（V．A．）/ パーチマン・プリズン・プレア〜サム・ミシシッピ・サンデイ・モーニング 【CD】

悪名高きミシシッピ州立刑務所：通称〈パーチマン・ファーム〉の囚人たちによるゴスペル歌唱をフィールド・レコーディング。

ドイツが誇るワールド・ミュージック・レーベル“Glitterbeat”は、数々の優れたフィールド・レコーディング作品をリリースしていることでも知られています。ティナリウェン作品のプロデューサーとしてもお馴染みのイアン・ブレナンが、世界の辺境地においてフィールド・レコーディングした貴重音源のシリーズ作品“Hidden Music”は、ボツワナ、ジブチ、コモロ諸島など、マニアックな場所で録音された〈知られざる伝統音楽〉が基軸となっており、これまでも大変に好評を博してきました。今回そんなブレナンがフィールド・レコーディングの舞台に選んだのは、なんとアメリカ合衆国南部ミシシッピ州。厳重な警備体制が敷かれていることでも有名な〈あの刑務所〉でした。

ミシシッピ州立刑務所：通称〈パーチマン・ファーム〉は、1901年に設立。広大な農場を併設した同刑務所では、古くは囚人貸出制度の下、多くのアフリカ系アメリカ人囚人たちに過酷な半奴隷労働を課していました。ちなみにデルタ・ブルースのレジェンドであるブッカ・ホワイト（1909-77）やサン・ハウス（1902-88）、偽小切手で不渡りを出し逮捕されたエルヴィス・プレスリーの父：ヴァーノン・プレスリー（1916-79）なども一時収監されており、ブッカ・ホワイトに至っては同刑務所を題材に’Parchman Farm Blues’というブルース・ナンバーを書き上げ、1940年にレコード・リリース。そんな同刑務所は、現代においても世界屈指となる200万人超えの収監者数、全米一の囚人の死亡率記録を毎年更新しており、暴動事件も頻繁に勃発。非常に悪名高い場所として知られています。

そんなパーチマン・ファームにおいて、今回ブレナンがフィールド・レコーディングしたのは、同刑務所の囚人たちが歌うゴスペル・ソング。パーチマン最大セキュリティの中で、オーバーダブなしの100％ライブ録音が決行されました。2023年２月、舞台は同刑務所内で毎週日曜日に行われている礼拝。年齢28歳から73歳、匿名希望者から〈元ロックンロール歌手〉に至るまで、様々な歌い手たちが集められました。収録ナンバーの多くはゴスペルのスタンダード・ナンバーですが、サブテキストが随所に感じられ、原曲のイメージを覆すような、なんとも言えない味わい深さを湛えています。ア・カペラによる（1）にはじまり、ピアノと共に歌われるしみじみとした（2）、完璧なピッチのハイ・トーン・ア・カペラによる（3）、コーラスとキーボードを従えた本作中最高齢の歌い手による（4）など、その歌唱力は誰もがプロ級。この一枚で、古きニグロ・スピリチュアルからラップを混じえたモダン・スタイルに至るまで、ゴスペルの包括的な魅力に触れることが出来ます。


同時発売アナログはINR-48014