CDプレーヤー TRVCD6SE-BK [ハイレゾ対応]

トライオードのTRV CD6SEは、最近聴いたCDプレーヤーとして、もっとも注目したものだ。簡単に技術的内容を紹介しよう。もっともトライオードらしい仕様が真空管バッファ回路搭載だ。6922(6DJ8/E88CC)2本から成る回路で、背面にはアンバランスの真空管出力とソリッドステート出力を持つ。D/Aコンバーターは定評のESS Technology社のSABRE　ES9038Q2M。アップコンバート機能が面白い。信号を内部で352.8kHz/32bit、DSD5.6MHzにアップコンバートしてからD/A変換を行う。試聴曲はホリー・コール「アイ・キャン・シー・クリヤリー・ナウ」
●ソリッドステート出力(44.1kHz/16bitCD)
　一聴で、とても音楽性が高い。冒頭のベースの弾みが柔らかく、弾力感もヴィヴットだ。情家みえのヴォーカルが明瞭で、ボディ感があり、音色がクリヤーで暖かい。ニュアンスも細部までよく再現されている。キレも良好で、音調が新鮮だ。醸し出されるソノリティ的な響きも多く、滞空時間も長い。音楽の細部まで丁寧に情報を表出された、完成度が高い音楽再生機だ。
●真空管出力(44.1kHz/16bitCD)
　これぞまさに真空管的質感だ。暖かく、しなやかで強調感がなく、しかも濃度が高い。ヴォーカルの温度感が高く、スピーカーからは人の声が出ているというヒューマンな記号性が色濃い。ピアノも輪郭ではなく、内実の充実感と温度感の高さで心地好く聴かせる。
●352.8Kｂｐｓアップコンバート(ソリッドステート出力)
　ベースの音に質感が与えられ、ヴォーカルが繊細な音調に変わる。粒子サイズが細かくなり、全体にしなやかで、滑らかな印象だ。ハイレゾというわけではないが、グラテーションの細かさと、音進行の丁寧さは、やは352.8Kｂｐｓならではのすべらかなテクスチャーだ。
●DSD5.6MHz(ソリッドステート出力)
　ワンビット的な暖かみ、音調感、ヒューマンな香りがひじょうに濃い音だ。グラテーションの描き方では352.8Kｂｐｓがフラットな質感を持ちながら階調が増えるのに対し、DSDはまさにDSD的なテクスチャー、つまり潤いと優しさ、暖かさが加わり、さらに色彩感が与えられる感覚だ。まさにDSD的としか形容できない麗しい雰囲気に変わる。
●MQACD(ソリッドステート出力)　ベーム/ベルリン・フィル「モーツァルト交響曲第40番」
　まさしくMQAの音だ。ひじょうに細やかで、粒子が有機的に動き、弦が艶艶と輝き、弦からの倍音が大量に放出され、音進行がブリリアントな……と、まさにMQAの記号性的な音だ。ソリッドステート出力が潤いと音の優しさ、溌剌としたヴィヴットな響きは、ある意味、真空管的。ベームの悠々とした堂々たる音構築、安定感の高さ、伸びのリッチさ、低域の量感の雄大さ……まさにMQACDでなければ出せない濃密で高密度な音楽の表情だ。
●まとめ
　基本のソリッドステートのCD44.1kHz/16bit再生からひじょうに音楽的な音を再生する。サンプリング周波数変換は、ぞれぞれ新鮮な表情を与えるが特にDSDの潤いはまさにDSD的。MQACDは、ショールーム的な模範的で、リッチな表現力が愉しめた。真空管サウンドは、綿密感と色彩感の楽しさ。ひじょうに音楽が濃い音を再生するCDプレーヤーだ。