SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art
超広角20mmで開放F値1.4の大口径を実現したSIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art。
(2022年10月現在、35mmフルサイズをカバーするミラーレスカメラ用AF交換レンズとして)Artの名にふさわしいビルドクオリティーと光学性能の素晴らしさはもちろん、高精度に加工された大型の両面非球面レンズの採用により大口径ながらフロントフィルターの取り付けも可能なほどコンパクト化されました。
所有する喜びと写す楽しみをともに満足させてくれるレンズで作例撮影に出発です。

この洒落たレンズを通してクールな都市風景を撮影するだけで楽しみが胸に湧き上がってきます。
カメラ:
SONY α7R IV
絞り値:f8
露出時間:1/500秒
ISO:100
露出補正:±0ステップ
露出モード:マニュアル


東京レインボーブリッジに向かう首都高11号線を真下から見上げて撮影しました。輪郭のエッジが鋭利な刃物で切ったようにスパッと立ち上がるように写し出す描写力は、さすがArtシリーズの名を戴冠したレンズです。

超広角20mmで開放F値1.4、これだけ口径が広いと周辺が流れ鏡面歪曲が気になりますが、SDLガラス、非球面レンズなどを組み合わせることで諸収差を補正し、画面中央から周辺まで高い均一性を保っています。
作例を撮影するためレインボーブリッジ遊歩道に渡ろうと芝浦アンカレイジ(橋を支えるメインケーブルの端を固定する巨大なコンクリートブロック)を訪れると、ガラス窓全面にレインボーブリッジが写り込んでいることに気づきました。巨大な橋が写り込んでいるガラス窓の面積はかなり大きいのですが、このような場面は20mmが大活躍します。広大な画角が目の前に広がるガラス窓をピッタリ画面に収めてくれました。
素のRAWデータで歪みを確認しても歪曲収差は感じられず、優秀な光学設計の性能をも確認できました。

レインボーブリッジを渡ってお台場ビーチに到着。小さなビーチですが広々とした空が目の前に広がっています。画面左下に小さく散歩に来た子どもたちの姿を、ビーチを囲む大気の広がりと対比するようにクリアでヌケの良い描写で写し出し、超広角レンズならではの雰囲気あふれる画になりました。

足元に落ちている樹木の影にローアングルで接近しダイナミックな広がりを強調してみました。画面奥にはレインボーブリッジがすっぽり収まり、超広角らしいパースが感じられます。20mmの画角はアングルを変えるだけで変化に富んだ描写が楽しめるので是非とも所有したい1本です。

F1.4もの大口径を誇るフルサイズミラーレス用20mmはこのレンズしか存在しません(2022年10月現在)。開放で撮影したときの深度の浅さはとても20mmレンズとは思えず、アウトフォーカス部分のボケ味がキリリと締まったピント面を効果的に浮き上がらせ、広大な画角で写し出した空気感が更に深まり画面全体に立体感が生まれます。

日を改めて、荒川沿いをフォトウォークしました。河川敷沿いの公園にポツンと独立した樹木があり根本に日に焼けた木製のベンチが置かれている光景に惹かれたので、パシャっとワンショット。
撮影位置から距離があるのでF1.4とはいえども背景のボケ方はそれほど大きくありません。だが、画面全体を見ると空気感が写し出されているような不思議な雰囲気が感じられます。画角が広いので一見感じにくいのですが、大口径によるボケが隠し味のように効いているからに違いありません。

渋い雰囲気を醸し出すベンチに更に近寄ってみると、樹木を含めた全体を写したカットよりも背景のボケが大きくなって、より立体感が強まりました。
被写体との距離を変えるだけでも雰囲気をガラリと変えることができるのも大口径の面白さ、作品作りのためアングルや距離感を考えながら構図を決めるのも超広角レンズを使う醍醐味ではないでしょうか。

背後を横に貫く首都高速のボケ、20mmでここまでボカしてくれます。

大口径の超広角なので開放で周辺部の光量が落ちるのは仕方がありませんが、画面中央部の解像力がキレキレなので周辺がアンダー気味になることで画面が引き締まり味わいのある効果があります。周辺が落ちることを積極的に活かした撮影も面白いことでしょう。

開放からキリッとエッジの立つ切れ味で被写体を写し出すSIGMA Artシリーズの解像力に大口径の大きなボケの組み合わせは最強ではないでしょうか。被写体に近寄れば近づくほどボケ量が大きくなり、被写体の存在感はグッと強まります。

最短距離(23cm)までクローズアップしてみました。デザインされた自転車のペダル部分にピントを置きましたが、前後のボケ量が凄まじく画面全体がふわっとした雰囲気にまとまりました。SIGMA最大級の大型両面非球面レンズにより高画質化が図られていますが、大口径のボケ味もまたArtシリーズの名にふさわしい表現力です。

蛍石と同じ特性を持つFLDガラスを5枚採用することにより倍率色収差や軸上色収差が抑制され、画面中心部から周辺まで均等なシャープな描写を実現しました。カメラ側の補正も加わって、縦横の直線がピシッと真っ直ぐに写ることは気持ちのよいものです。

大口径だと逆光時の撮影が気になりますがスーパーマルチレイヤーコートの働きによってフレアーが大幅に抑制されているので、多少の逆光など気にすることなくバラエティに富んだ撮影の幅を広げてくれます。発色のバランスもよくどのような撮影条件でも撮影者の意図を組んで画像を写し出してくれるに違いありません。

最後のカットは猛暑を和らげようと噴出するミストを逆光で捉えてみました。逆光ながらミストの効果でコントラストが柔らかく落ち着いていますが、画面上部の葉っぱは1枚ずつくっきり写し出され解像力は少しも失われていません。今回は星空などの撮影はできませんでしが、どのような条件でも解像力を発揮するこのレンズの素晴らしさを改めて確認できました。