Nikonプロカメラマン製品レビュー【写真家 今浦友喜が語るZシリーズの魅力】
「第二弾」安心して使えるZシステムの底力

ハクチョウが着水するタイミングを、ほぼ正面からZ 6の高速連写で捉えた。
Z 6はAF追従最大12コマ/秒の連写が大きな特徴だ。また、像面位相差AFを搭載しているため、高速で食いつきのいいAF撮影ができる。約675gという小型軽量なミラーレスカメラがD5やD500さながらの性能を見せつける。
露出モード:絞り優先
ピクチャーコントロール:ビビッド
ホワイトバランス:晴天
「ミラーレスカメラは一眼レフカメラに比べてまだ性能がいまひとつなのでは……」と思っている方もまだいるだろう。
「AFが遅い? 連写が苦手? バッテリーが持たない? XQDカードのシングルスロットが心配? 」など不安に感じているポイントは人それぞれだと思うが、ニコンZシリーズはその不安を鮮やかに拭い去ってくれるだろう。
“最低限これまでと同じことができる”ではなく“これまで以上のことができる”カメラとして登場したのだ。
【高速に画面全域で被写体を捉え続けるAF!】
AFのスピードや精度、使い勝手が一眼レフに比べミラーレスは劣っているという時代は終わった。ZシリーズのAFは一眼レフと同等か、場合によってはそれ以上の性能を見せる。
一眼レフのAFはミラーの下に設けられたAF専用モジュールを使用した位相差AF。対してZシリーズはイメージセンサーに配置された位相差画素による像面位相差AFだ。どちらも高速なAFを可能とする位相差AFだが、厳密に言えば違う。
一眼レフの位相差AFは30年以上の歴史を持つAFシステムであり、例えばD5などに至っては被写体にレンズを向けた瞬間すでにピントが合っていたのではないかと見紛うほどのAFスピードを実現している。ZのAFスピードはさすがにD5のそれと全く同じとはいかないが、極めて速いAFを実現している。
飛んでいるハクチョウなどでもコンティニュアスAFがしっかりとピントを合わせ続けてくれた。カメラに向かってくる被写体や離れていく被写体に対してのAFも優れた追従性で、撮影は極めて快適だった。なお、Zマウントレンズは望遠レンズがまだ登場していないので、Fマウントレンズを「マウントアダプター FTZ」に取り付けての撮影だったが、AFスピードや追従性が悪くなることはなかった。

青空の中を気持ちよさそうに飛ぶハクチョウ。ハクチョウほど大きな鳥なら造作もなくAFが追従してくれる。
露出を自動制御にしている場合、背景が青空などであれば安定しているが木や山などが画面に入ってくると露出が変わってしまう。連写中の露出変更は至難の業だが、そんなときには「ハイライト重点測光」を使ってみよう。画面内のハイライト部分を重点的に測光するため、白いハクチョウなどを追っている限りは露出がおおむね安定してくれるのだ。
露出モード:シャッター優先
ピクチャーコントロール:ビビッド
ホワイトバランス:自然光オート
AFはスピードだけが重要なわけではない。画面の中で被写体をさまざまな場所に配置できる“広いAFエリア”も大切だ。Zの像面位相差AFは画面の上下90%に配置され、高速なAFを画面全域で合わせ続けることが可能となっている。
カメラの構造上、画面の中央部分にフォーカスエリアが集中してしまっていた一眼レフに比べると、圧倒的にフレーミングの自由度が増した。フォーカスポイントのサイズもピンポイント、シングルポイント、ワイドエリアのSとL、ダイナミック、オートエリアといった多くのモードから選択可能だ。

