。ただ、挽き目を変更する際には付属の専用工具が必要になるので一手間必要です。 |
|---|---|
| いずれにせよ、3製品とも安価なミルに多いプロペラ式より粒度が揃いやすく、業務用レベルとはいかないながら、家庭用としては十分な性能です。 | |
| 面白いのが豆ホッパーの違い。デロンギと東芝はふたを取り外す方式ですが、ガジアは本体との一体型なので、豆を補充するときにふたの置き場所に困りません。個人的に気に入ったのは、唯一ふたの裏にシリコン製の密閉リングを備えた東芝。外気や湿気が入りにくく、豆の鮮度に配慮されている点が良かったです。 |
検証結果�A:すべての基本エスプレッソを比較
今回評価した製品すべてのコーヒーメニューの基本となるのがエスプレッソ。エスプレッソは単体で飲むほか、お湯で割ればアメリカーノなどのブラックコーヒーに。また、カプチーノやラテの味も、ベースとなるエスプレッソの仕上がりに左右されます。
味とともに確認したいのが、エスプレッソ表面の泡「クレマ」。クレマの厚さやきめ細かさは抽出状態を見る重要な目安です。ただし、クレマの厚さだけで味の良し悪しが決まるわけではありません。今回は初期設定のまま比較せず、松本さんが各機種の挽き目や豆量、抽出量、温度を調整。それぞれの機種で最もおいしいと感じる設定を探したうえで、味わいや香り、コク、クレマの状態を確認しました。
| 比較項目 | デロンギ | ガジア | 東芝 |
| 抽出量(約) | 20~180mL | 30ml~80ml | 15~50mL |
| 豆量(濃さ) | 3段階 | 5段階 | 3段階 |
| 抽出温度 | 3段階 | 3段階 | 3段階 |
| クレマ | |||
| 味 | 苦みとコクのバランスがよくエスプレッソらしい強さもある | 全体的なバランスは良い。もう少し深みがほしい場合はリストレット※を選ぶと良いかも | エスプレッソらしさもありながら、マイルドな口当たり |
| 点数 | 90点 | 85点 | 88点 |
※エスプレッソの抽出方法のひとつで、通常のエスプレッソよりも少ない湯量で抽出する「濃縮版エスプレッソ」のこと
バリスタ松本さんが選んだ味は?
| 松本 | 家庭用、しかも全自動のマシンということで、正直そこまで期待していなかったのですが、3製品とも自宅で楽しむには十分以上のクオリティがあり驚きました。今回は全体的に自分の好みよりさっぱりとした味だったため、豆量を増やしたり挽き目を細かくしたりして、苦みや深み、コクが出るように調整しています。点数は自宅でマニュアル式マシンを使って淹れた味を100点としているため差がつきましたが、ここまでのクオリティになると、どれがおいしいかは好みによる部分も大きいでしょう。 |
|---|
味の傾向は、苦みとともに深みとコクも強いデロンギ、よりマイルドな方向性の東芝、すっきりとしたガジアという印象です。ガジアはエスプレッソより少ない抽出量で濃厚に仕上げるリストレットも選べるので、力強い味を求めるなら、そちらを試すのもよいでしょう。個人的には、しっかりとした強さのあるデロンギが好みでしたが、どれも十分においしく、味の好みで選んで問題ないと思います。
検証結果�B:カプチーノでミルクメニューを比較
今回比較する3製品は、いずれもミルクを自動で泡立て、ふわふわのミルクフォームを作る機能を搭載しています。ここでは、その機能を使って3製品で共通して作れるカプチーノを抽出しました。カプチーノは、エスプレッソに温めたミルクとフォームミルクを合わせたメニュー。ラテよりもフォームミルクの割合が多く、コーヒーの力強さと、ミルクや泡が一体となった口当たりを楽しめます。今回は成分無調整牛乳を使用し、ミルクの温度やフォームのきめ細かさ、コーヒーとミルクのバランス、口に含んだときの一体感を確認しました。
プロが驚いたミルクメニューは?
| 松本 | 全自動のミルク機能では、液体のミルクと表面の泡が分離しやすく、バリスタが手作業で作るような一体感のあるミルクフォームに仕上げるのは難しいと感じました。ただし、飲む前にスプーンで混ぜれば、泡と液体がなじんで口当たりはかなり改善します。 |
|---|---|
| もうひとつ気になったのが、ミルクの温度です。ミルクは温めすぎるとタンパク質が変性し、本来の甘みやコクを感じにくくなります。このため、プロがミルクフォームをつくるとき、ミルク温度は比較的低めです。 | |
| 今回試したなかではとくにガジアが比較的高温で、抽出時に湯気が立つほど。飲んでみてもミルクの甘みやコクが弱く感じました。 |
一方、驚いたのが東芝です。プロがつくるフォームまではいきませんが、3製品のなかではミルクの温度や口当たりが最もよく、自分が自宅で飲むなら、唯一ミルクメニューもこのまま楽しんでも良いと感じました。
結局どれがおすすめ?3製品を使ってわかった違い
| 比較項目 | デロンギ | ガジア | 東芝 |
| エスプレッソの傾向 | コクとパンチのある力強い味 | すっきりと軽め | マイルドでやわらかな味 |
| ミルクメニュー | ○ | △(手動対応) | ◎ |
| メニュー数 | 5種類 | 9種類 | 7種類 |
| 設定・操作 | △ | ◎ | ○ |
| おすすめの人 | 力強いエスプレッソを手軽に楽しみたい人 | 自分好みの味を細かく追求したい人 | ミルクメニューまで全自動で楽しみたい人 |
今回の採点はエスプレッソの相対評価ではなく、あくまでも松本さんが自宅で飲む味をどこまで再現できたかを示しています。そのため、点数が高い製品がすべての人にとって一番おいしいとは限りません。エスプレッソの力強さ、ミルクメニューの仕上がり、設定を調整する楽しさなど、何を重視するかによって選ぶべき製品は変わります。
デロンギは、今回の豆で松本さんが好むコクとパンチを最も引き出せた製品です。細かな設定をしなくても力強いエスプレッソを作りやすい一方、抽出温度の変更は設定メニューの奥にあるなど、操作にはやや分かりにくい部分もありました。
ガジアは、松本さんの好みよりすっきりとした味だったため点数は控えめでしたが、抽出量や豆量、温度などを細かく設定でき、インターフェースの分かりやすさも3製品で一番でした。メニューも多く、リストレットならエスプレッソより濃厚な味も楽しめます。
東芝は、エスプレッソはマイルドながら、全自動で作るミルクメニューの完成度が印象的でした。分かりやすいタッチパネルや密閉性に配慮した豆ホッパーなど、後発製品ならではの使いやすさも備えています。ブラックコーヒーだけでなく、カプチーノなども日常的に楽しみたい人に選びやすい製品です。
今回試した3製品はいずれも、家庭用の全自動機として十分に楽しめるエスプレッソを抽出できました。多彩なメニューをボタンひとつで楽しめる全自動エスプレッソマシンから、毎日の暮らしをより楽しくする、自分に合った一台を選んでみてください。
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