イヤホン カナル型 EHP-CH2010A ホワイト [カナル型 /φ3.5mm ミニプラグ]

「EHP-CH2010A」は、イヤホンブランドとしてのエレコムの評価を高めた「EHP-CH2000」を継ぐモデルだ。ドライバー／ポールピース／マグネットを同軸上に配置する「Magnetic Turbo Axial Port」など技術要素の多くは先代モデルから素直に継承しつつ、要点のみを向上させている。

まず「前置マグネットの大型化」。振動板の表裏にマグネットを配置して磁力のロスを減らし、ユニットの動きをよりスピーディにする構造だが、マグネットが二倍弱に大型化された。磁石の磁力は単純に大きさの分だけ強くなるので、より大きな効果を望める。

さらにドライバー内には、電磁石として動作してマグネットとの作用で動きを生み出すボイスコイルというパーツがあるが、その素材を「CCAW」に変更し、磁力は確保しつつ軽量化を図っている。マグネット側の磁力強化で駆動力をアップしつつユニット側はさらに軽量となれば、より力強く正確な動作を得られる。

そのドライバーのパワーを受け止めながら不要な振動は抑制するため、先代から引き続きの真鍮製ハウジングは部分的に大型化している。本機は筐体の小型化は潔く諦め、装着感の問題には別の工夫をした。ハウジング部とケーブル接続部となるポスト部をセパレート配置することで、イヤホンの大きさを耳の中とその周囲のスペースにうまく分散してあるのだ。おかげで見た目ほど装着感はゴツくない。

その音質は「全体としてクリアで空間性も見えやすい」「低音楽器を大柄かつ張りのある感触で際立たせる」というのが大きな特徴だ。

試聴した曲の中で特に相性が良いと感じたひとつはRobert Glasper Experiment「Day To Day」。リズムマシンのバスドラムとぶっといベースのどちらをもどんと大柄に描き出してくれる。それでいてハリがあり、大きく鳴らしつつもぼんやりと広がる音にはしない。なので低音そのものの説得力と演奏のリズムが共に生きており、グルーヴが強く届いてくる。

定評あるモデルをブラッシュアップしつつ、「弱点は解消されたけど個性は弱まった」的な罠には陥らず、このシリーズならではのサウンドを進化させることに成功したモデルだ。この二代目の登場によって「EHP-CH」はシリーズとしての在り方を完全に確立したと言えるのではないだろうか。

文：高橋 敦

※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。