朝日が輝く湖面の中を進むハクチョウ。湖面のきらめきを印象的に描くために、縦位置のフレーミングにしてハクチョウは画面の一番下に配置した。縦横90%の像面位相差AFエリアがあるおかげで大胆なフレーミングを作ることができた。
2羽のハクチョウが並んで飛んでいた。右から回り込んで飛んできたので、フォーカスエリアを右上に移動し、左に向かって大きく空間を取り画面に方向性を作った。フォーカス用のサブセレクターは操作性が非常によく、瞬時にフォーカスエリアを移動できた。
露出モード:絞り優先
ピクチャーコントロール:ビビッド
ホワイトバランス:晴天
【D5やD500ばりの高速連写とパフォーマンスを最大限引き出すXQDカード】
野鳥など動体撮影ではAFの追従性に加え、連写性能が必要だ。2450万画素のZ 6はAF追従で最大12コマ/秒の連写が可能だ。
ミラーショックのない高速連写はとても静かで、それでいてキレのいいシャッター音。高速なAFと連写はまるでD5やD500のようで、手にしているのが小型軽量なZ 6だということを一瞬忘れそうになるくらいの撮れ高だった。そうした意味ではD5のようにストレスのない縦位置撮影のできるグリップが欲しく、開発中の「バッテリーパック MB-N10」の登場が待ち遠しい。
また、4575万画素のZ 7も最大9コマ/秒の連写が切れるのは驚きで、D850が作り出した高画素&高速連写というDNAはZ 7にもしっかりと受け継がれている。ただし高速連続撮影(拡張)モードではAEは追従せず、AF/AE追従でZ 6、Z 7ともに5.5コマ/秒となるためシーンを選んで連写モードを切り替えるようにしよう。

ハクチョウは身体が大きいため、飛び立つために水面を走り助走をつける。ドタバタと走るさまはなんとも愛嬌があり可愛らしい。12コマ/秒の高速連写で羽ばたきや水面のしぶきのいいカットが撮影できた。日没直後の薄暗くなり始めた時間だったため、ISO感度は7200まで上がっているが画質は十分に実用範囲だった。
露出モード:シャッター優先
ピクチャーコントロール:ビビッド
ホワイトバランス:自然光オート
2450万画素のZ 6、4575万画素のZ 7で高速連写をすれば、そのデータ量がかなりのものになるのは想像に難くないと思う。
高速連写ができてもデータの書き込みで待たされてしまっては宝の持ち腐れというものだが、Zなら安心だ。なぜなら、記録メディアに「XQDカード」を採用しているからだ。XQDといえば最大転送速度440MB/sのスピードを誇る高性能メディア。連写のあとの書き込みが遅くてイライラなんてこととは無縁だ。
さらにいえばXQD規格は互換性のある次世代高性能メディア「CFexpressカード」もいずれ使うことができる。CFexpressは最大転送速度1400MB/s、容量1TBというモンスター級カード。それだけでもXQDは勝ち組といえるだろう。
ZシリーズはXQDのシングルスロットでデータの安全面に心配な声も聞かれるが、個人的な経験からXQDカードであればトラブルはないと感じている。これまでCFカードやSDカードなど多くのメディアを使用してきたが、データの書き込み不良や停止などなんらかのトラブルがあった。しかしXQDカードはD850の登場と同時に使いはじめ、これまで使用したカードすべてで1度のトラブルも起こしていない。
またXQDカードは発売ブランドがこれまで少なかったが、Z 7の登場と同時にニコンブランドから発売されたことでより安心感も高まった。

朝日に照らされながら湖面を走り出すハクチョウ。水の飛沫や羽の質感など見事に描かれている。群れの中でいつどのハクチョウが走り出すかはわからないので、多くの場合で走り出しを確認してからレンズを向けて撮影するが、Z 6は非常に高速なAFと連写でしっかりと捉えることができた。
露出モード:絞り優先
ピクチャーコントロール:ビビッド
ホワイトバランス:7000K
【安心の使用感から得られるZの表現力
】
正直、撮ってみるまではZのAFがいくらすごいとはいえ「動体撮影ではD5やD850にはまだ及ばないのだろうな」と思っていた。
だがFTZアダプターを使用しても落ちないAFスピードとAF追従性、画面全域に広がるAFエリアによる画面づくりの多彩さ、Z 6の高感度性能の高さに驚いた。どれをとっても満足の行くものだった。
また、バッテリーを多く使うミラーレスカメラでさらに寒冷地での撮影ということでバッテリーライフも気になっていたが、連写を含めた撮影ではバッテリー1個で2000枚近く撮影できることがわかった。もちろん待機状態では電源をきちんとオフにするなど多少気をつける必要はあるが、それでもあまり心配性にならずにすみそうだ。
今回はZの軽量さに加え、メインで使用した AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRも極めて軽量な超望遠レンズであり、長時間の撮影でも疲労は最小限で済んだ。軽量化した機材と使いやすく自由度の高いZシステムで撮影を楽しんでほしい。

今浦友喜(いまうらゆうき)
1986年埼玉県生まれ。風景写真家。雑誌『風景写真』の編集を経てフリーランスになる。自然風景、生き物の姿を精力的に撮影。雑誌への執筆や写真講師として活動している。
カメラグランプリ2018選考委員