防災のプロに学ぶ、すぐに役立つ備えの基本
能登半島地震を皮切りに、全国各地を襲う豪雨、猛暑など、今年も自然災害が絶えない災害大国、ニッポン。
日本の国土はその地形や気象条件から、地震、台風、洪水、土砂災害、火山噴火などの自然災害が発生しやすい。そんな土地に暮らす私たちにとって、日々の備えはもはや必須。
でも、何から準備すればよいかわからない、自分にとって本当に必要な備えとは?
そんな不安を抱える方のために、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんが、いますぐ知りたい「防災の備えの基本」について教えてくれました。
「備え」とはモノだけにあらず。自分と大切な人の命を守るために、今日から始めてみませんか?
日本全国、どこでも災害は起こる
今回、誰でもできる賢い防災法をわかりやすく伝える活動をしている高荷智也さんにお話を伺いました。
──私たちが想定しておくべき主な災害にはどんなものがありますか?
日本に住んでいる上で想定しておくべき災害は、大きく分けて以下の4つです。
2. 大地震による延焼火災、大雪による交通障害やインフラ停止など、生じる場所が決まっている災害
3. 津波、洪水、土砂災害など地域特有の災害
4. ゲリラ豪雨、落雷、竜巻など突発的に起こる災害
私たちはこれほど災害の危険に囲まれていますが、すべてに対応するのは不可能。ここでは、地震や台風など、誰もが巻き込まれる可能性のある災害に対して備えることから始めましょう。
家庭で行うべき「備え」は大きく分けると以下の3つになります。
2. 災害から逃げるための備え
3. 災害発生より3-7日間、外部支援なしで生活を継続するための備え
つまり、命を守る→逃げる→生き延びる。
これが、防災の備えを考える上での、段階的な3つの柱になります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
何よりも重要なのは「命を守るための備え」
“備え”とは、何よりも自分と家族が命を落とさない環境を家の中につくれているか? それが第一義です。とりわけ地震対策が強調されるのは、地震だけは予知ができないから。
揺れた瞬間が本番で、揺れてしまってからできることは何もないので、事前に何をしていたかで、生死が決まる。大地震がいまこの瞬間に起きたとして、命を落とさない家づくりができているか、それが生死を分けるのです。
最初の揺れで建物が倒壊しない、家具や家電が転倒して家の中がめちゃくちゃにならない、ガラスが割れて飛び散らない、初期消火などの火災対策ができる、そういった家の中の備えが何よりも重要になってきます。
考え方としては、家に赤ちゃんやペットがいる、介護の必要な寝たきりの家族がいる、自身が両足を骨折している、そういった何もできない状況で大地震が起きても死なないようにする、それが地震対策のゴールです。
──命を守るために、どんな備えが必要となりますか?
最初にやっていただきたいのは家具固定。これが基本にして重要です。特に都市部のタワーマンションにお住まいの場合、建物を倒壊させないためにめちゃくちゃ揺れるため、家具や冷蔵庫・テレビなどの大型家電が激しく移動します。これらが倒れたらケガをしたり、ドアが開かずに逃げられなくなったりするので、できれば全部の家具や家電を固定するのが望ましい。
たとえば、天井と家具のすき間を固定する突っ張り棒は手軽な家具固定器具の一つ。その他、L字の金具や、最近は粘着シートで家具や家電を固定できるものなどがあります。家の状況に合わせて、最適なものを選んでみてください。
津波や洪水から「逃げるための備え」
──逃げるための備えについてですが、どういったシチュエーションで“逃げる”ことが想定されるのでしょうか?
たとえば、津波の直撃を受けやすい環境に住んでいる方。洪水で沈む可能性のある地域で自宅が戸建て、あるいはマンションの1-2階で床上浸水する可能性のある住居で災害に巻き込まれたら、避難しないと助からない可能性もあります。台風など予測ができる災害の場合は、事前に安全な場所や知り合いの家、ホテルなどに避難する選択肢を想定しておくことも重要です。
──自宅に留まると危険かどうかを知る手段はありますか?
