Nikon NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
撮影するたびに美しいボケ味に思わず感嘆の声がこぼれてしまう、凄いレンズが登場しました。美しいボケを作り出すレンズは何本もありますが、画面周辺まで背後の光源を均等に丸くボケさせるこのレンズは、ボケを立派な主役にしてしまう魔力を持っています。「空間が満たされている」という意味を持つPlenumから由来する「Plena」と刻印されニコンがこだわりを持って作り上げたスペシャルな一本です。(※2023年秋撮影)



滑らかで柔らかく滑らかにグラデーションを描いていくボケ味は被写体をふっくらと浮き上がらせます。ピントを合わせた野鳥の目は抜群のシャープな描写力で写し出され、背景のボケと組み合わさって野鳥の姿が立体感に満ちています。


大きくボケる手前の花びら、鋭いカミソリのような切れ味で描写された花芯、滑らかにボケていく奥の花びら。分離することなく一体化して立体感に繋がっています。背後のとろけるようなボケに色収差の色づきはありません。完璧だとしか表現できないほどまとまっています。
カメラ: Nikon Z 8
カメラ: Nikon Z 8
絞り値:f/2
露出時間:1/1000秒
ISO:64
露出補正:±0ステップ
露出モード:絞り優先

最短距離は0.82m、撮影倍率も0.2倍でハーフマクロレンズとしての活用も可能で、大胆な近接はできなくともずば抜けた解像力の高さと美しいボケによって素晴らしい作品を生み出せる楽しみに満ちています。


開放値F/1.8から画面周辺まで均一な周辺光量が保たれ、四隅が暗くなることはありません。像面歪曲も見当たらず。中心部も解像力が画面全体にいきわたっています。
網に入れられて均等に飾られているハローウィンのかぼちゃたち。地元の小学生が作ったそうです。そのかぼちゃも個性を発揮した表情を少しでも画面に入れようと真正面から写してみました。画面いっぱいに広がる一つ一つのかぼちゃの表情が鮮明に写し出され、可愛らしい表情がいきいきと伝わってきます。

角度を変えてみました。三個のかぼちゃの真ん中で微笑む表情が前後のボケ味によってかぼちゃの微笑みが印象的に目に焼き付きます。 柔らかくまろやかに感じる「Plena」のボケ味は他のレンズとは一味違うと感じました。

東北地方では刈り取った稲を地面に差した一本の棒に積み重ねる用に吊り下げていくのですが、この様式を「ほんにょ」と呼ぶそうです。田んぼに均等に立ち並ぶ「ほんにょ」は旅情をかきたてられます。絞りを開放にして「Plena」で写してみると、中望遠135mmの圧縮感と柔らかいボケ味がうまく組み合わさる、焦点を合わせたほんにょが立体感をまとってふわっと浮き上がりました。
ピントを合わせた米粒が微細に一粒ずつ分離してシャープに写し出されています。

中望遠の圧縮感、柔らかいボケ味、ヌケの良さ、ピント面のシャープな描写力が組み合わって立体感、臨場感がずば抜けた描写。ファインダーを除いた瞬間に、すごい作品が撮れるかもしれない、と期待で胸がワクワクくるのは私だけではないはずです。

レンズの基本性能がどれもすこぶる優秀なので、風景やスナップなどどのような場面でも高画質で最高級の画質で被写体を写し出します。少し離れたい力中望遠の圧縮感を活かして山寺の山門にPlenaを向けてみました。濡れたように鈍く光る瓦葺きの山門の質感を渋く存在感あふれる雰囲気で写し出す描写、ヌケも抜群で山の澄んだ空気も伝わってきます。ポートレート、花はもちろん、どのような場面でも上質な写真表現を味わえる、撮影者の意図に確実に答えてくれる銘玉ではないでしょうか。