その他

作り続けて30年 ビックカメラ「生毛ふとん®」のこだわりを聞いてみた

2024/12/16
作り続けて30年 ビックカメラ「生毛ふとん®」のこだわりを聞いてみた

ビックカメラが30年以上も作り続けているという「生毛(うもう)ふとん®」をご存じでしょうか? 「これって羽毛じゃないの?」と思わず首をかしげる方も多いかもしれません。

じつは、このふとん、ポーランド産グースダウン95%以上というハイクオリティながら驚きの価格で提供され、30年以上もの間愛され続けているのです。

しかし、なぜビックカメラがふとん作りに参入し、ここまでの品質と価格を実現できているのでしょうか?

その背景には、長年の工夫と熱意が詰まった「生毛工房」の存在がありました。その秘密をひも解くため、生毛工房を訪ね、寝具のエキスパートにインタビューを敢行! オンリーワンの ふとんが生まれる舞台裏を覗いてみました。

目次

    羽毛ではなく「生毛」? 

    多彩な家電が賑やかに並ぶ売場の一角に、突然ふわっと姿を現した心地良さげな空間。ビックカメラに寝具売場があるなんて意外でした。そして、そこで見つけた「生毛ふとん®」の見慣れない文字。

    「生毛? 羽毛の間違いじゃないの? 新しい素材?」

    思わずそんな疑問が脳裏に浮かびました。でも、そのふとんのタグには、はっきりと「生毛(うもう)ふとん (株)生毛工房」と書かれています。

    売場のポップを見ると品質へのこだわりが伝わるさまざまな謳い文句が書かれています。あ、やっぱり「生毛」で間違いないんだ。ふと触れてみると、軽くて気持ちいい肌触りがなんだか高級感を漂わせますが、その割に値段がリーズナブルな気もします。

    そもそも、どうして家電量販店でふとんを売っているんだろう? 

    そんな「生毛ふとん」の謎を解き明かすために、私は製造元の生毛工房への訪問を決意。そして、「ビックカメラがふとんを作る理由」と「生毛ふとん®の真価」を探るべく、寝具のエキスパートにお話を聞いてみることにしました。

    売り始めた当時は品質の説明に苦労したことも

    「生毛」というのはじつは「羽毛」をごまかすためではないのだろうか? さっそくそんな疑念を生毛工房の今井治功さ んにぶつけてみました。

    今井さんは、2001年に生毛工房に入社以来、ずっと「生毛ふとん®」の事業に携わり、睡眠環境・寝具指導士の資格を持つ寝具のエキスパートです。

    「生毛工房では、水鳥の羽(フェザー)の部分を使わず、より軽くて暖かい胸毛(ダウン)のみを使用しています。ダウンとは胸から腹部に生えている丸い球状になった綿毛のことで、私たちは水鳥 のダウンだけを使用しています。そのため、混じりけのない高品質の『生の毛』でふとんを作るという想いを、『生毛』という言葉に託しました」 

    なるほど。「生の毛」なんですね。とはいえ、やはり「グースの毛を使用」「ダウン混合率95%以上」「側生地打ち込み本数300本」という、一般的に高級ふとんと呼ばれる製品と近しい品質にもかかわらず、価格がやけにリーズナブルなのがどうしても腑に落ちない。

    「おっしゃるとおり、昔はお手頃な価格ゆえに偽物と疑われることもありましたね(笑)。だからとにかくお客様には商品に触ってもらったり、瓶に入った生毛をお見せしたりして、品質の良さを納得してもらえる工夫を試行錯誤しながらご案内をしていました。また、生地を無地にすることでホワイトグースの白い生毛しか入っていないことも説明しています。こういった地道なご説明を30年続けてきたことで、お客様からの信頼を少しずつ獲得して、いまでは一定の認知を得られたのかなと思います」

    ふとんの中に入っているホワイトグースのダウンを実際に触らせてもらうと、あっという間に宙に舞ってしまうほど軽く、またほんのりと温もりが伝わってくる。

    ああ、やっぱり私のように疑うお客さんも多かったのですね。すみません。でも、改めて「生毛ふとん®」が本物の高級ふとんだということがわかりました。ただ、「うもうふとん」と言っても、数千円から数十万円までその種類も値段もピンキリです。「うもうふとん」にはどんな種類があって、何が違うのでしょうか。 

    「フェザーを使った安価なものもありますが、それよりも軽さと暖かさに優れているのがダウンです。一般的に、『うもうふとん』の原料には『ダック(あひる)』のダウンと『グース(がちょう)』のダウンがあります」

    草食動物であるグースの毛は、雑食性のダックよりも油脂分に由来するニオイが出にくいのが特徴です。だから生毛工房では、ダウン混合率95%以上のポーランド産グースダウンを使用した商品だけを「生毛ふとん®」として販売しています」