国土交通省が公開しているサイト『重ねるハザードマップ』が便利です。津波、洪水、高潮、土砂災害の4種類を重ねて表示でき、どこにどれくらいの影響が出そうかがよくわかります。かなり正確な情報で、最近の災害の大部分はこのハザードマップ通りの被害が起こっています。自宅付近はもとより、外出先の情報もすぐに入手できます。
なお、ハザードマップは「危険地図」であり、セーフティーマップ=「安全地図」でないことには注意してください。色がついている場所はもれなく危険と認識すべきですが、色が付いていないからと言って安全とは限らず、必要であれば避難などはためらわずに実施してください。
国土交通省が公開しているサイト『重ねるハザードマップ』。
確認したい箇所をクリックすると、その場所の自然災害リスクが表示される
──家族がそれぞれ別の場所で被災した場合、家族と連絡をとるための方法なども事前に決めておいたほうがよいのでしょうか?
家族全員がスマホを持っていたら、安否確認はLINEで行うのが一番確実! 事前に家族グループを作っておき、ここに安否を書き込もうと決めておく。これが一番確実でつながりやすい手段です。
東日本大震災が起こった直後、電話での安否確認はほぼできなくなりましたよね。そこで強かったのがTwitter(当時)などのSNSサービスでした。スマホは携帯の電波でインターネットにつなぐのですが、街の至るところに携帯用電波のアンテナが建っており、大災害で停電した直後も、基地局はバッテリーや発電機などで動く仕組みになっています。停電が数時間から1日程度継続するとバッテリーがダウンしてスマホも使えなくなりますが、スマホが命綱となる時代であることは間違いありません。
子どもや高齢者など、スマホを使えない家族がいる場合は、『災害伝言ダイヤル(171)』を使って、電話で安否情報を入力する方法もありますが、電話に関しては、災害時に通信規制がかかるので、ほぼつながらないものだと思ってください。
「ヤマゼンの防災リュック30点セット」は、ランタンやホイッスル、ポンチョなど、避難先で必要なアイテム30点が備わる。これをもとに、自身の環境に応じて必要なアイテムをカスタマイズするのがおすすめ(写真は有楽町店の防災リュック)。
非常時に両手が使え、暗い夜道を照らしてくれるヘッドライトは必須アイテムだと高荷さん。コンパクトなので、普段使いのバッグに携行しておくと安心(写真は有楽町店のヘッドライト)。
──いざ逃げるとなったとき、持ち出し用の防災リュックはどのようなものを準備しておくとよいのでしょうか?
@体の一部、A身の安全確保、B手当と衛生、C情報収集、D一時滞、E水と食料という6つのカテゴリーで考えるとわかりやすいですよ。
1. 体の一部
目が悪い人は眼鏡やコンタクトレンズを失うと生活に支障が出ます。同様に、補聴器、杖、サポーター、薬など、それがないと生きていけないような、まさに“体の一部”となるものを優先的に防災リュックに入れてください(使い古しのものを防災用に充てるのも手)。
2. 身の安全確保
避難中に身の安全を守るもの。雨に濡れて体を乾かせないと凍死する恐れが出てくるため、雨具は必須アイテムです。私は登山用のガチの雨具を持ち歩いていますが、100円ショップで売っているミニポンチョでもOK。ポンチョはトイレや着替えをする際の目隠しにもなるので、特に、女性におすすめです。
3. 手当と衛生
ばんそうこう、三角巾など応急手当てに使える道具に加え、非常用トイレやウェットティッシュなど衛生管理に役立つものもあると安心ですが、命に関わるものではないので、荷物の量に応じて減らしてもいいでしょう。
4. 情報収集
何よりスマホの充電器。乾電池式、ケーブルで接続するタイプなどの各種モバイルバッテリーは必須。先述したとおり、スマホは命綱ですから。
5. 一時滞在
避難所で数日生活をするための最低限の道具のこと。揃えればキリがないですが、アルミブランケットやアルミシートなど、暖をとるための最低限の道具があるだけで、滞在時の快適度が変わります。
6. 水と食べ物
5年備蓄できるようかんなど、賞味期限が長くてコンパクトなものがおすすめ。持ち歩いても潰れないし、夏は溶けず、冬は凍らない。食べても喉が渇かない。極限環境に強い非常食です。
市販の防災リュックを自宅にひとつ確保してから、上記の6つのカテゴリーごとに、我が家では何が必要かを考え、自分用にカスタマイズするのがおすすめです。
荷さんが日々携行する防災アイテム。東京都の職場で被災し、自宅の静岡県まで、途中交通網が復帰するまで歩いて戻ることを想定した中身は、雨具やヘッドライト、充電器、衛生用品やマルチツール、ようかんや塩あめなど、総重量4.5s!
