FUJIFILM X-T5
X-T4からボディサイズは若干コンパクトになり画素数は約4020万画素にパワーアップ。軍艦部のダイヤルは引き継がれながら、背面モニターはスチール撮影で使い勝手の良い3方向チルト式に戻りました。
Xマウントが登場して10年を迎え、進化と共に原点回帰したX-T5。どのような使い勝手なのかワクワクしながら秋の深まる都内で作例撮影をおこないました。

X‐H2SとX-H2の作例撮影を行った後なので、X-T5を持った瞬間にコンパクトなサイズ感が手に伝わってきました。重量はX-H2に比べて103g軽量で、横幅はコンパクトなX100Vの128mmとは1.5mmしか違わない129.5mm、グリップやシャッターボタンの位置もX-T4から見直されホールディング感が向上しています。コンパクト・軽量なボディサイズのカメラを携行すると、重さからくる負担が軽減されるとカメラを構えやすさに繋がり、自然と気軽にシャッターを押す回数が増えます。
千駄ケ谷の改札を出た瞬間、目の前に広がるイチョウと首都高を支える太い柱の組み合わせに都会の秋の趣を感じ、さっとX-T5を構えました。
カメラ:
FUJIFILM X-T5
絞り値:f8
露出時間:1/140秒
ISO:125
露出補正:+0.3ステップ
露出モード:絞り優先

画像センサーは第5世代の「X-Trans CMOS 5 HR」へ、画像プロセッサーは高速画像処理エンジン「X-Processor 5」へ進化し、X-H2と並ぶAPS-Cサイズとして圧巻の約4020万画素を実現しました。
オレンジ色のイチョウの葉を一枚一枚くっきりと分離して写し出す細微感に満ちた描写力はフルサイズに引けを取りません。

富士フィルムが独自に開発してきた光学ローパスフィルターを使用せずに色モアレの抑制と高解像度を両立させる「X-Trans CMOS 5 HR」はレンズ本来の解像力を引き出した高解像を記録します。
高解像40MPセンサーによって画面一杯に写し出された黄葉の緻密さは肉眼で見ているかのようで、省庁が立ち並ぶ官庁街のすぐそばにこの美しい大自然があるとは写真からは想像できないほど美しく写し出されています。

公園に沿って植えられている生け垣の上に乗っている落ち葉も美しく色づいています。富士のXシリーズで撮影すると、フィルムで撮影したかのような色味で、アナログ感が味わえるので、何をとっても絵になってしまう面白さを味わえる、富士フィルムのカメラに共通した魅力ではないでしょうか。

X-T4でバリアングルになった背面モニターがX-T5では再び3方向チルト式が復活しました。静止画メインならレンズの光軸とモニターの中心点が一致するチルト式の方がモニターを使ってハイ&ローアングルの構図を決めるときの違和感が感じにくく撮影に専念できる点は大きいです。
Velviaをセレクトしてプラタナスの落ち葉を背面モニターで構図を決めました。起こしたモニターを利用すればレンズを地面スレスレまで低く構えることも可能です。
撮影したら色のコントラスが強くなりダイナミックな作画となりましたが、落ち葉の存在感が抜群に引き立ちました。

とにかくボディーがコンパクトに感じるので構図を決めるのも軽快です。絵になるなぁ、と頭に浮かんだ瞬間にさっとカメラを構えられる軽快さは写真を撮る楽しみに直接つながるのではないでしょうか。

窓ガラスに写る黄葉もまた違った味わいがあります。なかなか気づきにくいですが、都会の秋は窓ガラスをも美しく色づかせます。ボディ重量557g(バッテリーとメモリーを含む)なので、散策や旅行で携行する負担も軽減されフォトジェニックなアングルを探すことに専念できることでしょう。X-T5から拡張感度だったISO125が常用感度になり、高画質な画像をより細かい粒状で写し出せます。

新しい原宿駅の明治神宮側が生垣のようになっていることをX-T5の作例撮影で初めて気づきました。ノスタルジックネガでショットしてみましたが、いい雰囲気が出ました。

4020万画素もあれば散策で見つけた花を撮るのは言うに及ばず、本格的なネイチャーフォトでも本領をすることでしょう。

最新鋭のミラーレス機であってもアナログ的な操作で撮影条件を操作できれば、自らが撮影条件を調整している気分になれて写真を手作りで作り上げているかのような気分になります。シャッターを押さなくても十分楽しめのもX-T5の魅力だと感じます。

5軸で最大で7.0段のボディ内手ブレ防止補正機能を搭載しているので、夜景などの暗いシーンはもちろん、少し暗い場面でスローシャッターを使用する場合も手ブレを防いでくれます。高画素機となり高解像力でブレが目立ちやすくなったため、強力な手ブレ補正機能は実に助かります。

3軸ティルトモニターは街のスナップでも大活躍です。視線の高さでつい写真を撮ってしまうのが常ですが、視線を低くしたり高くしたりすると見える世界が劇的に変わり写真に変化が付きます。

184万ドットのモニターはハイアングルでもとても見やすい。クラシッククロームの渋い色味はアナログ感満載のX-T5と相性の良いフィルムシュミレーションですね。

作例撮影を続けるうちに夕日が差し込み始め、歩いている前方に見えてきたビルの側面に光の輪が並んで反射していることに気づきました。窓ガラスに写った黄葉の美しさとはまた違う都市風景を目にすると絵心が刺激されます。クールな都市風景に温かみが感じられるようクラシックネガをチョイスしてX-T5に納めました。
カメラを携行して散策するといつもは気に止めることなく流れていく風景の中に実はフォトジェニックな素材がたくさんあることに気づきます。
コンパクトにまとまったクラシカルな外見のX-T5は携えているだけでも十分楽しいし、気になる風景を見つけたらお気に入りのフィルムシュミレーションを選んでシャッターを押す。写真を撮るまでの過程に沢山の楽しみが広がっている、富士フイルムのカメラの魅力をX-T5は十分体現したカメラだと感じました。

撮影を終えて浅草駅に向かう途中、商店街アーケードの隙間からスカイツリーが見えることに気づきました。絵心が湧き上がったときにスッとカメラを構えシャッターを押す、X-T5は身構えることなくフランクに向き合えるカメラだと思います。
Xマウントが登場して10年が経ち節目を迎えた年に登場したX-T5はまさに原点回帰を目指したカメラでないでしょうか。所有する喜びやカメラを操作する楽しみ、携行に楽なサイズ感でシャッターチャンスを増やす、価格を抑えて購入しやすい点など、まさにX-T1が登場したときに富士フイルムが掲げた理念が進化したX-T5に脈打っていると感じました。