    グースの羽毛は脂分に由来するニオイが出にくいとされる。

    なるほど! うもうにダックとグースがあることはなんとなく知っていましたが、まさかダックとグースは毛のニオイに違いがあるとは知りませんでした。ではなぜ、ポーランドのグースにこだわっているのでしょうか。

    「ポーランドのような寒冷地で生育されたグースは、身体を温める胸毛(ダウン)が発達して、ダウンボールが大きくなります。空気を多く抱えこみ、保温性が高まるグースのダウンは、『うもうふとん』にぴったりの原料なんです」 

    また「 中小規模の農場が多いポーランドでは、グースがより自然に近い環境で育ちます。生産効率だけで言えば、たくさんのグースを育てる大規模農場のほうが効率は良いでしょう。でも、ポーランドのグースは『からす麦』など天然の飼料で、ストレスの少ない状態で生育されています。それに加えて、ポーランド政府が厳格に品質を管理しているため、良質な『うもう』を安定的に生産できるんです 」 

    ポーランドでは中小規模の農場が多いため、グースがより自然に近い環境で育つという。

    「生毛ふとん®」は、通気性の高い無地で真っ白の生地にこだわっているのも特徴。これも、ポーランド産の美しい純白の「うもう」を採用しているからできることだそうです。

    「ポーランドで主に飼育されているのは、『ホワイト・コウダ』という品種です。ダウンに茶色や黒などの色が混ざりやすい品種もある中で、ホワイト・コウダは美しい純白の毛を持ちます。無地の生地を使うことにより、生地本来のやわらかさやしなやかさを感じられることができます」

    ポーランド産のグースにこだわるのには、こんなさまざまな深い理由があったんですね! 

    リーズナブルな価格を実現できるのはなぜ?

    このように品質に徹底的にこだわった「生毛ふとん®」ですが、その価格は、他社の高級「うもうふとん」と比べてもシングルで59,800円と、かなりリーズナブルな印象です。なぜこのような価格を実現できたのでしょうか。

    「『うもうふとん』というと派手な柄の生地の商品を想像しますが、柄=プリント、なのでその分生地がごわつく要因にもなります。またプリント工程を省くことでコストダウンにもつながり、よりお求めやすい価格での提供が可能になります。ホワイトグースのダウンの白さに自信があるからこそ、『生毛ふとん®』は通気性の高い無地の生地を採用できるんです」 

    また、『うもう』の流通は、中国や台湾などの商社が、ヨーロッパから買い付けた原料を自国へ運んで洗浄・精製したうえで、日本へ輸出するルートが一般的です。ただこの場合、複数の企業を経由することによる中間マージンがかさみ、輸送などのコストも大幅に増えてしまいます。そこで生毛工房では、たしかな品質の『うもう』をポーランドから直輸入しているため、お求めやすい価格を実現しています」

    なるほど。リーズナブルな価格はこんな絶え間ない努力と工夫の賜物だったんですね。思えば、30年前の「うもうふとん」は、30万~40万円するのが当たり前の時代。一般消費者にとってはまさに「高嶺の花」でした。

    しかしそんな時代にあって、生毛工房で掲げられた目標は、6万円以下で販売できる「うもうふとん」の開発だったそう。そもそもそんな低価格で売りたい、という発想が無謀にも思えますが、それは綿密な調査と工夫があったからこそ立てられた目標だったと言います。 

    「当時から高品質な『うもう』を生産していたポーランドに着目した当社は、現地に赴いて調査・交渉を行いました。直輸入・製造の体制を整え、1992年に『うもうふとん』が誕生。以来30年以上にわたって、品質にこだわりぬいた商品を提供しています」 

    生涯つきあう寝具としてのこだわり

    東欧の国ポーランドで大切に育てられた「うもう」ですが、製造は日本国内であることも生毛工房のこだわりポイントのひとつ。たしかな技術とノウハウを持った協力工場が、側生地の縫製と「うもう」の充てんを担当しているそうです。

    「人の手で丁寧に縫製される側生地は、打ち込み本数(1インチ<約2.5センチ>四方のタテ糸とヨコ糸の合計本数)300本以上。高密度でダニなどが侵入しにくく、しかも通気性が良いのが特徴です。また、キルティングのマス目を細かくすることで、身体にフィットする『ドレープ性』を向上。縫い目部分の『うもう』がつぶれないようマチをつける立体キルティング加工を採用し、より暖かいふとんに仕上がります」

    この製造工程でのこだわりは、商品がお客さんの手元に届いたあとにも引き継がれます。

    生毛工房では、それぞれに合った商品を長く使ってもらうために、アフターサービスにも注力しています。その象徴が独自の「製品10年保証」や、側生地代のみでのリフレッシュクリーニング(打ち直し)というサービスです。

