あなたのためのタオル あなたのためのタオル

ビックカメラと、「タオル研究所」で知られる伊澤タオルが共同開発した「ためのタオル」。 「乾燥機を使う人のためのタオル」「洗濯物を干す人のためのタオル」「髪をいたわる人のためのタオル」と3シリーズ展開するこの商品は、どのように生まれたのか? その開発ストーリーと、そこに込められた開発者の想いをひも解きます。 (上写真左からビックカメラの海老原、有末、伊澤タオルの江川さん、倉部さん、今西さん。有末と江川さんが当プロジェクトの中心となりました)

家電量販店が、本気でタオルづくりを始めた理由

ためのタオル

家電量販店であるビックカメラがタオルをつくる──その一文だけで、少し立ち止まってしまう人も多いかもしれません。 しかしその背景には、「生活者の“欲望” を起点に、本当に意味のある商品をつくる」という、同社のものづくりに対する強い姿勢がありました。

このプロジェクトを担当したのは、ビックカメラ商品開発室の有末。そして共同開発を担ったのが、長年タオルづくりに向き合ってきた伊澤タオルの江川さんです。 両者の出会いは、2023年にさかのぼります。伊澤タオルの倉部さんからビックカメラへ送られた一通の手紙をきっかけに関係が生まれ、その後、具体的な商品開発へと動き出しました。

伊澤タオルとの商談が組まれ、「タオルの話がある」と聞いたとき、有末は可能性を探っていこう、と前向きながらやや慎重な考えを持っていたといいます 。 しかし江川さんの「実はタオルって、乾燥機の使用を推奨していないんです」という一言が、状況を一変させました。

「タオルと シーツこそ乾燥機を使いたいからドラム式洗濯機を使っているのに、タオルには乾燥機を使えない?そんな大事なこと、誰も教えてくれなかった」。 有末自身の生活実感と強い違和感が出発点となったのです。

家電を使うシーンから逆算して、より生活者に寄り添ったタオルをつくりたい

ためのタオル

江川さんもまた、以前から同じ課題意識を持っていました。タオルは本来、日陰での吊り干しが推奨されています。 しかし、仕事・家事・育児に追われる現代社会、乾燥機を使ってでも洗濯物を早く・ラクに乾かしたい人が増えています。 実際、ビックカメラが実施した「洗濯における困りごと」を尋ねるアンケートでは、1位が「ニオイが気になる(乾燥不足も要因 )」、2位が「乾くまでに時間がかかる」という結果に。 にもかかわらず、乾燥機使用を前提としたタオルは、世の中にほとんど存在していなかったのです。

「家電と一緒に購入いただくタオルは、どう使われるかにきちんと寄り添うべきだと考えました 」そう語る有末の言葉に、家電量販店であるビックカメラならではの可能性が重なりました。

企画は次第に、「家電を使うシーンから逆算してタオルをつくる」という明確な方向性を持ち始めます。洗濯から乾燥まで一気に済ませる人もいれば、干して乾かす人もいる。 さらに髪へのやさしさを重視する人もいる。 それぞれの行動に寄り添ったタオルをつくるという発想です。

有末は、市場調査としてさまざまな量販店のタオルを実際に購入し、使い比べてみました。 機能表示を洗い出し、「これは欲しい」「これは 重要ではない」と一つひとつ整理していく中で、伊澤タオルから示されたのが、タオルづくりにおける「シーソー理論」です。

ためのタオル

吸水性、ふわふわ感、速乾性、耐久性。そのすべてを100点満点で満たすタオルは 難しい。だからこそ、何を優先するのかを決め、そこを徹底的に尖らせる必要がある。この考え方が、「ためのタオル」の設計思想の核になっていきます。

毎日、2時間おきに電話で話し、何度も立ち返る。開発を前に進めた対話の時間

ためのタオル
ためのタオル

企画が本格的に動き出してから、有末と江川さんの間では、頻繁なやり取りが重ねられました。言葉を交わすたびに、少しずつ輪郭が見えてくる。 その積み重ねが、このタオルの土台になっていきます。有末は資料を読み込み、分からないことがあればすぐに江川さんに電話をする。 ピーク時には2時間おきに、1日5〜6回も連絡を取り合い、糸の種類や撚り方、織りの構造、さらには品質管理や試験方法 まで、一つひとつ理解を深めていきました。 その時間は、単なる確認作業ではありません。互いの価値観や、ものづくりに対する姿勢をすり合わせていく、大切な対話の時間でもありました。

「聞けば聞くほど奥が深くて、全部知りたくなったんです」。タオル一枚の向こうに想像以上の世界が広がっていることに、有末自身も引き込まれていったと語ります。 工程や背景をきちんと理解しないままでは、本当に良い商品はつくれないという思いがありました。

江川さんにとっても、ここまで強い熱量で向き合ってくれる開発担当者は珍しかったといいます。「前回話した内容を、次に会ったときにはこちらより詳しく説明されることもありました」。 インプットとアウトプットを繰り返しながら、二人の間に共通言語が生まれていきました。

