FUJIFILM X-H2S / XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR
新開発のプロセッサーX-processor5と高速信号読み出しを可能にした裏面照射積層型2616万画素センサーの搭載により、AFスピード、動体追従性能が格段に進化したX-H2S。
AFアルゴリズムは素晴らしい出来で、今まで先行されていた他社のAFとなんら遜色を感じない完成度です。特に人、動物、飛行機や車などを自動判別してピントを追従する性能には驚かされました。
同じく新開発されたXF150-600mmの作例も併せて撮影してみました。

AF-Cカスタム設定をSTEP2「障害物があるときや、フレームアウトしやすいとき」にセレクトしたので、手前にある樹木が圧縮効果によって時折飛行機と重なってもAFは迷うことなく旅客機をトレースし続けました。


旅客機が画面上部に位置している旅客機に小さな四角い枠になったAFポイントがピタリを張り付いて動きに合わせて一緒に動いています。X-T4ではこのような場面でのAFポイントの追従性能にやや頼りなさを感じることもありましたが、X-H2Sでは迷うことはほとんどなく信頼感が抜群です。他社のフラッグシップ機と堂々と肩を並べて競い合えるAF性能です。
AF-Cカスタム設定は6種類のSETが用意されていて、更に各SETごとに「被写体保持特性」「速度変化特性」「ゾーンエリア特性」の3種類の特性が設定できるので、6SET×3特性=18種類ものAF-Cもの設定が可能です。

旅客機を撮影するため使用したのはX-H2Sと並んで新発売の「XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR」。重量は1605gですがレンズ本体の幅は約10cm、600mmまでカバーするズームとしては細く感覚的にとても軽く感じます。X-H2Sの最大7段の手ぶれ補正が発揮されれば、フルサイズに換算すると914mmにもなる驚異的な超望遠世界を手持ち撮影で気軽に楽しめます。1000mm近い焦点距離で切り取るド迫力なアップ写真は癖になりそうです。

フルサイズ換算700mm相当で機体を切り取ってみました。すべて手持ち撮影です。


羽田空港から数キロ離れた東京ゲートブリッジが雄大に写し出され、存在感がグーンと迫ってきます。猛暑のため空気の揺らめく様子も画面を拡大すると確認できます。三脚は使用せずすべて手持ち撮影ですが、一昔前なら超望遠レンズといえば大型で重く三脚はマストでした。今やAPS-Cサイズとはいえ手持ち撮影ができるほど軽量になり、機動力を発揮して撮影ポイントを探せるのもまた大きなアドバンテージではないでしょうか。

カメラ:
FUJIFILM X-H2S
絞り値:f/8
露出時間:1/1250秒
ISO:250
露出補正:-0.3ステップ
露出モード:シャッター優先

被写体を飛行機からモノレールに変えてみたのですが、動体認識の精度は変わらず、瞬時に被写体の形状を認識してAFが追従を始めました。

カメラ:
FUJIFILM X-H2S
絞り値:f/7.1
露出時間:1/1250秒
ISO:250
露出補正:-0.3ステップ
露出モード:シャッター優先

カメラ:
FUJIFILM X-H2S
絞り値:f/7.1
露出時間:1/1250秒
ISO:250
露出補正:-0.3ステップ
露出モード:シャッター優先

画面の中に様々な形状の被写体がたくさん写り込んでいてAFが迷いやすいシーンです。駅に入選してきたモノレールに照準をAFポイント合わせると、一度も外れることはなく到着まで追従を続けました。

4コーナーを回って直線に向かう競走馬をAF-C、AFエリアをトラッキングに設定して撮影。AFエリアはほぼ先頭に立ってコーナーを回る競争馬(右から2番目)に照準を定め追従を続けました。
秒間40コマでシャッターを切っている瞬間、ブラックアウトフリーのファインダーに写し出されている被写体はスムーズでまるで実況中継の画像を観ていがかのようでした。

約7段分の手ぶれ補正はかなり強力です。砂を整地しているハロー車の巨大な車輪を1/45秒で流し撮りしてみると、回転する大きな車輪の外側は動きが大きく流れているのに対し、動きの少ない中心部は文字まではっきり判別できます。車体部分はまったくぶれていません。600mm相当の画角で1/45秒の流し撮りもできるほど強力な手ブレ防止が発揮されています。

競馬場のコース近くに猫がいることを見つけました。さっとX-H2Sを向けてファインダーをのぞくと瞬時に小さな四角いAFポイントが出現し、猫の右瞳にピタリと張り付きました。反応が俊敏なレスポンスに小気味よさを感じました。

X-H2Sと超望遠ズームXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRの組み合わせは野鳥撮影でも威力を発揮します。野鳥がゲージ内の飼育ではなく広大なテントの中を自由に飛び回ることができる施設で撮影を行ってみました。

巣作りのため小枝を口に加えているキンカチョウ。大きさは雀ぐらいで瞳はとても小さい野鳥ですが、頭を横に向いたとき瞳がはっきり判別できてAFポイントががっちり食いつきました。ピントの心配がなくなれば、後はシャッターチャンスに専念できます。

XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRにはスーパーEDレンズ4枚/EDレンズ3枚を含む17群24枚が贅沢に組み込まれて、従来の超望遠ズームレンズとは一線を画す解像感が得られました。オカメインコの鮮やかな羽毛を一本一本細やかに写し出す描写力は息を飲み込むほど美しいです。

X-H2Sはダイナミックレンジが進化して解像感が大幅にアップしています。作例撮影で使用したXF16-55mmF2.8 R LM WRは評価の高い優れた解像力を有するレンズですが、その性能を限界まで引き出しています。寺院の屋根に敷き詰められた瓦の一枚一枚が非常に細微に写し出され非常にシャープなエッジが立ち、凝視していると目が痛くなるほど細微感に満ちています。

レスポンスに優れ、発色の良さやきめ細かな描写力、AF性能、基本性能のトータルバランスがとれたカメラなので、動きの激しい被写体、しっとりとした情緒あふれる描写、どのような撮影シーンでもしっかり対応できます。苦手なジャンルはあるのか、と問いたくなるようなオールマイティなカメラです。

X-H2SにはJPEG撮って出しでフイルムライクな味わいのある色調が楽しめるフィルムシュミレーションが19種類搭載されています。最新鋭の性能がぎっしり積み込まれたカメラがノスタルジックな雰囲気に満ちた作品を写し出す、このミスマッチが魅力でもあります。
ブラックアウトフリーの秒間40コマでスポーツや電車、飛行機など動きのある被写体を撮影することに長けているだけなく、定評のあるフィルムシュミレーションを駆使して表現力に満ちた作品を追求できる、どのような撮影シーンでもしっかり対応できるオールマイティでかなり器用なカメラです。
XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRは軽量な超望遠ズームレンズのイメージを大幅に塗り替える高解像力でAF性能も申し分なく、X-H2Sとの組み合わせはAPS-C史上最強のタッグだといえるでしょう。