自宅を”防災倉庫”に。「1週間生き延びる備え」
──備蓄は家にはどのくらいの量を準備しておけばよいのでしょうか?
逃げられた後は、生き延びる手段が必要。ライフラインの回復を待ちながら1週間在宅避難をすると想定し、何をどれくらい備蓄しておけばよいのか。ポイントは、日頃から多めにストックしておくこと。
昨今の非常食はメニューも豊富で、消費期限も5年~10年というものまで。アウトドアでも活用できる(写真は有楽町店非常食コーナーの棚)。
──家庭内備蓄において注意しておきたいことはありますか?
以下の3つのポイントがあります。
2. ライフラインの停止に対する備え
3. 生活用品
まず「1. 家族にとっての重要品」は、赤ちゃん、高齢者や介護者、ペットなどがいる場合。オムツやミルク、薬、ペットフードなど、災害時に入手できなくなりそうなものは、日頃から2週間分くらい多めにストックしておくこと。
被災者が口を揃えて言う悩みが、トイレ問題。避難所や断水した家屋で使いたくても使えない、衛生環境が心配という声が多いので、マストで、しかも多めに揃えておきたい(写真は有楽町店の災害用トイレ)。
次に重要なのが、「2. ライフラインの停止に対する備え」。災害後は停電、断水、ゴミ回収などが止まる可能性が高いですね。
中でも最重要アイテムは非常用トイレです。水と食べ物を1週間分用意するなら、トイレも1週間分用意する。入り口と出口の量を一緒にしないとダメなんです。非常用トイレは、家族で1週間分使える数(一人当たり50から100回が目安)を確保してください。
カセットコンロとカセットガスボンベもマスト。湯が沸かせると、非常食のバリエーションが広がり、避難生活の彩りにもなります。
停電に備え、乾電池式のライトやランタン、乾電池式のモバイルバッテリーやラジオなどもぜひ準備してほしいですね。中でもおすすめはポータブル電源。小型のソーラーパネルと組み合わせれば、電気を自宅でつくることもできます。昨今、夏の暑さ対策は命に関わる問題。停電時の電源確保は生死を分ける可能性もあります。そのため、ポータブル電源やソーラーパネルは令和ならではのマストな防災アイテムといえるでしょう。
アウトドアでも活躍するポータブルバッテリーは、停電した状況で過ごす期間が長引くほど容量が必要となる。スマホの充電、家電やエアコンの稼働など用途に応じて適した容量を選びたい。
そして、最後に「3. 生活用品」。飲料水、食料などの日用品。目安としては最低3日分で、できれば1週間分欲しいとのことです。
水は一人当たり2L×6本のケース1箱を、スペース的な余裕があれば2箱用意したいですね。食料に関しては、1週間分の食べ物を全部非常食で賄うとなお金がかかります。なので、普段食べているカップ麺やレトルト食品、シリアル類などを少し多めに買っておくとよいでしょう。賞味期限の近いものから食べて、なくなる前に補充する「ローリングストック」を実践するだけで、1週間分くらいの食料は備蓄できます。
災害時こそ、食事の楽しみは代えがたいものですが、とにかく備蓄が面倒という方の究極の非常食≠ェ、消費期限のない氷砂糖、塩、はちみつ。これらと水さえあれば、とりあえず数日は生き延びることができます。
また、災害時に入手困難となるトイレットペーパーやウェットティッシュ、マスク、ゴミ袋なども多めに在庫を持っておくべきです。
災害は、過ぎてしまうとひとごとになってしまうもの。でも、全国各地のどこかで、いまも災害は起きています。自分より、「大切な人が大変な目に遭ったら」と想像することで、防災意識はより高まることでしょう。
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