ブルートゥースヘッドホン FCL-LSW-B ブラック [Bluetooth対応]

仏フォーカルは、名匠の誉れ高いスピーカーエンジニア、ジャック・マユール氏が設立したオーディオブランドだ。同社は、スピーカーはもちろんヘッドホンやイヤホンでも、自社開発のドライバーユニットを搭載。設計から組み立て、品質管理までをフランス国内で一貫して行う高品位なものづくりにこだわっている。

「LISTEN WIRELESS」は、欧州でポータブルヘッドホンの定番として人気を誇った「Spirit One」をベースに、その音質と機能性に磨きをかけた「LISTEN」のワイヤレスモデルとなる。

外観は独特な高級感を漂わせるヨーロピアンデザイン。ゆったりとしたサイズのイヤーカップと、肉厚な低反発フォームをマイクロファイバー製の外皮で包み込んだ肌触りの良いイヤーパッドを採用。装着感が抜群に良く、パッシブでの遮音性能もかなり高い。

自社開発の40mmダイナミック型ドライバーは、マイラー振動板をベースに中央のドーム部分をチタン素材でコーティングして、キレのある高域と厚みのある中低域を両立。スピーカー開発から得たノウハウを元に、フラットバランスでつながりのよいサウンドに仕上げている。

BluetoothのコーデックはSBCに加えて、より音質の優れたaptXをサポート。NFCにも対応する。内蔵バッテリーは、フル充電状態なら連続で最長20時間の音楽再生に対応。肉厚なイヤーパッドに加えてフレキシブルに曲がるヘッドバンドにより、タイトでありながら締め付けの負担を感じさせないフィット感が得られる。付属ケーブルをつないで有線ヘッドホンとしても利用可能だ。

オンキヨー「DP-CMX1」とaptXでワイヤレス接続して音質をチェック。土岐麻子「乱反射ガール」を聴くと、ファルセットの淡いゆらぎや息づかいなど、ボーカルの細やかなニュアンスを自然に伝えてくるヘッドホンであることがわかる。

低域のリズム音は立ち上がりのインパクトが鋭く、余韻がスムーズに伸びる。特定の帯域が強調されることのない、絶妙にバランスの取れたチューニングに仕上げられているところはさすがだ。空間再現もスピーカーによるリスニングをイメージしたかのように、鮮明な音の定位と輪郭の鮮やかさ、ナチュラルな立体感を備えている。

低音は量感を前面に打ち出すタイプではなく、音像の彫りの深さ、瞬発力の強さを特徴とする。抜け味の清涼感が同等クラスのBluetoothヘッドホンに比べると際立っていると思う。空間は奥行きが深くクリアに見通せ、微小な音の再現力も高い。

スタイリッシュなルックスと裏腹に、落ち着いたニュートラルバランスが特徴。フォーカルが築き上げてきた理想的なスピーカーの音づくりの理論を、ヘッドホンのチューニングにそのまま当てはめるのではなく、応用をきかせながら実践することで、自然なリスニング感と豊かな音楽性を引き出せているのだろう。

文：山本 敦

※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。