使う人の行動から逆算した、3つの答え

「ためのタオル」は、生活シーンごとに設計思想を変えた3種類で展開されています。それぞれが明確な役割を持ち、使う人の行動に寄り添う設計です。

ためのタオル

まず一つ目が、「ためのタオル」シリーズを生み出す出発点となった「乾燥機を使う人のためのタオル」です。 便利さの裏で、仕方ないと諦めていた縮みとゴワつき 。その当たり前を覆したいという思いがありました。

乾燥機での使用を想定し、乾燥後のふんわり感をいかに保つかがテーマです。 パイル(糸をループ状に織り込んで仕上げたつくり )の形状を安定させる「ヒートブラッシング加工」や、 毛羽立ちを抑える「成形パイル」といった技術を組み合わせることで、 乾燥機にかけても縮みが抑えられ、ふんわり感が継続する仕上がり を実現しています。

「乾燥機を使った後も縮みを感じず、ふわっとしている 」。有末が実感として語るこの感覚こそが、このタオルの価値を端的に表しています。

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二つ目が、「洗濯物を干す人のためのタオル」です。タオルがなかなか乾かない、あの小さなストレスを減らしたい──そんな日常の声に、真正面から向き合いました。 部屋干しや自然乾燥を前提に、何よりも「早く乾くこと」を重視しています。ここで採用されたのが、綿とポリエステルの混紡糸でした。

ポリエステルは速乾性に優れる一方で、いわゆるマイクロファイバータオルに見られるような、べたつきや使い心地の悪さが敬遠されがちです。 そこで伊澤タオルでは、綿の風合いを最大限に残しながら、ポリエステルの速乾性を活かす配合比率を徹底的に検証しました。

「最初は60対40の割合にしましたが、乾きやすい反面、使い続けるとパイルが抜けやすいという課題が出ました」と江川さんは振り返ります。 使用時に毛羽が付着しにくいように 、65対35、70対30と複数パターンを試作。乾きやすさと耐久性のバランスが最も良い配合を見極めるまで、何度も試行錯誤が重ねられました。

その結果、「乾燥機にかけてないのに『あれ、乾いてる?』 と感じたり、干すときに『フワッとして軽い』と嬉しくなったりするほどの完成度で、 1度使っていただければすぐに違いが分かると思います」と有末が語るほどの仕上がりとなっています。

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三つ目が、「髪をいたわる人のためのタオル」です。慌ただしい朝や、疲れた夜。ほんの数分でも、髪に触れる時間をやさしいものにしたいという発想から生まれました。

髪を拭くという行為に着目し、吸水性とやさしい触感のバランスを重視しています。 世の中に多いマイクロファイバーのヘアタオルとは異なり、キューティクルへの負担を抑えながら、水分を素早く吸収する糸から開発しました。 ドライヤー前のひと手間を快適にするための一枚と言えるでしょう。

売り場に置かれるその瞬間まで、妥協しない

ためのタオル

開発の苦労は、タオルそのものにとどまりません。ビックカメラという売り場にどう置くか、という課題も大きな壁でした。 一般的なタオル売り場では、そのまま陳列されるのが主流です。しかし有末は「きれいな状態のタオルをお客様に提供したい」という想いを持っていました。

そこで「ためのタオル」は、あえてパッケージ入りで展開されることになったのです。ただし、パッケージに入れることで安っぽく見えてしまっては意味がありません。 素材感やデザイン、感触 が伝わる工夫が求められました。デザインでは、ビックアイデアのロゴ を軸に、洗濯機などのモチーフをイラストで表現。 リアルすぎない表現にすることで、日常品でありながら、愛着を感じる存在を目指しています。

「気軽に“ていねいな暮らしっぽさ”を感じられる」そんな絶妙な距離感が、この商品の佇まいに込められています。

あなたの“ちょっとの幸せ”のためのタオル

ためのタオル

ビックカメラ社内でもこのタオルは、単なる非家電商品としてではなく、新しいプライベートブランドの象徴として位置づけられています。 実際に社員に配布して行われたインナープロモーションでは、多くの共感の声が集まりました。 「乾くのが早い」「干した瞬間から違う」「端がヨレない」。そうした細かな感想の一つひとつが、生活者の不満に真正面から向き合った結果であることを物語っています。

最後に、この商品を一言で表すなら何か。そう問われた有末は、「ちょっとの幸せ」と答えました。

毎日の家事がちょっと楽になること。待たされていた時間がちょっと減ること。ふわっとしたタオルにちょっとした幸せを感じること。 その積み重ねが、暮らしの質を確実に高めていく。タオルは毎日使うものだからこそ、その違いは少しずつ、しかし確実に積み重なっていきます。 小さな差を、確かな価値として届けたい──そんな思いが、このシリーズ全体を静かに貫いています。

家電量販店だからこそ気づけた違和感と、タオルメーカーの技術力。その掛け算によって生まれた一枚は、ビックカメラのプライベートブランドが目指す姿を、確かに体現しています。

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