    「長く使った『生毛ふとん®』はボリュームや弾力性が落ちていきますが、リフレッシュクリーニングは、協力工場で取り出して洗浄し、高温乾燥させてボリュームを回復させます。その上で状態に応じて新毛を足すので、新品さながらの風合いを取り戻すことができます。購入当時の価格の約半額程度でご提供できますが、このサービスを併用することで「一生もの」お付き合いができる商品となります。30年前に購入して、10年に一度のリフレッシュクリーニングを繰り返して使い続けてくださるお客様もいらっしゃいますね」 

    こうしたアフターサービスは、30年、本気でふとんを作り続けているからこそ成せる業(わざ)。「生毛ふとん®」は、まさに「一生もの」のふとんと言えそうです。

    サイズ、季節に合わせた豊富なラインナップ

    売場を見て実感したのですが、「生毛ふとん®」はその豊富なラインナップと細部への徹底した心配りも特徴のひとつです。

    たとえばシングルタイプひとつとっても、通常サイズのほかに「ワイドロングサイズ」が用意されていたりします。豊富なラインナップから自分にぴったりのふとんが選べるのはうれしいですね。

    「通常一人用(シングルサイズ)のうもうふとんのサイズはほとんどが150×210cmです。ただ実際に使用する際は空気を含んで丸まるため、実際に使えるサイズはその80~90%程度になります。そうすると足元が出てしまったり、せっかく温めた空気が隙間から逃げてしまいます。そのため生毛工房では、縦・横ともに20cm大きいゆったりサイズ(170×230cm)をご用意しております」 

    まさに至れり尽くせりとはこのこと。痒いところに手が届く……もとい、寒いところにふとんが届く、こうした心遣いにも快適な眠りへの「想い」が込められています。

    ビックカメラが、早くから寝具に注目していた背景には、「睡眠の改善が健康につながる」という深い洞察と、「高品質な羽毛布団を手の届く価格で提供する」という強い使命感が垣間見えます。

    本気のものづくりの奥深さ

    正直に言うと、私自身、初めて「生毛ふとん®」を見たときは、家電量販店が扱うふとんにどれほどの価値があるのか、と半信半疑でした。

    「生毛」という聞き慣れない言葉にも戸惑い、その品質に対して疑念を抱いたのが正直な気持ちです。でも、売場で実際に「生毛ふとん®」に触れた瞬間、その疑念は吹き飛びました。

    そして、その背景にあるポーランド産グースダウンへのこだわりや、国内での丁寧な手作業や製造工程、さらにはリーズナブルな価格の秘密を知る中で、その信条と品質にますます深く共感するようになりました。

    「お客様により豊かな生活を提案すること」を信条に、30年以上にわたる本気のものづくりから育まれた快適さと心地よさ。これこそが、私たちの暮らしを豊かにする源であり、未来をより良いものにしていく原動力なのでしょう。

     
    この記事で紹介した商品
    生毛工房「生毛ふとん®」
    生毛工房「生毛ふとん®」
    高品質なポーランド産グースダウンと高密度な生地を使用した、こだわりのふとん。
    ビックカメラ.comで見る
    O_2412_umou_12.JPG
    生毛工房
    生毛工房では、ダウンと生地にこだわったオリジナル羽毛布団「生毛ふとん」をはじめ、まくら、敷ふとん、カバーなど睡眠をより豊かにする寝具をご提案します。

    この記事を読んで気に入ってもらえた方は
    🤍いいねやSNSでのシェアをよろしくお願いします

    Profile
    今井治功
    株式会社生毛工房 睡眠環境・寝具指導士
    今井治功
    2001年入社。睡眠環境・寝具指導士(一般社団法人 日本寝具寝装品協会認定)。当初から「生毛工房」事業に携わり、5年間店舗で販売に従事。以降、仕入れ担当となり、2016年から原料輸入等の業務にも携わっている。
    佐藤史親
    佐藤史親
    1987年、山梨県生まれ。明治大学文学部卒業後、タウン紙記者・ スポーツ雑誌編集者などを経て2018年に独立。フットワークの軽さを活かした取材記事を得意とし、 インタビュー・撮影・執筆までジャンルを問わず手掛ける。趣味はフルマラソン(ベスト 3:16:59)。
    鈴木謙介
    写真・講師
    鈴木謙介
    世界の光の彩りを追いかけて山岳辺境地を中心に60ヶ国以上歴訪。「International Photography Awards」で2014年と2017年にプロ部門のカテゴリー別1位を受賞。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)での展示歴も。
    • HP
    share
    • X
    • line
    • facebook
    • はてなブックマーク

    ABOUT このメディアについて

    ビックウェーブ(BIC WAVE)
    このメディアは、ビックカメラが運用しています。
    皆さまに新たな出会いや、発見などの「どきどき・わくわく」をさまざまなコンテンツに載せてお届けします!

    RANKING 人気記事

    ARCHIVE 月間アーカイブ

    TAG タグ

    RECOMMEND おすすめ記事