イヤホン カナル型 SHE9730 ホワイト [φ3.5mm ミニプラグ]

フィリップス「9700」シリーズは、実売5000円以下クラスの“ド定番”だ。これほど長らく定番の地位を確保し続けているシリーズはどの価格帯にも多くはない。

初代「9700」の日本登場は2008年初頭。その後「9710」「9720」が登場したが、いずれもマイナーアップデートだった。しかしSHE9730では、ドライバーを変更してハイレゾに対応するという大幅な改良が行われた。なお、従来のSHE9720も併売となる。

同社の最上位機にも採用された「レイヤードモーションコントロールドライバー」を搭載。振動板素材を多層ポリマーとし、さらにジェル素材と組み合わせることで、特定の帯域の突出などを抑制し、滑らかでフラットな周波数特性を実現する。再生周波数帯域は、高域側を従来の23.5kHzから40kHzまで伸ばした。それに伴い日本オーディオ協会のハイレゾロゴも取得する。

その他は従来機を踏襲。エアベント構造「ターボバス」では、深みのある豊かな低音を再現。またノズル部の耳への挿入角を調整することで、音がより素直に鼓膜へ届くだけでなく、より自然な装着感も実現する。

そのサウンドは、優れたバランスを従来機から引き継いだ上で、SHE9730の方が「より音色は明るく空間の見晴らしもクリア。中低域はパワフル」になっている。

ロック系のバラード曲では、アコギのシャリンとした鈴鳴りがSHE9720より強めに出るし、エレキギターのカッティングもシャープな印象。SHE9720が耳馴染みの良さを持ち味とするのに対して、SHE9730は解像感も打ち出したすっきり系の雰囲気だ。

ベースやドラムスの感触も明確に異なる。SHE9720は素直に軽やかにスパンと抜け、SHE9730ではパワーと重みを溜めて密にする。SHE9720で聴くとポップスらしい軽快さ、SHE9730で聴くとロックらしいドライブ感の方が強めに引き出される印象だ。

また、シンプルな編成のバンドサウンドには、SHE9730の中低域の迫力を引き出してくれるところがうまくハマる。近年のフィリップスは総じて中低域の味付けが絶妙なのだが、SHE9730でもこの点は色濃く反映されている。9700シリーズらしいオールマイティさを維持しつつ、より現代的なニュアンスも加えてきたのがSHE9750と言えるだろう。

文：高橋 敦

※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。