SIGMA 16-28mm F2.8 DG DN | Contemporary
「高性能、しかも小型・軽量」のContemporaryシリーズから、広角端が16mmからスタートする超広角ズームが登場しました。望遠端はスナップ撮影に適した28mmなので、旅行やスナップ、ファミリーフォトなどとの相性も良さそうです。
F2.8の大口径でありながら持ち運びに優れたコンパクトサイズにまとめられた使い勝手の良いレンズの作例をご覧ください。
※2022年6月撮影

カメラ:
SONY α7R IV
絞り値:f10
露出時間:1/800秒
ISO:160
露出補正:-2.7ステップ
露出モード:絞り優先


眼の前の被写体を自分のセンスで切り取ることが写真の面白さでありセンスの発揮どころだとすれば、超広角域での撮影はまさに自分のセンスを発揮する舞台でもあり、“撮り甲斐”を大いに感じます。灯籠の傘の下に潜り込むようにして火袋(窓)付近をクローズアップして、庭園の池を覗き見るようなアングルを見つけてみました。

一歩引くとこのような灯籠です。灯籠の傘分はデフォルメされて実際よりも大きく写っています。

カメラを持って街を散策すると思わぬ発見やら出会いがあります。生い茂った生け垣の樹木の中から消火栓の標識がチラリと顔をのぞかせています。軽量なレンズでもSIGMAらしい切れ味バツグンの描写力を発揮され、画面周辺部に写っている樹木の葉が一枚一枚鮮明に写し出されています。高解像力が画面全体に行き渡ることが確認できました。

筆者が子供の頃、都心は東京砂漠と揶揄されていましたが、今では公園が整備され花を植えた歩道も増えて美しい街へと変わりつつあります。季節の情緒を感じにくい都会でも歩道沿いに植えられた満開のアジサイを見ると、しっとりした梅雨の匂いを感じます。
最短距離は25cmなのでマクロレンズのような接撮はできませんが、絞り開放値F2.8のボケ味を生かして、アジサイをふっくら浮き上がらせることができます。開放からシャープな描写力とすっきりしたヌケ感で梅雨の雰囲気が写し出せました。右背後に写り込んだ観光バス車体の色が隠し味のスパイスのようにいい塩梅になっています。

カラーバランスはニュートラルでナチュラルな発色です。絞り値F4での撮影ですがフルサイズの利点を生かして近接することによって大きなボケを活かし、瑞々しいアジサイの美しさが引き出せました。


開放値F2.8の大口径ズームながら、軽量なプラスティック製パーツを中心に一部ポリカーボネートを適所に採用することにより非常に軽く仕上がっていて、機材の重量から受けるストレスがかなり軽減されることを実感します。
軽いからと言って、軽量レンズにありがちなチープさはなく、Artシリーズを彷彿させるような高級感が漂うビルドクオティが感じられます。携帯しているだけで満足感も得られるので、散策の良きお供になることは間違いありません。

SIGMAらしいキレキレなシャープネスはもちろん、ナチュラルな発色とバランスの良いコントラスト。表現力のあるレンズではないでしょうか。ContemporaryシリーズのレンズであってもArtシリーズに引けをとらない描写力、色乗りの良さで深みのある表現をしてくれます。


猛暑を少しでも和らげようと都心に設置されたミストをスナップしてみました。やや逆光気味の撮影ですがスーパーマルチレイヤーコートによって軸上色収差等の影響はありません。
それにしても年齢的な問題だけではなく、温暖化による影響なのか年々夏の暑さがキツく感じます。夏の撮影はまさに体力勝負だと痛感します。

都会には人工的な空間が点在していますが、普段は特別に意識することなくただ通り過ぎて気づかないものです。広角側のスタートが16mmだと非日常の空間を見つけ出す視点が広がるというか、新たな発見、出会いがあると実感しました。
都会の中にはアングルや見方を変えるだけでフォトスポットはたくさんあるものだな、と改めて気付かされました。

蛍石と同じ特性を持つFLDガラスを5枚採用することにより倍率色収差や軸上色収差が抑制され、画面中心部から周辺まで均等なシャープな描写を実現しました。カメラ側の補正も加わって、縦横の直線がピシッと真っ直ぐに写ることは気持ちのよいものです。

作例撮影を終えて夕ご飯を食べるために中華街へ。台湾料理のお店の入口付近にペットのフクロウがいました。お店の方に撮影をお願いすると、ストロボを使わなければいいですよ、と許可をいただきました。
コンパクトなレンズ設計ながら開放値F2.8の大口径はこのようなシチュエーションでこそ威力を発揮します。撮影中、大人しくしてくれてブレることなく、可愛らしい一枚をゲットできました。

散策や小旅行で1本だけレンズを持っていくとしたら、ダイナミックな描写が撮れる超広角ズームレンズ1本勝負もありかもしれません。このレンズは望遠端も28mmまであるのでスナップ撮影用途としての汎用的な画角も使えるし、16mmまで引けば強烈なパースを活かしたダイナミックな表現を楽しめます。
F2.8の大口径は夜間撮影での対応も可能で、インナーズームによりどの画角を選んでも全長が変わらず、使い勝手に優れた対応良質なレンズなことは間違いありません。